「主人は病気で早くに亡くなって…」80歳のおばあちゃんが一人で切り盛り…明治30年から続く徳島県の老舗旅館での言葉にできない体験
集英社オンライン / 2024年5月12日 10時0分
〈《怖すぎる社員寮》「毛があふれる風呂釜」「開かずの1階は虫の巣」「8年間知らない女性と住んでいた」近所から幽霊屋敷と呼ばれる社員寮でもっとも恐怖だったこと〉から続く
都道府県の魅力度ランキングではほぼいつも40位台。四国4県の中でも影が薄くてあまり目立たない印象の徳島県だが、訪れると実は素晴らしい体験ができるという。徳島旅行に行ってきた男性のSNSに羨望の眼差しが向けられた。
【画像】こんな部屋でボーっとしたいわ! 昭和にタイムスリップしたような食卓の風景
一泊二食付き7300円
高松空港からおよそ120キロ、車で2時間20分ほど走ったところにある徳島県勝浦郡上勝町の老舗旅館で最高のひとときを過ごした男性、べーたさん(@onecuprain)のSNSが話題だ。
「2年前の旅行でこの道を通ったときに旅館があることに気づき、周辺の町並みなど含めとても気に入ったので、今回宿泊するに至りました。目の前は川が流れ、水田があり、古い家並みや商店が残る。端から端まで数分で歩けてしまうこの集落で時間を忘れて過ごしてみたく、2年越しにその思いが叶いました」(べーたさん、以下同)
上勝町は総人口1,370人(男643人、女727人)で、世帯数は725世帯。町のシンボルは1439mの高丸山だ。日本の棚田百選に選ばれた樫原の棚田、水苔が群生する標高997.6mの山犬嶽、そして高丸山に囲まれ、上勝町は徳島県で唯一、日本で最も美しい村連合に加盟している。
県道16号の自然の中を走っていった先、昔ながらの民家がたくさん並ぶ道沿いに宿を構えているのが、今回話題となった明治30年から営業を続ける山西旅館。
現在は、80歳の多田ひさこさんが女将として一人で経営しているが、ひさこさんで4代目。旅館の中はところどころ改装されているものの、屋根や階段などは昔のままだという。そしてお値段はなんと、べーたさんが泊まったときで一泊二食付き7300円という破格の安さだ。
「食事は簡素ですがどれも美味しくお腹いっぱいいただけました。特に食事部屋の雰囲気が家庭的でとても落ち着きました。また、食事部屋のすぐ隣が台所になっていて、その雰囲気がおばあちゃんの家に帰ったようでとても落ち着きました。お宿の女将さんもとても可愛らしい方で親切にしていただきました」
旅館の手前側は築100年以上になるらしく、ひなびた雰囲気を存分に感じられる作り。「早めの時間について二階の窓から景色を見つつお茶を飲む時間がとても贅沢に感じられました」とべーたさんは語る。
約30年間、一人で旅館を切り盛り
設備は冷暖房やドライヤー、シャンプー等揃っているため、このような山の中の小さな旅館であることを考えれば申し分ない。そしてこの旅館に泊まる醍醐味はなんといっても、目の前いっぱいに広がる圧倒的な自然の景観だ。
「もし宿泊されるのなら、“二階の手前側の部屋”で予約をされることをおすすめします。奥のお部屋は改装されておりきれいですが、窓からの景色を楽しめるのは手前側の部屋の特権だと思います。今回の宿泊では、小さな集落ですが商店跡や古い民家などが多く見られ、田舎に帰ってきた感じが味わえました。すぐ近くに水田があったので、夜はカエルの鳴き声で賑わい、星空もきれいに見えてよかったです。本当に落ち着く宿でした。
山西旅館の口コミが一件しかないのが不思議なくらいですが、一方でこの雰囲気を保っていたほうがいいかなとも思い、女将さんに『SNSで紹介していいですか?』と聞いてみたら、『じゃんじゃん宣伝していいよ!』と言われたので宣伝します。いい宿です」
この魅力あふれる旅館について、当サイトからも電話で取材を試みると、ひさこさんが優しい口調で、照れながらも質問に答えてくれた。
「あんまりたくさん人が来てくれても対応ができないのだけども、うれしいことですね。わたしも年を取ってしまったので十分なことをできないので、値段は安くしているんです。20歳で嫁に来てからずっとここで働いています。主人は病気で早くに亡くなって、それが私が49歳くらいのときだったかな。それからもう30年くらい一人で切り盛りしています。
忙しいときはパートさんも雇っていましたが、最近は自分も年を取って手足も痛いし、常連さんがちょっと飲みにくるくらいですね。そんな中でもたまに、ネットで見たという方が泊まりに来てくれたりしますね。予約は電話口だけで対応をしているのですが、私も洗濯物したり買い物したりと常に電話を取れるわけではないので、十分に出ることができないのは申し訳ないです。家族的な雰囲気で、静かな場所で安く泊まっていただけるようにしております」(ひさこさん)
鳴門の渦潮や阿波踊りなどと並んで、豊かな自然を誇ることで有名な徳島県。しかし、2019年に株式会社大和ネクスト銀行が20歳~69歳の男女1000名を対象に「国内旅行」に関するアンケートを取ったところ、「旅行したことがない都道府県」ランキングで、1位の佐賀県(80.4%)、2位の高知県(79.4%)、に続き、3位が徳島県(78.8%)となってしまっていた。
今年もゴールデンウィークが終わり、初夏まで連休のない日が続く。五月病に悩むくらいなら、都会の喧騒から離れて静かな里山を旅行するのもいいかもしれない。
取材・文/集英社オンライン編集部 写真提供/べーたさん/@onecuprain
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