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喜怒哀楽の中で人間が最も想いを乗せられる感情は「怒」…怒りを文章にする際、何よりも大切にするべきたったひとつのポイント

集英社オンライン / 2024年6月6日 11時0分

感情が溢れた文章には狂気が宿る…星野源が闘病で、さくらももこが祖父の死に面して綴った文章に映る「書くしかない」想いの強烈な魅力とは〉から続く

SNSやブログで読まれる文章とはどんなものか? 「テクニックを凌駕する圧倒的なパワーは喜怒哀楽の『怒』」と語るのはエンタメ系トップブロガー「かんそう」さん。

【画像】はてなブログにて個人ブログ「kansou」を運営し記事数は1000超、月間PVは最高240万アクセス、累計PVは5000万アクセス。ブロガー・かんそう氏の新著

彼が培ってきた文章にまつわる「考え方」「書き方」をまとめた著書『書けないんじゃない、考えてないだけ。』から一部抜粋、再構成してお届けする。

人間は何かにブチギレてる様子が一番面白い

「喜怒哀楽」の中で人が最も想いを乗せられる感情はなんだと思いますか?

それは「怒」です。

多くの文章本では「ポジティブな文章を書きましょう!」「マイナスな言葉を言い換えましょう!」などと、「怒」を完全に否定していますが、人間は何かにブチギレてる様子が一番面白いのです。

怒っている本人や怒られている当事者ではなく、その様子を第三者目線で見ると笑えた経験はありませんか? 他の感情に比べて「怒」が乗った文章のスピード感と破壊力は全てを凌駕します。

まずは、心の中にあるブレーキを破壊してください。「こんなこと書いたら怒られるかも……」「読む人によっては不快かな……」という考えをゴミ箱に捨ててください。

例えば、私がこの世で最も嫌いな言葉は「エモい」なのですが、6年前に「エモい」に対する憎悪を綴った記事を紹介します。

「エモい」って言葉がマジで気に食わねぇ何かって言やぁどいつもこいつも狂ったようにエモいエモいエモいエモい…

エモいとは、英語の「emotional」を由来とした、「感情が動かされた状態」、「感情が高まって強く訴えかける心の動き」などを意味する日本語の形容詞。 感情が揺さぶられたときや、気持ちをストレートに表現できないとき、「うまく説明できないけど、良い」ときなどに用いられる。エモい - Wikipediaより

「うまく説明できないけど、良い……っ」

は? なんだそりゃ? うまく説明できないんだったら喋んじゃねぇよ。まとまってから言えよ。「良い……っ」じゃねぇよ、軽くイッてんじゃねぇよ。なに一人で勝手に気持ち良くなってんだよオナ太郎かよ。

しかも「エモい」使うやつ漏れなく全員「わたしわかってます〜」みたいな雰囲気出すだろ。なんだあいつら。公園で花火して一番盛り上がってるところで通報されろよ。「エモい」って使った時点で言葉にするのを放棄したサルだからな。バナナ目の前にしてウホウホ言ってんのと変わんねぇんだよドンキーコングかお前ら?

そうやって一生地面叩き続けてろよ。「ぼくは上手く言葉にできないけどニュアンスを感じ取って…」みたいなのマジでハラワタ煮えくり返るわ。お前らの脳味噌カニ味噌入ってんのか糞が。

文読んで「このブログエモい…」メシ食っては「このブロッコリー超エモい…」映画観ては「ラストシーンの石原良純エモすぎ…」漫画読んでは「最近『浦安鉄筋家族』読み返したけどマジエモい…」犬見ては「あの白い犬エモっ…」マジで全員なに言ってんだよ。キツめのクスリやってんだろ。救いようねぇバカここに極まるだな語彙力胎内に忘れてきたんかお前ら? 

なにがエモい文章だよ、ただのつまんねぇポエムだろ。森羅万象エモいで片付けてんじゃねぇよ。なんの宗教だそれ。じゃあ逆になにが「エモくない」んだよ。そっちのほうが興味あるからそっち教えろ。

(中略)

ブログは衝撃のラストへ…

特に終わってんのが音楽な音楽。アホみたいな顔して口半開きで「この曲エモいんや〜〜〜」つってヨダレ垂らして。最近『おジャ魔女カーニバル!!』がエモいとか言われててマジで気狂いそうになったわ。頭カラッポで聴けるバカソングの代表みたいな曲だろあれ。テメェらがのたまうその「エモい」の定義だとどっちかって言ったらEDの『きっと明日は』のほうだろうがいい加減にしろよニワカ共がよマジでお前らの人生ポポリナペーペルトさせてやろうか?

