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桜蔭から早稲田卒の女性がなぜAV監督の道へ? 原体験は母親の不倫相手からの「娘さんのパンティを持ってきてくれるなら、会おうよ」

集英社オンライン / 2024年5月29日 17時0分

国内大手のアダルトコンテンツ流通業者「SOFT ON DEMAND(SOD)」に在籍した若手女性監督がいる。きっしー氏、28歳。これまで50本以上の作品の製作にかかわり、現場を仕切ってきた辣腕だ。女性でAV監督という経歴も異色ながら、その学歴も目を引く。桜蔭学園中学校・高等学校を経て早稲田大学を卒業。国内最高峰の女子校で学んだ彼女はなぜ、アダルトビデオに魅せられたのか。性を貪欲に追求し続けた女性の人生の根底に迫る。

【画像】すでに絶縁しているという家族との写真

世の中には言ってはいけないことがある

キャップをかぶり、深々と頭を下げる女性。メガホンを携えた「監督」という言葉のイメージからほど遠く、腰が低い。そしてよく笑う女性だ。



「昔から、人の情感に触れるのが好きなんですよね。『今、心が動いたな』っていう瞬間に立ち会いたいんです。そして、セックスという“欲にまみれた行為”をしているときの人間の我を忘れる感じ、隠しきれない獰猛さ、そんな衝動を直に感じられる作品を作りたかったんです。

私が監督としてこだわったのは、作り物のなかでもリアリティを演出することです。なるべく素人っぽい女優さんを起用し、あえて事前に入念には打ち合わせを行わず、男優さんにリードしてもらう。そして“生っぽい”反応をカメラに収めることを心がけました」

きっしー氏が本格的に性に目覚めたのは小学生のころだという。

「同級生の男の子が“エロいワード”みたいなのを言っていて、それを国語辞典で調べて『こんな世界があるのか』と思ったのがきっかけでした(笑)」

小学校の同級生はクラスメイトのほとんどが猥談で盛り上がるようなマセた子ども揃いだった。よって、名門・桜蔭学園中学校に入学してからは世間の常識をやや知ったという。

「やはり私立中学校ということもあり、育ちのいい子が多かったのもあって、『世の中ではこういうことは言ってはいけないんだ』と学びました(笑)。ただ、なかには私みたいなキャラクターをおもしろがってくれる子もいましたけど」

女子御三家筆頭の名門校を卒業した秀才であり、あけすけで溌剌とした笑顔が脳裏に強く焼き込まれる。

だがその生い立ちに驚かされた。

「母はヒステリーを起こしやすい人で、父は仕事に行く以外は自室に引きこもって家族との交流をあまり持たない人でした。
大きな声で怒鳴ったり物を投げたりが日常茶飯事だった母の気性の激しさは、幼少期の私には恐怖でしかありませんでした。今でも、ストレスを感じると耳鳴りが治まらなくなるときがあります。
忘れもしない幼稚園児のとき、私は自殺をしようと試みました。家族が嫌いすぎて、生きているのが嫌になったんです。でも、『なんで私が死ななきゃいけないんだ』って思いとどまりました」

「娘さんのパンティを持ってきてくれるなら、会おうよ」

母親による暴力は、体罰だけに留まらない。

「小学校高学年のとき、当時流行していたmixiというSNSで母親が複数の男性とやり取りをしていることを突き止めました。ほとんどがただの不倫相手とおぼしきなかに、ひとりだけ異質な人物がいました。
その人物は、『娘さん何歳?』『娘さんの写真くれる?』などとしきりに子どもについて尋ねているのです。母はその人物に対して会うことをせがみ、私と妹の写真を送っていました。すると、彼からこんな返信があったのです。『じゃあ、娘さんのパンティを持ってきてくれるなら、会おうよ』」

その後のメッセージのやり取りで、きっしー氏は母が男性に会いに行ったことと、娘の下着を渡したことを知った。

この体験からきっしー氏が感じたことはいかにも面白い。それだけでなく、フィクションの性を提供する道へ進む原体験ともいえるものだ。

「無力な娘をダシにする母親のことは許せませんでした。ただ、性に対する嫌悪にはつながらなかったですね。むしろ、こうした留めることのできない性を、『どうすれば他者に迷惑をかけずに発散できるようになるのか?』とどこか俯瞰した視点で考えるようになりました」

