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〈カメムシが今年も大量発生!〉「ここ10年でこんなに早い時期に出てきたことはない」昨年とは一変した発生状況に農家も悲鳴。全国26都道府県で注意報が発令中

集英社オンライン / 2024年5月24日 18時0分

今年もまたやってきた緑色の憎いやつ——。農作物を食い荒らし、洗濯物に紛れたアイツを取り込もうものなら、屋内でも強烈な臭気を放って……すでに全国26都府県で「カメムシ注意報」が発令中だ。

〈閲覧注意!〉白い壁にビッシリと集まったカメムシと、農家がフェロモントラップで誘殺したバケツいっぱいのカメムシ

昨年の花粉量が少なかったことが影響か

このところ毎年のように大量発生しているカメムシだが、実は今年はちょっと傾向が異なる。

昨年は真夏にイネ類を餌にする「斑点米カメムシ」が多発してコメ農家を困らせたが、今年は果樹カメムシ類が春先から大量発生し、果樹農家を絶望のどん底に叩き落としているのだ。

農林水産省の「病害虫発生予察情報」によると、今年のカメムシ注意報は3月22日に愛媛県で発令されたのを皮切りに、4月には神奈川や鳥取、山口、和歌山、高知、徳島と幅広い地域の6県に広がり、5月に入ると九州から四国、近畿、北陸、関東の各府県で連日のように発令。

21日にはとうとう農業のイメージとは縁遠い東京都でも発令された。対象作物はビワやモモ、キウイフルーツ、かんきつ類、ナシ、ブドウ、カキなど果樹全般に及ぶ。

このうち、例年さまざまなカメムシの被害に見舞われている高知県農業振興部は「こうち農業ネット」というウェブサイトで、被害状況や対策の発信を行なっている。担当者に詳しく聞いてみた。

——今年はどんな被害が出ていますか。

カメムシは口が針状になっていて、刺したところから果実が腐敗していくため、商品として出荷できないレベルになります。とくに今の時期はビワの被害が多発していますね。

ビワは袋をかけて育てるのですが、袋の隙間からカメムシが侵入し、果実を吸って腐らせたり、へこませたりするので商品にならないんです。

ビワだけでなくミカンやモモ、ブドウにも被害が広がっていて、ふだん農薬散布していないエリアでも、今年はしているところが多いです。

また、農家だけでなく、一般の家庭からも「家にカメムシがたくさん飛んできて困る」という相談が多く寄せられています。

——今年もまたカメムシが増えた原因はなんでしょう。

昨年の春先、ヒノキ花粉の量が多かったからだと思います。カメムシはヒノキの実を餌にして育ちます。花粉が多ければ実も多くできるため、その翌年はカメムシが多発する傾向にあります。

さらに寒さに弱いカメムシにとって、今年の冬は比較的暖かかったことが幸いし、加えて、春先に雨が少なかったことも原因かと思います。雨が多いとカメムシの幼虫は木から落とされるので。
 

——カメムシ被害にはどんな対策が有効ですか。

農家の方には、できるだけこまめに農薬を散布することをおすすめしています。

一般の家庭では、照明に蛍光灯ではなくLEDを使用することをおすすめしています。カメムシは紫外線に集まる習性があり、蛍光灯よりも紫外線の少ないLEDを使用することで寄ってくるカメムシの数は減ります。屋内への侵入を防ぐために網戸も有効です。

 また、1匹のカメムシがニオイを出すとそのニオイに反応して、他のカメムシが寄ってくることがあります。昆虫はニオイで自分の意思を伝達するので、「ここに餌がある」と伝達されてしまうと大量発生の原因になります。

だから、カメムシに刺激を与えないことがポイントです。直接触らないように、ペットボトルを半分に切ったもので捕まえて、そっと外に出すといった方法もあります。

カメムシピークが今年は2ヶ月以上も早い

高知県では果樹カメムシ類のフェロモントラップ(メスのフェロモンの匂いでオスを引き寄せ、捕獲する仕掛け)で、平年の50倍の誘殺が確認されているという。

他の地域でも平年をはるかに上回るカメムシ被害が発生し、農家を悩ませている。

「今日も近所の農家の寄り合いではカメムシの話題で持ちきりでした。今のところ、大きな被害に遭った農家はいなかったのですが、時期的にこれからカメムシがもっと増えてくる可能性があるので、しっかりと対策を取る必要があるという話をしました。うちはビワに被せる袋を二重にして害虫対策をしています」(千葉県のビワ農家)

酒米とタマネギの生産量が全国1位で、葉物野菜の生産量も全国有数という農業県の兵庫県でも、被害は深刻だ。県立農林水産技術総合センターの病害虫部は今年の多発状況をこう分析する。

「おそらく、昨年の秋口に大量発生したカメムシが越冬をして、最近また活動的になっているのだと思います。

兵庫県では、モモやナシなど収穫時期が早い農家の方はとくに対策をするよう呼びかけています。

実際にモモ農家やナシ農家の方から『カメムシにやられて実が落ちてしまった』という話も聞いています。あと、これからですと、カメムシがミカンなどの柑橘類の花の蜜を吸い、実がならなくなる被害も予想されます」

イチゴのブランド産地として知られ、カメムシ被害の多いイチジクやカキの一大産地でもある福岡県にとっても、果樹カメムシ類は天敵だ。

「果樹カメムシ類は例年6~7月に最も多く発生します。ところが、今年のピークは4月中頃で、いまだに恐ろしいほどたくさんの数のカメムシが発生しています。ここ10年でこんなに早い時期にカメムシが大量に出てきたことはなかったと思います。

カメムシは長距離を飛ぶことができるタイプの虫なので、農園で見た際はすぐに農薬をまくように呼びかけています。また、農薬はふだんから2~3週間に1回くらいのペースでまくことをおすすめしています」(福岡県病害虫防除所)

果樹カメムシが落ち着いたら、今年も真夏には斑点米カメムシが大発生してコメの獲れ高にも影響するかもしれない。来年こそは、カメムシの原稿を書かなくてもいい一年になりますように。

※「集英社オンライン」では、自然災害や動植物被害について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。
メールアドレス:
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@shuon_news  

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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