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家族経営の企業はヤバいってホント? いまだリーク続く「いなば食品」…〈残業代なし、ボーナスなし〉〈経営者一族は自宅の警備費も会社経費で〉〈会社を私物化〉メリットはないの?

集英社オンライン / 2024年5月22日 11時0分

いなば食品株式会社の“ブラック”ぶりが報じられ、ネットでは「家族経営の会社には入社すべきでない」という意見が多々みられる。はたして家族経営の会社は本当にやばいのか。だとしたら、その特徴とは何なのか。

【画像】家族経営の会社でリアルに働く人が疑問に思った「とある警備費」…

家族経営の会社は「入るなキケン」?

この4月に入社予定者の9割が入社を辞退したと報じられた食品メーカー「いなば食品株式会社」。リークされた情報によれば、会長宅の掃除や買い物、ペットの世話を社員にさせたり、同業他社への転職を禁止し、違反すると年収分が罰金になったりするといった“ブラック”ぶりとキテレツぶりが露呈した。

そんななか先日Xで、家族経営の会社に関するこんなポストが話題になった。

≪いなば食品の件もそうやけど、「一族経営の会社には入社しない」と義務教育で教えるべきやろ≫

このポストには5.5万“いいね”がつき、コメントでは「ほんと、その通りです」や「家族以外だいたい奴隷」など、多くの人が一族・家族経営の会社には闇があると感じている模様だ。

日本の上場企業の約半数が家族経営の会社だといわれているが、はたして本当にブラックで身勝手な労働環境が当たり前なのだろうか。巷での体験談などをもとにその実情を見ていく。

会社を私物化する経営者が多い

具体的に家族経営の会社のどんなところが“ヤバい”のか。Xで拾った体験談や実際に家族経営の会社に勤めていた人の意見を見てみる。

Xで多く見られた体験談が「経営者一族は私用の高級車購入も、ガソリン代も、車検もすべて経費で払っていた」といったようなプライベートな出費を経費ですませるケースだ。家族経営の建設会社に勤めている人に実際に話を聞いてみた。

「私は総務を担当しているので、経費の使いどころを確認する機会があるのですが、自宅の警備費を会社の経費として支払っていることに疑問を感じましたね。会社の経営には関係ないと思われる経営者家族の購入品にまで会社のお金が使われていることが、なかなか腑に落ちないです」とのこと。

また他にも「ボーナスなし、残業代なし」で働いているといった体験談もXではよく見られた。こうした家族経営の会社の特徴について、ファミリービジネスに詳しい麗澤大学の近藤明人教授はこう話す。

「家族経営の会社のなかで、多くの会社が陥りがちなのが経営における公私混同です。創業時には家族だけで運営していたということもあり、プライベートとビジネスの境界があいまいになっている会社は少なくありません。

会社の規模が大きくなっているにもかかわらず、経営者が創業当時の感覚のままだと、体験談のように、会社の経費でプライベートな買い物をしたり、社員を道具のように扱い、労働条件が劣悪なものになってしまったりするということはよく見られる事例です」(以下、「」は近藤氏)

家族経営はメリットとデメリットが両極端

家族経営の会社にはほかにどんな特徴があるのだろうか。

「家族経営の会社は経営において、いい面と悪い面を両極端に備えていることが多いんです。いい面でいえば、経営者の意思決定が早く、計画した経営方針をすぐに実現できることが挙げられます。

悪い面としては、企業を私物化し経営者が保身に走る傾向があるので、企業としての新たな挑戦やイノベーションを起こせず、業界での競争に負けてしまう可能性が高いということが挙げられます。

またほかのデメリットとして挙げられるのが、自分たちの会社のルールを客観視し、組織の行動を抑制するガバナンスの機能が十分に働いていないこと。それが原因で、組織の腐敗や経営における問題点が明るみになりにくくなるのです。

そうした腐敗や問題点が何らかの不祥事で明るみになると、行政指導を受けたり、会社としての評判が一気に下がって経営を続けることが困難になってしまったりするというリスクがあります」

今回話題となった、いなば食品の件のように、ある程度名の知れた企業であれば、組織としての問題点が世間に公になったときに大きく取り上げられるが、中小企業の場合は労働組合がないところも多く、組織としてのそもそもの腐敗や問題点が見過ごされてしまっているというケースもあるかもしれない。

家族経営の会社、いい会社と悪い会社の見分け方は?

家族経営のデメリットを中心に紹介したが、家族経営のなかには社員の負担を減らそうと努力する企業ももちろん存在すると近藤氏は指摘する。

「家族経営の会社でも実績を出し、社員からの評判がいい会社というのは実際に存在します。そうした会社が大切にしていることが、取引先はもちろんのこと、社員にも尽くし、大切にしようという態度です。

例えば、人手不足の中小企業のなかには完全週休二日制を実現しようと努力する企業もありますし、AIなどのデジタル技術を活用して業務の効率化を図り、社員の負担を減らそうと努力する企業、また男性の育児休暇取得に積極的に取り組んでいる企業など、社員のことを考え革新的な施策を行なう家族経営の企業もあります。

働く側としても、そうした経営者側のケアがあるからこそ、頑張って働こうという気持ちになりますし、海外ではそういった社員へのケアができている会社が、経営においてもいい成長を遂げているという実証分析の結果も確認されています」

最後に近藤氏に“家族経営の会社としていい企業”を見極めるポイントとは何なのか聞いてみた。

「これはどの企業で働く際にもいえることですが、結局その企業の理念や体制、労働環境が自分自身に合っているのかどうかを見極めることが大事なのではないでしょうか。入社前にそういったことを判断するポイントとしては、経営者が自ら積極的に会社の取り組みについてホームページなどで情報発信をしているかどうか確認すること。そして就職説明会などで社員の様子を観察することが大事だと思います。

前者に関しては、経営者の意向を知る手がかりとして有益でしょう。後者に関しては、社員が楽しそうに生き生きと働いている様子がわかると働くうえでの安心材料になるのではないかと思います。やはり自分の働いている会社が好きだという思いや誇りを持った社員が多い会社は、社員を思いやり、働きやすい環境を提供している可能性が高いといえます」

――家族経営の会社だからと言って一概に悪いわけではなく、社員のことを思いやり、働きやすい環境を提供する企業もある。大切なのはしっかりと自身に合った職場環境を見極めることなのだろう。


取材・文/瑠璃光丸凪/A4studio 写真/shutterstock

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