縁石にズラリ並ぶどんぐりに「狂気を感じる」「晒し首にされた、たけのこの里かと」と大バズ。作成者の美大生が話す意外な真相とは
集英社オンライン / 2024年4月27日 17時0分
多摩美術大学の付近で謎の儀式が行われた…? 均等に並んだどんぐりの大群にSNS上では恐怖の声が広がっている。作成者に話を聞くことができた。
多摩美付近で謎のどんぐり儀式?
東京五美術大学の一つ、多摩美術大学の付近で、怖すぎる光景が発見されたとSNS上で話題になった。歩車道境界ブロックの上に、ずらーっと均等な間隔でどんぐりが立てた状態で並べられているのだ。
なにかの怪しい儀式のようにも感じられるその光景は、ただならぬオーラを放っており、〈多摩美ガチ怖い〉というコメントと共に画像が拡散されると、SNS上では〈怖いっちゃあ怖いけど…アートと言うかファンタジーやねトトロ的〉〈晒し首にされたたけのこの里かと思った〉〈黙々とひとりで並べてた様子を想像すると、狂気を感じますね〉〈排斥デザインかと思ったら配石デザインだった〉といった声があがった。
こちらのどんぐりアート(?)を手掛けたのは、Pokomiさん。今年度から多摩美術大学の絵画学科油画専攻に入学した18歳で、約1年前からアート活動をしている。これらのどんぐりを立てた経緯について教えてくれた。
「恋人が多摩美に遊びに来た際、スマホの充電がなくなった彼女と一緒に暇つぶしとして、20分程度で幼稚園児のような気持ちでどんぐりを並べました。軽い気持ちで並べたどんぐりの写真を他の方が投稿しているのを翌朝に知り、それがバズっていてとても驚きました…! 2人で簡単な遊びとして並べたどんぐりがバズっていて、SNSはおもしろいな、よくわからないなと感じました、、」(Pokomiさん以下同)
何かの儀式かとゾッとしてしまったが、どうやらあのどんぐりは、恋人とのほっこりする遊びだったようだ。しかし、ただ遊ぶにしてもどこかアートじみているのは、やはり多摩美生だからだろうか。
なんだかセンスを感じるPokomiさんは、SNSなどで自身の作品を発表している。見るだけで痛々しいものや、ちょっとグロテスクなものまで、目を引く作品だらけ。
「愛、なかない、自分に言い聞かせる、自分を大丈夫にする作品」などをコンセプトとして、制作を行なっているという。
そんなPokomiさんの代表作品の一つが、口の中をいくつもの針が貫通している油絵「残夢」だ。
インパクトあるビジュアルに秘めた想い
「『残夢』は一昨年、高校2年生時の作品で、現在の作品性、作家性、スタイルを固めた作品です。F60号キャンバスに油絵具で制作しました。最も野生的でありながらそれと同時に最も文化的な器官である口をモチーフとしてそれにニードルを刺すことで自分の興味の対象の一つである自傷行為、自慰行為と関連付け、制作を行ないました」
高校2年生のときに作家性が固まったというPokomiさん。翌年もまた、インパクトのある作品を作りだした。ワイシャツを突き破って、お腹から筋肉剥き出しの口が飛び出し、何かを叫んでいる。
「この作品のタイトルは『腹から声出せ』。去年、高校3年生時の作品で紙粘土、ボンド、キャンバスで制作しました。自分の作品のモチーフの代表である口腔から展開させ、自画像として制作しました。悲観的で内気な自分を慰めるような、包み込んで大丈夫だ、と言い聞かせるようなことを意識して制作しました。『残夢』と『腹から声出せ』、2作品共にパッと見のビジュアルの強さと同時に、その中にあるコンセプトを意識しています」
これから4年間、多摩美で美術を学んでいくPokomiさん。多摩美には卒業生に偉大な芸術家が多くいるが、Pokomiさんは自身が目指していく方向性として、「その絵、その人自身が象徴、アイコンになれるようなアーティスト、作品を目指しています」と語る。
「作家として活動することを目標とし、社会や世界に向けた利他的な作品ではなく、極めて自己的な、自分を救うための作品を作っており、それを見ていただいている方々のことも救うことができればなと思い、日々制作をしています。
最近は、絵画作品だけでなくインスタレーション、パフォーマンス等にも興味を持っており多摩美術大学では作品単体ではなくそれ自体から展開されるムードや空気感を意識し、これまでの作品から一つ進んだ制作をしていければな、と考えています。自分がこの世界で生きたい、心から大丈夫と思えるように制作をするのが、自分の指針でありモットーです。
今回は並べたどんぐりがバズりましたがふだんは作家としての制作を主に行なっているので、今回このポストから自分のことを知っていただいた方々もよければ自分の作品、活動を見ていただければうれしいなと思っております」
入学早々にSNSを大きくバズらせてしまったPokomiさん。一体どんなアーティストになっていくのだろうか。これからの活躍に注目だ。
取材・文/集英社オンライン編集部
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