お前らは手軽な言葉として「エモい」って使ってるかもしれねぇけど聞き手の理解のテンポ死ぬほど悪くしてるの気づけよ。どこがどう良いのか聞かされてるこっちは1ミリたりとも伝わってねぇんだよ。「エモい」使う奴がもれなく大好きな言葉「コスパ」最悪なのわかってんのか? しかも一番ハラワタ煮えくり返るのが、こんな曖昧極まりない言葉で同意求めてくる奴もうお前ん家のテレビ一生モニタリングだけ流れ続けろ。

「この曲、エモくない?」

うっせバーーーーーカ!!! 俺が閻魔大王だったらてめぇが「エ」っつった瞬間に舌抜いてるからな、良かったなぁ? 俺が閻魔大王じゃなくてよ。拾った命大事にしろや。

「エモくない?」じゃねぇんだよ。なにがだよ。エモくねぇよ。そもそもこっちはその「エモ」を受け入れてねぇんだよ。なに共通語みたいな感じで話してきてんだよ。こっちからしたらお前ただ口パクパクさせてるだけだからな。魚と一緒だよ。なんにも言ってねぇよ。そこにあるのは「無」なんだよ。少し空気が震えただけ。

その感情を言葉にしろよ、どこがどうエモいのか「エモい」って言う前に歌詞のどのフレーズが、曲のどのメロディラインが、ボーカルが、ギターがなんで心を揺さぶるのか、コンベンションセンターで2時間の講演をやれ。10000字の文章にして読ませろ。できないなら黙れ。

いや、百万歩譲ってそのへんの高校生とか大学生が「エモい」っつってんならまだ「言葉知らねぇガキ」でいいけどいい年した大人、しかも本職のライターがエモエモ書いてんのみると情けなくて涙も出ねぇわ。二十歳超えて「エモい」とか言ってんなよ。お前らが目指した文章ってそんなそこらの鼻タレ坊主でも言えるような言葉で片付けられるものだったのかよ? もっと自分にしかない言葉で自分だけに書ける文章で良さ伝えたかったんじゃねぇのかよ? 掠れたインクで文章書き続けて恥ずかしくねぇのか? お前らのペンとっくにもう折れてんだよ。おいナタリー、ロッキング・オン、クイック・ジャパン、シンラ、リアルサウンド、お前らの「エモい」の3文字はいったい文字単価いくらだ?

お前らがプライドまでドブに捨てたってんなら俺はもう何も言わねぇよ。泥水すすりながらバカみたいに口開けて死んだように生きてろよ。永遠に「Webライターやってます! ◯◯に寄稿中です!」とかXのプロフィールでドヤってろよ。ただし俺の前に現れたらバイオハザードよろしくグレネードランチャーで頭ふっ飛ばしてやるからな。俺は曲がりなりにも文章書いてる身として、死んでも「エモい」なんてわけわかんねぇ言葉を使うような人間にはなりたくねぇ。それだけ。以上。

…ん…? あれっ…ちょっと待って…

ほんと調子こいてすいませんでした…クツ舐めるんで全部忘れてください。

(kansou「なにが「エモい」だよ意味不明なんだよ恥を知れ恥を」より)

怒りは愛からしか生まれない

これが「怒」の文章です。

前半は「エモい」がどういう言葉なのかを的確に説明しつつ、

特に終わってんのが音楽な音楽。アホみたいな顔して口半開きで「この曲エモいんや〜〜〜」つってヨダレ垂らして。最近『おジャ魔女カーニバル!!』がエモいとか言われててマジで気狂いそうになったわ。頭カラッポで聴けるバカソングの代表みたいな曲だろあれ。テメェらがのたまうその「エモい」の定義だとどっちかって言ったらEDの『きっと明日は』のほうだろうがいい加減にしろよニワカ共がよマジでお前らの人生ポポリナペーペルトさせてやろうか?

と、具体的に例を出し、その矛盾点を残らず指摘していきます。

中盤は「エモい」がいかに意味のない言葉なのかを指摘しつつ、ターゲットを「プロなのにエモいを使ってしまう書き手」にスライドさせていきます。

そして終盤は自分は絶対に「エモい」を使わない、使うくらいなら死んだほうがマシだ、と吐き捨て、終わる。しかし、過去に筆者自身が「エモい」を使っていたという、今まで書いた言葉が特大ブーメランになって自分に突き刺さる衝撃の展開で本当の終わりを迎える。

ただ、勘違いしないでください。

なにも全ての人間がこんな気色の悪い文章を書いたほうがいい、ということでは決してありません。私は羞恥心やプライドなど、人間が最低限の社会生活を送る上で必要なものを全て捨てて「ネット上のウケ」だけに特化した結果、こうなってしまったのです。絶対に〝こう〟ならないでください。あなたには、あなたの「kansou」を築き上げてほしい。

