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Xのトレンド1位に入り、DMやコメントが殺到! JRA史上初となる「女性競馬実況アナ」が誕生した歴史的瞬間と、あわや大失敗のデビュー舞台裏

集英社オンライン / 2024年4月27日 16時0分

JRA史上初の女性競馬実況アナ、誕生。まったく競馬を知らなかった女子大学生が入社面接で「競馬実況をする覚悟がありますか?」に返したトンデモないアンサー〉から続く

女性としては史上初となる“JRAの競馬実況アナウンサー”となった藤原菜々花さん(26)。入社5年目を前にして大役を任されるものの、実況デビューを告げられたのはなんとレース2日前。しかも競馬実況デビューするのを知っていたのは、社内でもたった3人という極秘デビューだった。

【画像】藤原菜々花アナがレース中に「やってしまった…」と思った瞬間

社員3人しか知らなかった極秘デビュー

2020年「ラジオNIKKEI」に入社した藤原菜々花アナウンサーは、入社5年目を前にして競馬実況デビューを告げられる。しかし担当を任されたのは、そのわずか2日後のレースだった。



当時の心境をこう振り返る。

「入社以降、競馬をほぼ知らない状況から実況の練習を続けてきたので、上司から呼び出されたときは『いよいよ来たか』という気持ちでした。

実際に、競馬実況デビューが決まったときは、ゴーサインを出していただいてうれしいという気持ちでしたが、担当するレースが2日後だと告げられたときはびっくりしました。ある程度心構えができていたのですが、『明後日にいきなり!?』という気持ちで、告げられた瞬間から鼓動が速くなるのを感じていました」

しかも藤原が競馬実況を担当することは、ラジオNIKKEI社内でも3人しか知らされていなかったという。藤原の上司いわく、事前に女性アナウンサーの競馬実況デビューが公になると、レース前に取材対応が入って集中できなかったり、藤原本人にもプレッシャーがかかってしまったりする。そうした配慮からの極秘デビューとなった。

Xには500件以上のDMやコメント

「実況デビューが告げられたとき、私自身としては、いよいよ憧れの実況ができるというワクワクした気持ちでした。その時点で、女性としてのJRA競馬実況デビューは史上初だと知っていましたが、自分が女性だからという意識は特にしないようにしてました。

入社した段階で上司からも、たまたま私が入社したタイミングで、競馬実況アナウンサーを求めていたからだと聞いていたので、他の男性の先輩と同じようにやろうと、変に気負わないよう意識していました」

そしてデビュー戦の3月3日が訪れる。レース前のファナンファーレが鳴った直後、藤原アナの出番が回ってきた。

「中山競馬場3レースは、3歳の未勝利戦です~」

聞き慣れない高く澄み切った声が、晴天の中山競馬場に響いた。史上初となる女性のJRA競馬実況アナウンサーが誕生した瞬間だ。藤原と同じ部署の上司も、アナウンスが流れて初めてその起用を知り、ざわめいたという。

そんなサプライズも束の間、レースはものの2分弱で終わり、藤原はデビュー戦を無事に終えた。藤原のXのアカウントには、祝福やねぎらいの声など500件以上のDMやコメントが殺到。さらにXのトレンドで1位にも入るほど反響は大きかった。

レース直後は「やってしまった…」

しかし、当の本人は浮かれるどころか、「ほろ苦いデビューだった」と振り返る。

「実は実況デビューが、アナウンサー人生のなかで、一番頭が真っ白になった瞬間でした。レースのクライマックスに当たる最後の直線で、勝ち馬が猛烈な勢いで後方から追い込んできたんです。その瞬間に、メジャーレーベルという勝ち馬の名前が出てこなくなってしまって……。