もともときっしー氏にとって、母親は親とはいえ頼るべき対象ではなかった。

「ヒステリックな反面、母は非常にぼんやりした性格で、会話が噛み合ったことはありません。たとえば私は中学受験に際して地元の個人塾へ通いましたが、その三者面談のあと塾長に呼ばれて、『お母さんは話がわかっていない様子だから、今度から別の方を連れてきてもらえる?』と懇願されたほどです。

また、小学校の授業参観のときは、授業中なのに同級生の男の子に話しかけてしてしまうなど、悪目立ちしていました」

家族とはずっと離れたくて仕方がなかった――そう話すきっしー氏にとって転機となったのは、大学在学中の“ある事件”だ。

「突然、母から妹が妊娠9ヶ月であることを知らされました。それまで母も知らなかったようです。妹は母に似てぼんやりした性格です。保育系の短大に進学したのになんの資格も取らずに卒業し、就労支援でやっと保育と関係のないパートにありつけたような、およそ計画性に乏しい子です。

どこかで彼女のことを心残りに思って家族と繋がっていましたが、お腹の子の父親と結婚することになったと聞き、踏ん切りがつきました。私は家族のLINEをブロックして、完全に絶縁することにしました」

「セックスをしている人こそ生きている」

家族に悩まされ、幼少期に死すら頭をよぎったきっしー氏が解き放たれる瞬間こそ、“エロ”だったのだという。

「後年になって大人から眉をひそめられるような“エロ”の神秘に触れたとき、秘密を犯したような、他ではえがたい快感を覚えました。それは性欲が満たされる快感ではなく、『隠されていたものはこれだったのか』という知識欲に近かったと思います。私が生きるモチベーションの中心に“エロ”があるのは間違いないですね」 

人生に懊悩しながら辿り着いたきっしー氏の恋愛観、性愛に対する価値観は味わい深い。

「中高生のころから、セックスをしている人こそ生きている感じがしたんですよね。一方で、私にとってセックスは神聖なものであり、高1から彼氏はいたものの、結ばれるまでにはだいぶ時間がかかりました。

むしろ当時の私は『この人とセックスをして、いずれ結婚するんだ』くらい固く思っていました。その彼氏とは高校1年生から大学3年生まで交際しましたが、途中で実は自分は全然結婚をしたいと思っていないことに気づいて別れたんです」

高校、大学のほとんどをともにすごした彼氏との別れには、「一般的な幸せとされる、カップル像や性愛像」への違和感があったのだという。

「大学時代にサークルの同期と飲んでいて、彼氏がいるにもかかわらず、そのままセックスしてしまったことがありました。そのとき、ひたすら欲望に従順になって性欲にまみれた視線で私を絡めてくる彼の、野性味溢れる姿に素直に『気持ちいい』と感じました。『付き合っているから』という理由で、愛を確かめるようにするセックスではなく、そんな風にただ獣のように溶けていくような性愛の渦中にいたかったのかもしれません」

現在、社会人になりたてのころから交際している彼氏がいるきっしー氏は、マッチングアプリで他の男性とも出会い、場合によってはセックスを楽しんでいる。きっしー氏と同じく、性的快楽と愛情を切り離して考える彼氏に、こうしたことは隠していない。むしろ「おもしろいことがあったら報告する」のだとか。

「マッチングアプリでも、最初から性行為が目的の男性はつまらないので、会いません。もっとお互いの波長が合って、なにかの拍子に性欲がどろっと出るような、そういう関係が好きだからです。相手の欲望にも自分の欲望にも向き合える時間がほしいんです」

現在はSODのAV監督の職を辞し、フリーランスとして多分野での活動を行なう仕込み段階だというきっしー氏。もちろん活動の中心に据えるのは変わらず“エロ”だが、こんな展望があるという。

「性についての悩みを抱えている人、それを話したい人は意外と多いんですよね。アダルトビデオという映像のみによる表現方法ではなく、活字だったりリアルな対話だったり、さまざまな方法を使って“エロ”は表現できるのではないかと私は考えています。そうした空間の演出に携われたらと思っています。

一方で、監督として関われたことへの感謝も持ち続けています。鬱屈を抱えたとき、たとえフィクションのなかのエロであっても、それがいくばくかは心を癒やすことを私は知りましたから」

ままならない日常を生きる人は多い。それを直視し続けるのは心に毒なのに、さりとてすべて投げ出す勇気は持てそうにない。そんな抑圧に飼いならされた人々を、どきりとする“欲”で揺さぶる。それは、刹那にみた淫靡な白昼夢のような解放感。きっしー氏はこれからもそんな感覚を人々に届けるため、全力を尽くす。

取材・文/黒島暁生

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