「#ワークマン女子」400店舗出店で逆転ホームラン狙うも客足は軟調…一般衣料市場でワークマンが抱える致命的な弱点とは?
集英社オンライン / 2024年6月3日 8時0分
〈中国から撤退した「丸亀製麺」がラーメン「ずんどう屋」で再挑戦…巨大市場・中国攻略の難易度はなぜこれほどまでに高いのか?〉から続く
快進撃を続けてきたワークマンが岐路に差し掛かっている。2期連続で営業減益となったのだ。ワークマンは作業着からアウトドアウェア、そして女性向け衣料へと進出を遂げている。ワークマンプラスに次ぐ成長エンジンに位置づけているのがワークマン女子だ。経営陣はワークマン女子のリピーター化が課題だというが、ビジネスモデルにおける根本的な弱点を抱えていることも否めない。
【図を見る】ワークマン内で突出する女性向け衣料のチェーン全店売上高
48店舗から400店舗までの拡大を目論む
2024年3月期の売上高に当たる営業総収入は前期比3.4%増の1326億円だった。ワークマンプラスの出店、転換を進めていた時期と比べると、売上成長ペースはやや鈍化している。
ワークマンは2024年2月5日に通期業績の下方修正を出しており、売上高を予想比1.2%減(15億円マイナス)とした。その際に営業利益の修正も行っており、8.9%引き下げている。
営業増益の予想だったが、一転して営業減益となったのだ。
2025年3月期の売上高は前期比4.5%増の1385億円、営業利益は同2.1%増の236億円という予想を出している。
2024年3月期の営業利益は当初、262億円と予想していた。これは業績が絶好調だった2022年3月期とほぼ同じ水準である。2025年3月期の営業利益の予想額と増益率は保守的になった印象を受ける。
ワークマンは、女性向けカジュアル衣料のワークマン女子に成長期待をかけている。2023年3月期の経営方針に出店攻勢を掲げているが、その中核にあるのがロードサイドやショッピングモールでのワークマン女子の出店だ。
2024年3月期の女性向け衣料のチェーン全店売上高は123億円。2021年3月期と比較して1.9倍に急拡大している。
ワークマン女子は2024年3月末時点の48店舗から今期81店舗。中期的には400店舗までの拡大を計画している。
ワークマンは働く男向けの衣料品店から、一般消費者へのマス化を図ろうとしており、その戦略の中心にあるのが女性向け衣料なのだ。
卸売業に近いワークマンのビジネスモデル
ワークマン女子で販売する商品は、低価格かつ機能的であることが最大の特徴だ。価格帯の競合にはファーストリテイリングのGUと、しまむらがある。GUは機能性とは真逆のトレンド志向だ。しまむらは機能性とトレンドの中間あたりに位置している。競合とはポジショニング上の差別化を図れているのだ。
ワークマン女子は、しまむらが得意とするホームセンター・スーパー隣接型の店舗と、GUが得意とするショッピングモール・路面店で出店を重ねる意向を示している。3つのブランドが真正面からぶつかり合う未来が想像できる。
ただし、ワークマンはしまむらやファーストリテイリングとは全く異なるビジネスモデルを採用しており、それがリスク要因になる可能性がある。それがフランチャイズ型のビジネスだ。全店舗の94.2%がフランチャイズ加盟店なのである。
ワークマンの営業利益率は17.5%。しまむらが8.7%だ。原価率はワークマン、しまむらともに65%程度だ。違うのは販管費率。店舗の家賃や人件費の負担が軽いワークマンは経費を安く抑えることができ、利益率を高めることができる。いわば卸売業に近いのだ。
利益率が高いのであれば、マイナスのリスクにならないのではないかと思うかもしれない。しかし、利益率では測れない弱点を抱えている。
ワークマンの一般向けウェア・グッズに品切れが多い理由
SNSで話題のウェアやグッズがワークマンの店舗で品切れだった経験はないだろうか?これにはフランチャイズ主体のビジネス特有の問題が関わっている。
フランチャイズ加盟店は、独立した法人が運営を行なっている。先ほどワークマンは卸売業に近いという話をしたが、まさにフランチャイズ加盟店は本部から仕入れを行なっているのだ。
加盟店オーナーとしては、たとえ売れ筋商品があっても在庫が山積みになるリスクは避けたい。必然的に仕入れの量は抑制気味になる。身銭を切るのだから当然である。
品切れ対策として、本部がECに力を入れればいいのだが、ワークマンは基本的にフランチャイズオーナーを儲けさせて稼ぐビジネスモデルだ。売れ筋商品でバンバン広告を打って本部が儲けようものなら、加盟店オーナーから反発を食らうのは必至なのである。
フランチャイズ主体で店舗を拡大する場合、直営に比べて在庫コントロールが難しい。品切ればかりで消費者の失望を買う可能性もある。
実はこれまでのワークマン女子のモール内出店はすべて直営だった。店舗運営会社への業務委託という形ではあるが、仕入れの自由度は高かったはずだ。しかも、ワークマンは女性向け衣料の拡大を狙っている。増収に向けたサポートは十分に行なっていたはずだ。
それにも関わらず、2024年3月期におけるワークマン女子の既存店の売上高は、前期比11.1%の減少だった。既存店はオープンから一定期間が経過した店舗を指し、集客しやすい新規開業効果が効きづらいため、実力を把握しやすい。
これが経営陣の懸念する、リピーター化が課題だというものだ。
女性の従業員比率が著しく低い
ワークマンは作業服の衣料メーカーとして成長してきた。作業服は製品のリニューアルサイクルが長いという特徴がある。トレンドを追うものではないからだ。
しかし、一般女性向けは話が違う。いくら機能性重視とはいえ、シーズンごとの新製品を発表やモデルチェンジが必要になる。
作業着の開発サイクルではそれが間に合わないのだ。
女性の従業員比率が低いという問題点もある。2023年3月期の女性社員比率は14.2%。管理職比率が1.4%だ(2023年3月期)。しまむらの女性社員比率は63.4%。管理職比率17.6%(2024年2月期)に及んでいる。
ワークマンという組織に女性主体の風土が根づいているとはまだまだ言い難いだろう。
ワークマンが女性衣料に進出するのは理解ができる。作業着市場は伸びしろが少なく、頼みのアウトドアウェアはキャンプブームの一巡で停滞気味だ。
しかし、今のビジネスモデルを踏襲して出店を急ぐのは、拙速であるような印象を受けるのも事実だ。
取材・文/不破聡
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