手元に塗り絵(騎手の勝負服や馬名をまとめたカンペ)を置いていたのですが、緊張で咄嗟の判断が追いつかず、パニックになってしまいました。

後ろで付き添ってくれた先輩がフォローを入れてくれたので、なんとか最後の瞬間に勝ち馬を呼ぶことができましたが、プロとしては失格でした。

率直にレースが終わった後は、やってしまったという気持ちが大きかった。聞いている人にとってはわかりづらく、馬券を買っていた人にはストレスになってしまっただろうなと、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

当日はいつも通り競馬場に入場して、ファンファーレが鳴るまでは先輩と談笑する余裕もあったので、『これならいけるぞ』と自信があったんですけどね。いま思えば、自分が緊張していることに気づかないぐらい、内心では緊張していたのだと思いました」

調教師からのうれしいサプライズ

とはいえ前述の通り、藤原の実況はかなりの反響を呼んだ。

「実況したレースは午前中にあったので、午後はレースを終えた関係者への取材をこなす当番でした。そしたらスポーツ紙の記者の方に、『おめでとう!』と声をかけていただいて、とても温かい気持ちになりました。

しかも当日は、たまたま大学時代の放送研究会の同期が来場していたんです。その同期が、私の声だと気がついたらしく、連絡をくれたのもうれしかったです! 正直、SNSに来ていたコメントは怖くて見れなかったんです。クレームだらけだったらどうしよう……と。

翌日にメッセージを開いてみたら、『新鮮でよかった』『聞きやすかった』とほとんどが応援メッセージでホッとしました。レース直後はマイナスな気持ちしかなかったのですが、たくさんねぎらいの言葉をいただいて、徐々に前向きになれました」

たまたまレース実況をした数日後に、仕事の一環で美浦トレセン(競走馬を調教する施設)に取材に行ったところ、うれしい出来事にも巡り合ったという。

「トレセンに取材で行った際、木村哲也さんという調教師の方が声をかけてくれたんです。その木村調教師は、私が初実況で上手く馬名が思い出せなかったメジャーレーベルを管理している方で、『馬房にメジャーレーベルがいるから会いにおいでよ』と誘ってくださったんです!

私が実況しているのを把握してくれているだけでなく、わざわざ馬房に呼んでくださって感激でした。そこでメジャーレーベルと初対面して、一緒に写真を撮らせてもらったんです。すごく人なつっこい性格で、私が横に立ったら腕にスリスリと頬を当ててくれて、とってもかわいいかったです。

しかもその後、私が実況デビューしたレースで、メジャーレーベルがつけてたゼッケンを、ルメール騎手のサイン入りでくださったんです! 普通だと勝ったレースのゼッケンは、馬主が持って帰るのですが、木村調教師がわざわざ馬主さんにかけあってくださって。競馬ファンからしたら宝物ですし、応援していただいているような気持ちになり、とても励みになりました」

直面する男性と女性の声の違い

藤原は3月3日以降も、コンスタントに競馬実況を担当し、4月15日時点で10近いレースを経験した。そのなかで、緊張から発声を大きくすると怒鳴ったように聞こえたり、逆にトーンが落ち着きすぎると暗い印象を与えたりしてしまうといった反省をもとに、毎回微調整を続けている。

特に現在は、女性の声をどう活かしていくかを模索しているそうだ。

「男性は声が低いので、実況に迫力や凄みが乗っかりやすいんです。レース山場の『ゴールイン!』という声も、男性が情熱的に言うと臨場感がある。ただ、私がそれを真似しようとすると、キンキンした金切り声のように聞こえてしまうのがもどかしいですね。どうしたら女性の声でも迫力が出るのかを試行錯誤しているところです。

一方で、女性の声は、軽快さを感じられるのが強みだと思います。馬がパカパカと走っているような爽快感や、スムーズに聞けるような軽やかさを武器にしていきたい。男性とはまた違ったよさを見つけていきたいですね。ゆくゆくは牝馬のGIレースを担当してみたいですね」

いずれ競馬実況で、女性の声を聞くのも当たり前の光景になっていくかもしれない。

取材・文/佐藤 隼秀 写真/岡村智明

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