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「感じ悪いですよ」「設置はしょうがないですね」富士山ローソンの黒幕設置に地元民からは賛成・中立・反対の声「外国人観光客のマナー違反は問題だけど」

集英社オンライン / 2024年5月23日 17時0分

山梨県富士河口湖町のローソン河口湖駅前店の道路に張られることになった黒幕。外国人観光客が写真を撮るために道路に飛び出すなど、危険行為やマナー違反をすることが多く、その対策として張られたのだが、意外にも地元住民からは反対の声もあがっている。

【画像】ローソン河口湖駅前店付近の道路で危険な撮影をする観光客

突然設置された大きな黒幕

5月21日にローソン河口湖駅前店の前の道路を挟んだ反対側の歩道に張られた黒幕は、長さ20メートル、高さ2・5メートル。かなりの圧迫感がある。

2022年秋頃、海外のインフルエンサーがこのローソンの店舗越しに見える富士山を撮影してSNSに投稿して拡散したところ、瞬く間にこのローソンが撮影スポットとなり、外国人観光客が多数訪れることになった。

その結果、写真を撮ることに夢中になって道路に飛び出したり、ゴミをポイ捨てするなどの問題行動が相次ぎ、地元住民から苦情が続出。注意喚起の看板を設置したりして対策を講じたが効果は薄く、 “苦渋の選択”として黒幕を張ることになった。

黒幕が張られた翌日の5月22日。ローソン河口湖駅前店を訪れると相変わらず外国人観光客で賑わっていたが、黒幕の効果か、曇っていたこともあってか写真撮影する人は少なく、道路に飛び出すなどの問題行動はまったく見られなかった。

黒幕を眺めていた60代男性の日本人観光客に話を聞くと、「テレビでやっていたので見に来たんですけど、やむを得ないのかなぁとは思いますね。こうして車が通っているのを見ると危ないですから」と、黒幕設置に賛成の立場を示した。

また、20代女性の日本人観光客に話を聞いてもやはり、「SNSで話題になっていたのを知っていたので来たんですけど、マナー違反があるのなら仕方ないと思います。観光客のことより、まずは地元の人の意見が大切だと思うので」と、賛成だった。さらにアジア系の観光客は「んー、ソーリー、ノーコメント」と苦笑いだ。

ただ、地元民に話を聞くと、意外にもこの黒幕設置に賛成の声だけではなく、疑問の声、中立・反対の意見をいくつか聞くこともできた。

地元民「感じ悪いですよ」

河口湖町に住む40代主婦は「他のアイデアがなかったのかとは思いますが、(黒幕が設置された目の前の)歯医者さんも入り口を変えたりしていろいろ対策をやってくださっていたみたいなので、仕方ないのかなとは思います。この地域は車社会で、一人一台車をもって、どこに行くにも車に乗るのですが、この道路は地元のみなさんも避けて、回り道をするようになるくらい、問題になっていましたからね。

設置されて1日しかまだ経っていませんが、黒幕の効果は実感しています。今日は少し曇っていて富士山の裾野まで見えないこともあるからだと思いますが、いつもはこの歩道を通れないほど人が大勢いるのに、今日は全然いませんからね。こんなことは観光客で混みだしてからはなかったと思います」

一方で、同じく河口湖町に住む70代の女性は、意外にも反対の意見を口にした。

「これはヒドいですよ。まずこれを設置することについて、我々はお話を聞いていませんでしたから。急に行政が決めてしまって…。せめて近隣の方々の意見を聞くべきだったと思います。あの黒幕はなんだか感じ悪いですよ。だって、いまや“世界の富士山”じゃないですか。富士山を見るためにわざわざ河口湖まで来たのに、それを隠すようなやり方だなんて。もちろん、今回のやり方なら、コンビニの駐車場からまだかろうじて撮影できますけどね。でも黒幕を設置する以外に、ローソンの上に看板を置いたりして、本当に全部隠そうっていう案もあがっていたらしいじゃないですか。それは本当にダメだと思います

あと、黒というのもどうかと思いましたね。空に溶け込む青とか白とか、もっと町の景観に溶け込むような色とかデザインにならなかったんですかね。この町にはいないかもしれませんが、東京にはそういうデザイナーの方もいらっしゃいますよね? 町長は苦渋の選択と言っていましたけど、早く解決したいだけなんじゃないかしら。やり方がちょっと強引すぎます」

