髙橋洋一「ホリエモンがフジテレビを買収していたらいまごろAmazonプライムみたいなことになっていたかも」世界的IT企業が日本で育たない理由とは?
集英社オンライン / 2024年5月14日 8時0分
元財務官僚でエコノミストの髙橋洋一氏の書籍『髙橋洋一のファクトチェック 2024年版』(WAC BUNKO)。
本記事では書籍を一部抜粋・再構成し、なぜ日本に世界に通用するIT企業が育たないかを考察する。
なぜ世界的IT企業は日本で育たない? 金融業界のIT化は?
──ネットでもよく話題になるのですが、日本から世界的なIT企業が生まれないのはなぜなんでしょう。
なんでなんだろうね。でも、その目のようなものはなくはないんだよ。例えばホリエモン(堀江貴文)とか、Winny(ウィニー)の開発者の故・金子勇さんとか、けっこういるんだけれど、どうもみんな潰されるような印象がある。ああいう芽を育てていれば日本もずいぶん変わっていた気がするけどね。
日本人はそういう先進的な分野に弱いとは思えない。そこそこ面白いアイディアもあるからね。たぶん、社会の仕組みや教育のせいもあるんじゃないかな。「みんな同じがいい」とか「出る杭は打たれる」とかいった日本的な社会の傾向があるように思うね。
もっと自由にやらせていればずいぶん変わっていた可能性がある。ホリエモンがフジテレビを買収していたら、いまごろAmazonプライムみたいなことになっていたかもしれない。
少なくともプロ野球はまったく違っていた。東大の故・金子勇氏が開発したファイル交換ソフトWinnyも、利用者に悪用されて残念なことになってしまったけれど、あれほど画期的なソフトなんだから、商標化すべきだった。若い人にチャレンジさせれば社会的に面白いんだけどね。
──既得権益者が強いから新しい芽が摘まれるんでしょうか。
それはあるね。ホリエモンが現れた時もマスコミが寄ってたかって叩いたでしょう。
──日本社会はそういう傾向が強いですか。
社会が安定しているから既得権がたくさんあるのは間違いないよ。高度経済成長で成功した人たちが既得権者になっている。パワーがあるからね、新参者を許さない。
──アメリカでそうならないのはなぜでしょう。
自由闊達で、下剋上の世界だとみんな割り切っているから、既得権がない。アマゾンもグーグルも新興企業でしょう。経団連のようなものもないから、昔の企業なんかあっという間に潰れる。規制というのもあまりないから、規制緩和をめぐる議論をすることもなく、自由にやっていいという発想がある。そうすると新しい人は伸びやすい。
日本の場合は既得権にどっぷり漬かっている人たちが規制緩和に大反対している。規制緩和が嫌いな人って、みんな既得権に結びついているんだよ。
──そういう人のほうが力があるから意見が通りやすい?
そうなんじゃないかな。
クレジットカード会社の未来
──もう一つお聞きしたいんですけど、今後クレジットカード会社はどうなりますか?
金融業界も規制の塊の世界でね。たとえば銀行は昔、クレジットはあんまり綺麗な仕事じゃないからというので、ぜんぶ子会社か関連会社にやらせていたんだよ。だからクレジット会社は利ザヤで儲けていたんだけれど、銀行の本業のほうがなかなか大変になってきて、背に腹は変えられないから、どんどんクレジット業務を浸食し始めた。そうすると従来のクレジット会社は苦しくなると思うよ。
だって、銀行のほうは預金があるから圧倒的に調達コストが安い。クレジット会社は自分で資金調達できないから、銀行からお金を借りてそれを貸しているところもある。既存のクレジット会社は徐々に銀行に飲み込まれていくんじゃないかな。
──QRコード決済のPayPayのようなサービスはどうでしょう。
銀行の決済がちょっと高かったり不便だったりすると伸びる可能性はある。でもあれは融資じゃなくて決済だから、デジタル通貨が普及したらなくなるよ。そもそも間に立つ意味がなくなる。みんなアプリで終わっちゃうもの。究極的には、中央銀行がデジタル通貨を発行すると金融業界はすべて要らなくなるよ。
──逆に言うと、デジタル通貨はなかなか普及しないということですか。
金融業界も生きていきたいから、既得権者たちが中央銀行のデジタル通貨発行に猛反対する。中央銀行が本格的に進出したら、デジタル通貨関連業者は全員討ち死にですよ。
──でも、どこかの国が本気でそれをやり始めたら流れはそうなる?
