生身の人間がなぜドールに? 「人間ラブドール製造所」が人気のワケ「応募者の5割近くは性自認が男性からの依頼」「夫婦やカップルも」
集英社オンライン / 2024年5月23日 18時0分
「ラブドール」といえば、等身大の女性を模したアダルトグッズというイメージが強いが、2000年以降は鑑賞用や撮影用などニーズが拡大している。2017年末には、関西を拠点に「人間ラブドール製造所」と称したサービスが誕生した。生身の人間にメイクや衣装を施して、ラブドールに近づける“変身体験”とは、いったいどんなサービスなのか。
【画像】アニメのような形も大きさも完璧な状態にできる「シリコンバスト」
「『人間やめたい』そう思ったことはありませんか?」
公式サイトに記載された誘い文句に惹かれ、製造所のもとには年齢性別を問わず予約が入るという「人間ラブドール製造所」。本来、ラブドールは人間を模して造形される人形のことだが、逆に人間をラブドールに寄せるというのは興味深い。
いったい人間ラブドール製造所とはなんなのか。ラブドールへの変身願望がある体験者はなにを求めてやってくるのか。フェティッシュで耽美な世界をのぞいてきた。
きっかけは「ラブドール風俗」の存在
人間ラブドール製造所所長の新レイヤさんは、現在も人物専門のフォトグラファーを本業にする傍ら、依頼者の変身願望を満たしている。
「サービスを立ち上げたきっかけは、たまたま『ラブドール風俗』という、ラブドールを時間制でレンタルする風俗があると知ったからです。そのとき、なぜこの風俗に需要があるのか、利用客はなにを求めてくるのか気になりました。
そこで調べていくと、ラブドールの所有者の中には、一緒にお風呂に入ったり、着せ替えたりする男性もいるそうです。ラブドールって30~40kgぐらいあるので、メンテナンスするだけでかなりの重労働なのに、よくそこまで愛着持てるなと。生身の恋人に対しても、そこまで付きっきりになれる男性ってなかなかいないですよね。
造形物であるはずのラブドールが、生身の女性より愛着を持たれる……。その現象を倒錯的に感じて、ラブドールの所有者の深層心理をより深く知りたくなったんです。とはいえ、リアルなラブドールを製造するのは技術的に無理なので、生身の女性にメイクを施してラブドールに仕立てようと、このサービスを立ち上げました」
“性的サービスのないイメクラ”のようなサービス
応募者がラブドールになりたい事情は三者三様だ。
「かわいく撮影されたい」「ふだんはできないセクシーな格好をしたい」といったオーソドックスな理由から、「ものとして放置されたい」「緊縛されたい」「蹴ってほしい」というフェチ的願望も絡む。
さらに応募者の5割近くは、性自認が男性からの依頼で、「女性として扱われたい」というジェンダー的な動機も大きい。
男性は基本的に性的立場において、能動的なスタンスにいることが多い。だからこそ、ラブドールに変身し、性的に“見られる”側となって興奮したいと語る人もいる。なかには、縛られてラブドールとなった状態でベランダに放置され、羞恥プレイのように扱われることで充実感を得る人もやってくる。
「体験者の目的はさまざまですが、人間ラブドール製造所は、一言で言うと『性的サービスのないイメクラ』みたいなものです(笑)。衣装やメイクなど外見だけでなく、ラブドールに変身したという設定も込みで楽しんでいる人が大半。
うちでは変身する前に、所有者はどんな人がいいかなど、設定を事細かに決めるんです。一例を挙げると、『中古品でボロボロのラブドールだったけど、やっと優しいオーナーと出会って報われる』みたいな感じです。シチュエーションに乗っかることで、より変身体験に没入できる。イメクラのように、女性スタッフが看護師のコスチュームを着用して、病室を模したシチュエーションでプレイするほうが興奮するみたいな感覚に近いですね(笑)。