確かにこの黒幕が設置されたからといって、撮影スポットになっているローソン越しの撮影ができなくなったわけではない。あくまで、危ない道路横断をする人を阻止するために設置しただけで、撮影禁止にしようという意図ではない。が、黒黒とそびえ立つ黒幕は、どこか近寄りがたい雰囲気を出し、観光客の排除を狙っているように見えてしまうのも事実だ。

 タクシー運転手は黒幕に賛成

この付近を通りがかった地元民の60代女性に話を聞くと、彼女もまた黒幕設置に否定的な姿勢を示し、代替案も明かした。

「この町ではいろんなスポットがあります。富士山がキレイに見えるのはなにも、このローソンだけじゃありませんのでね、『こういうとこもあります!』というのを行政がSNSか何かで発信して、そこに行くバスを無料化、あるいは100円だけとるとかして、いろんなところに観光客の方をつれていってあげて分散すればいいと思います。

観光客の中にはゴミを落とす方もたくさんいます。確かにそれはエチケット違反ですけど、私は近場に落ちていたゴミは拾っています。なにもゴミ袋いっぱいになるような量ではないので、それくらいは、と思ってやっています。私たちも外国に行ったときはルールも知らないでそういう迷惑をかけたかもしれないじゃない。日本人が迷惑かけている事件だってあります。観光客の方にはせっかく来たのですから、いい気持ちで帰っていただきたい。

他にも、ダメでもともとですけど、例えば新宿からバスで来るんだったら、バス車内で、マナーのことを何度もアナウンスするとか。とりあえず注意・警告してみることも大事だと思います。あとは、苦難の道ですけど、時間を決めて歩行者天国にするのもいいんじゃないですかね。地元の人はいろんな道を知っていますから、この道を避けて通ることもできますし」

地元民はこの道を避けているという意見もいくつかあがったが、これに真っ向から反対したのが、この町でタクシー運転手として働く、78歳の小野田さんだ。黒幕設置には賛成をしている。

「黒幕はいいんじゃないですか。あそこは両方の歩道から人が写真を撮っていて、中には飛び出してくる人もいますから、私は『ブッ!』とクラクションを鳴らしたこともあります。あそこはそれでなくても、もともと狭い道で、注意していましたからね。
去年の春頃からぼちぼち飛び出す人がいて、『危ないなぁ』と思っていましたが、昨年秋頃からだんだん増えてきて、今年のお正月から爆発的に増えてしまって。ローソンに駐車した車が出られないほどになってしまいました」

当事者であるローソン店員に話を聞くと… 

また、地元民の人たちが避けると言っていたこの道路だが、タクシー運転手にとってはそれもできないそうで…。

「あそこの道は避けられないんですよ。富士山に行くための重要道路でしてね、一直線になっていますから抜け道がないんですよ。すごく遠回りすれば他の道はありますが、それだと料金が高くなってしまうでしょ? 富士山までの道は会社のほうでも料金を把握していますから、値段が高いと、『なんでこんなに高いんだ?』と会社から言われてしまいますからね。
だからあそこは危ないと思っても通らざるを得ないんです。だから黒幕の設置は賛成というか、しょうがないですね。あそこがもっと静かになればいいと思います。これからシーズンに入りますからね。

他にもいっぱいきれいな場所があるので、別の場所を探してほしいですね。でもそうすると、今度は富士吉田のほうが問題になるんじゃないですか? あそこも細い道からいっぱい人が出てきていますから」

富士吉田の商店街は昔ながらの街並みが残っている映えスポットの一つだ。商店街の先に富士山が見える様が絶景でもある。アクセスは河口湖駅周辺より難しいが、それでも写真を撮るためだけに訪れる観光客も後を絶たない。

なお、当のローソン河口湖駅前店の店員にこの黒幕の是非を聞くと、一様に「本部にご連絡ください」と話すのみで、どうやら箝口令が敷かれているようだった。

近年、登山客のマナー違反や通行料義務化など何かと騒がしい “世界の富士山”。 「この黒幕は期間限定になるのでは?」という意見もあるが、果たしてどうなっていくのだろうか。

取材・文・撮影/集英社オンライン編集部

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