金融業界のない国では時々やっているけれどね。だけど一般的な国なら、さすがに銀行を潰すわけにはいかない。クレジット業界は潰れてもいいけど、銀行業界は守ろうとするよ。銀行は最後まで中央銀行とくっついているから、それに依存して生き残るだろうね。
だけど、銀行といっても地方銀行は大変だよ。銀行には都市銀行と地方銀行とがあるけれど、地銀はもうあまり存在意義がないものね。地銀よりどちらかというと、いまだにフェイストゥフェイスの昔ながらの商売をやっている信用金庫のほうが強いと思うよ。一方、都銀はデジタル化して対面業務を減らしているでしょう。間に入った地銀はどっちつかずだからつらいところだよ。
──地銀でまとまって都市銀行みたいになるようなことはないんですか。
いまさら割り込めないでしょう。信用金庫は地元の商店街と昔ながらのやり方を維持して生き残ると思うけれど、地方銀行にはこれからイバラの道が待っているよ。金融業界もいよいよIT化が進むからついていけないところも多いだろうしね。
──IT化でだいぶ様変わりしそうですね。
クレジットカードだって昔なら番号を入力すればそれで終わりだったけれど、いまは本人認証サービスの3Dセキュアとかワンタイムパスワードみたいに複雑になっているでしょう。そのうち目の認証だけですむようになるかもしれないけれど、手にチップを埋め込むみたいな形も考えられる。そういうのにも対応しなければならないしね。
SFの世界がやがて現実のものになる。資本力のないニッチなところは少しずつ脱落していくことになるよ。
(2023年11月6日)
外部リンク
- ヤクザ、吉原、不倫…毎日300km15年間走りぬいたタクシードライバーが見た「人間」たち…嫌な目にもたくさん遭ったけど続けられたのは母を「不憫」に思う心から
- マンションは、戸建住宅を買えない人が住むところ? 上昇、なだらかに下落、無価値…日本の不動産市場で起きている「三極化」の現実
- 〈カイロ大卒業詐称疑惑再び〉「れいこさんと話すとイジメられる」「みんな“おかしい”と思っても言えない」小池都知事を4年間追及した上田令子都議が感じていた“ファシズム”のような空気
- 〈 “岸田包囲網”が着々〉茂木幹事長、菅前首相らが水面下でうごめくなか、崖っぷちの岸田首相の次の一手は?「首相は“一か八か解散”しかねない。でも、やったら自民党は終わりだ」
- 退職代行サービス人気の背景「入社して間もないから自分で言う勇気がない」「説得されて丸め込まれるリスクが怖い」早期退職のいちばんの理由は…
この記事に関連するニュース
-
ひろぎんHDが新中計でPBR 1倍宣言、業種平均は0.4倍 どう達成する?
Finasee / 2024年7月18日 11時0分
-
横浜銀行のコンコルディアFG、PBRが0.3倍から0.8倍に改善 カギとなる「RORA」とは
Finasee / 2024年7月11日 11時0分
-
Digital Platformer、Partisiaと金融セキュリティおよびプライバシー保護問題に特化したフィンテックアプリケーションの構築で業務提携を開始
PR TIMES / 2024年7月9日 12時45分
-
20年前なら日本のIT技術は世界一だった…天才プログラマーの7年半を奪った「著作権法」という闇【2023編集部セレクション】
プレジデントオンライン / 2024年7月6日 9時15分
-
地銀の販売ランキングで半導体株を抑えて売れ筋なのは? リターン57%超の低コスト分配型投信もランクイン
Finasee / 2024年7月1日 16時0分
ランキング
-
1「土用の丑の日」物価高でも…あの手この手の“うなぎ商戦” 大手スーパーの目玉は「超特大」
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月22日 19時59分
-
2小林製薬、会長と社長が辞任へ…「紅麹」サプリ問題の対応遅れで経営責任明確化
読売新聞 / 2024年7月22日 21時37分
-
3「地方に多いホームセンター」が都会進出を狙う訳 人口減少が進む中、大手を軸に再編が進行
東洋経済オンライン / 2024年7月23日 8時30分
-
4世界最大級・ファンボロー国際航空ショー開幕…三菱重工など日本企業14社も出展
読売新聞 / 2024年7月22日 21時54分
-
5「最高益の会社」の株価が上がらない当然の理由 相場に影響を与えるのは過去のデータではない
東洋経済オンライン / 2024年7月22日 16時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)