要するに、自分の文章の「感情」や「熱」がどれだけ読者に伝わるか、という話なのです。

怒りの文章を書く際のポイントですが、何よりも大切なのが、「対象」を深く知ることです。

〝故に曰わく、彼れを知りて己れを知れば、百戦して殆うからず。彼れを知らずして己れを知れば、一勝一負す。彼れを知らず己れを知らざれば、戦う毎に必ず殆うし。〟

これは孫子の中でも最も有名な教訓のひとつです。

敵情を知り、味方の事情も知れば100回戦っても危険がなく、敵情を知らないで味方の事情を知っていれば勝ったり負けたりし、敵情を知らず味方の事情も知らないのでは戦うたびに必ず危険になってしまう。

たとえ心から憎き相手だろうと、知らなければ何も言うことができないし、ましてや文章で言い負かすことなど到底できません。

嫌いな食べ物があるのなら、嫌いな食べ物を使った料理を全て食べる。嫌いな歌手がいるのなら、その歌手がリリースした楽曲を全て聴く。そうすることで初めて嫌いなものの「どこが嫌いなのか」を明確に言葉にすることができるのです。

逆に言えば、何も知らずにイメージだけで書く「怒り」の文章にはユーモアも説得力もありません。ヤフコメを思い出してください。適当に書いたアンチコメントほど価値のないものはない。人を楽しませる怒りは愛からしか生まれないのです。

私はこの文章を書いたとき、Xやnoteで数え切れないほどの「エモ文章」を読み、研究し、口から血が出るほど怒りのパワーを溜めて書きました。私ほど「エモい」のことを考えている人間はいません。私は書こうと思えば誰よりも上手くエモい文章を書くことができます。そういうことなのです。

どうか自分の感情にフタをしないでください。喜怒哀楽、全ての感情を見せてほしい。私も全てを見せます。 


文/かんそう 写真/shutterstock

書けないんじゃない、考えてないだけ。

かんそう
書けないんじゃない、考えてないだけ。
2024/5/22
1,650円(税込)
352ページ
ISBN: 978-4763141378

「面白かった」「やばい」しか出てこない人でも、
書きたいことがとめどなく溢れてくる!!

★文章で大切なのは、テクニックよりも
「書く前にどれだけ考えるか」「どうやって考えるか」

「せっかく感動したのにうまく言葉にできない」
「SNSやブログで読まれる文章を書きたい」
「自分の商品や作品の魅力をちゃんと伝えたい」

「書けない」悩みには、共通する原因があります。
それは、文章テクニックの上手い・下手ではありません。
「書く前の考え方」を知らないことです。

本書では、「文章力」を
「文章について本気出して考えた時間の量」と定義しています。

書く前に、どうやって考えるか。
書く前に、どれだけ考えられるか。
考えたあとに、読まれる文章をどうやって書くか。

考える→書く
これさえできれば、あなたの想いや感動を
何千字でも何万字でも書けるようになるのです。

★エンタメ系トップブロガーが文章にまつわる「全て」を書き下ろし!
本書は、「書くこと1本」で月間240万PV達成、冠ラジオ番組まで辿り着いたブロガー「かんそう」初の著書。
常軌を逸した表現力で読者の人気を集め続ける著者が、
培ってきた文章にまつわる「考え方」「書き方」を
余すことなく伝授します。

★アナウンサー宇内梨沙さん大絶賛!
「小学生の頃、書き方を教えてもらったわけでもないのに、
夏休みになると読書感想文が宿題になり、苦しんでいた日のことを思い出しました。
この本を読んで
『型にはまるな、自由に書け』と背中を押されたかった。」

【目次より】
■第1章 「文章力」の正体
・文章力=文章について本気出して考えた時間の量
・「文章力」は文章を書かない人間が作り上げた幻想
・文章とは書く前から書いている   など

■第2章 「言語化」気持ちや感動を言葉にする
・自分の中に「イマジナリー秋元康」を飼え
・「自分の感情の海」に深く潜る
・「一」を徹底的に愛する   など

■第3章 「感情」を制するものは文章を制する
・感情が溢れた文章には狂気が宿る
・テクニックを凌駕する圧倒的なパワー「怒」
・尊いを越える究極の表現「恐怖」   など

■第4章 「刺す文章」を書く
・刺す文章は「広いあるある」と「狭い固有名詞」
・文章にこだわりを持つ 文章速度/視線誘導
・句読点、改行は添えるだけ   など

■第5章 「構成」で読者の目を集める
・タイトルに命を懸ける
・摑みは読者の息の根を止めるつもりで
・「起承転結」の「承転」はシカトして「起結」と親友になる   など

■『書けないんじゃない、考えてないだけ。』を読んで、考えてから書いてもらった。

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