ただ、男性のなかには、本当のイメクラと勘違いして問い合わせる人もいるんですよ。男性が『ラブドールに変身した私を犯してくれ』とか(苦笑)。そういうときは、あくまでもウチはフォトスタジオで、風営法に引っかかることはしませんよとお断りしてます」
他にも、夫婦やカップルで訪れる体験者も少なくない。夫から妻へのプレゼントとして、あるいは女性側がパートナーにセクシーな姿を見せたいという動機から、付き添いを希望するという。
「カップルで来る方は、ラブドールに変身することをプレイの一環として楽しんでいるケースが多いです。ラブドールに変身する過程で、私が奥さんを触ることで旦那さんが嫉妬したり、あるいは美しく加工された奥さんを旦那さんが愛でたりと、2人の関係性にエッセンスが出るのだと思います」
シリコンバストが人気
設定を固めたら、いよいよラブドールに近づけていく。ここでのポイントは、衣装やメイク、ウィッグなど、外見の加工は新さんはじめ製造側が決める点だ。どれほど露出するかなど必要最低限の要望を聞き、それ以外は作り手が主導権を握ることで、応募者はより“人形になった没入感”を味わえる。
メイクは新さんが独学で確立させた、ラブドールに近づけるメソッドがある。
「私自身2体のラブドールを所有しており、そこから造形を研究してきました。ラブドールは目がかなり大きくて、そのぶん鼻と口が小さい。輪郭は丸顔が一般的で、ほっぺを丸くして幼さを感じさせ、肌質は毛穴がまったくなくてマットな質感です。要はかなり人間離れしているので、応募者が持っている顔面の特徴や土台をいったんメイクで消してから、ラブドールらしいディティールに近づけていくんです。
しかし、最近のメイクのトレンドは、ラブドールの質感とは真逆。肌のツヤ感を出したり、フェイスラインをスッキリ見せて、輪郭を逆三角形の小顔に寄せるのが流行っているんです。だからこそ顧客は、完成した自身の姿を見たときに、ふだんとは違うメイクに驚く方が多いですね。
それから顔面と同じくらい重要なのが、胸の加工です。私たちは“おっぱいメイク”と呼んでいるのですが、できるだけブラのほうにお肉を寄せて、おっぱいを大きくして、撮影映えするように意識してます。やっぱりそのほうが満足度が高いんですよ。
それにHカップぐらいのシリコンバストを装着する人も多いですね。もうアニメのような、形も大きさも完璧な乳で、装着すると変に気分や自己肯定感が上がるんですよ! それにシリコンバストは作り物なので、女性でも堂々と胸を露出できて、ふだんは味わえない解放感も堪能できるんです」
仕上げはラブドールの周りに“使用済み”を連想させる、くしゃくしゃに丸めたティッシュを散りばめる。なかには“疑似精子”を身体にかけて、さらにディテールを満喫するケースもあるそうだ。
こうした一連の過程を経て、体験者は変身後に初めて鏡を見てラブドールとなった自分と対面する。顧客に変身する過程を見せないのも、完成後の衝撃を強く感じてもらうためだ。
「変身後は『自分の新たな一面が垣間見えた』と話してくれる人が多いですね。例えば、目が切れ長ゆえにふだんはクールなメイクをする人が、かわいらしいラブドール風の自分の姿に驚いて、鏡の前で何回も回っていたりして、うれしかったのを覚えています。
あとは『自己肯定感が上がった』『幽体離脱したみたい』という声も聞きます。綺麗なラブドールとして写真を撮られたり、それこそ人形として愛でられることで、自分を受け入れやすくなった、と。それに自分でメイクすると、加工や写り方を気にしがちで、なにかと見栄や好みが付きまとってしまう。でも、人間ラブドール製造所では我々が加工を一任するので、そうした自意識から切り離されて、純粋に変身を楽しめるというのも好評です。
ラブドールに変身したい動機や変身した後の感想が、人それぞれ異なるのも、人間ラブドール製造所を続けている醍醐味ですね」
側から見れば、単に変身願望を満たすサービスのように見えるが、その内情は奥深い世界が広がっている。
取材・文/佐藤隼秀
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