〈6月28日初公判〉「JCの“初めて”売ります。1万円」殺人未遂で逮捕の元“パパ活女子”が綴った苦難に満ちた28年。「中学生というだけで自分に価値があると思った」売春との出会いが彼女の人生を変えた
集英社オンライン / 2024年6月27日 17時0分
昨年5月4日、神奈川県平塚市のJR平塚駅近くの路上で知人男性をナイフで刺し、殺人未遂の容疑で現行犯逮捕された伊藤りの被告(28)。まもなく判決が下されるこの事件で、集英社オンラインは拘留中の被告から封書15通、葉書6通にも及ぶ手記を受け取っていた。被告が違法な売春、そして凶行に及んだ背景とは。その生い立ちに迫る。
パパ活を通して淫らなパーティの世界へ
相手の恋愛感情を逆手に取って複数の男性から総額2億円を騙し取ったなどとして、懲役9年、罰金800万円の判決を受けた“頂き女子りりちゃん”こと、渡辺真衣被告。
その獄中記「りりちゃんはごくちゅうです」(支援者の管理によってXで更新中)が話題となるなか、もうひとり、拘置所で公判を待つ若い女性がいた。伊藤りの被告、28歳。
岐阜県で生まれ育った伊藤被告は27歳で上京後、個人での売春行為で生計を立てていたことが自身のXから明らかとなっている。いわゆる“パパ活女子”である。
さらに、その活動で知り合った人物を介して、淫らなパーティへと参加するようになった。
殺人未遂を起こしたのはその直後。伊藤被告は犯行当時、県警の調べに対し「殺すつもりでやった。お腹を2回、ナイフで刺した」と供述。被害を受けた知人男性とトラブルを起こし、私怨を募らせていたという。
記者は事件後の2023年5月末と6月に、小田原警察署で伊藤被告と面会。その際、伊藤被告は実家には自分の居場所がなく、20代前半から精神安定剤を飲んでいたと語っていた。
その後もやりとりを続け、被告が集英社オンラインに送ってきた封書15通、葉書6通の手記には彼女の苦難に満ちた人生が書き綴られていた。6月28日に初公判を控えるなか、彼女が自身で振り返った28年間の人生とは。
多感な時期のモヤモヤから売春に手を染める
両親と3人の弟と暮らしていた幼少期の伊藤被告は、長子でありながら弟たちのことをかわいいと思えなかった、と手記の中で告白している。
それでも一生懸命に3人の弟の面倒を見ており、《中学生になる頃には母は「いつ結婚して子供産んでも大丈夫だね」とよく口にした》(手記より。固有名詞を除いて原文ママ。以下同)という。
その後、両親が離婚。弟たちとともに母親のもとで生活を送るが、幼少期から実の母親に対して思うところが多かった。
《母の考え方はよく分からない。父と離婚したのは父の借金グセだというが、父の借金は私が生まれる前からだし、「祈れば宿命を使命に変えられる」と毎日祈っていても、結局生活は苦しいままだったし、そんな苦しい生活をしながら私の次に3人も子供を生むのも無計画じゃないか、と思う。父と離婚し、すぐに別の彼氏ができて、楽しくやるのは構わないが、40代50代で子供も小さくないというのに夜中に彼氏と大声でセックスをする感覚が理解しがたい。》
特異な環境で育ってきたといえるだろう。中学生時代は勉強も部活の剣道もうまくいかず、本人いわく《顔は微妙で、趣味と言える程ハマっているものもない。》という学生生活だった。
やがて自我の芽生えと葛藤を抱くなか、“あること”に自分の価値を見出すようになる。
《私はその頃、人生で初めて男とセックスをした。ブログを作り、「JCの初めて売ります。1万円」と書き込んだ。驚ろく程メッセージが来た。顔も何も載せてないのに、中学生というだけで自分の価値があるのだと思った。お金ももらえたし、大した顔でもないのに可愛い可愛いと言われて、満足だった。》
そして、売春は彼女の生活の一部となっていった。
自尊心が満たされていた高校時代
《時には中学の制服を着て男と会い、途中で私服に着替えてホテルへ入った。一度きりの客も、十回以上の客も、全員ブログと家の固定電話で集めた。気持ち悪い男もいたが、パパと同じくらいのおじさんが私に1万円くれるという事が気分が良かった。もらったお金は、一体どこに消えるのだろうという程残らなかった。》
漫画もアニメもドラマも音楽もファッションも興味が持てなかった伊藤被告は、当時について《大人の男にモテるという優越感を楽しんでいた》と綴っている。
《今思えば、中学生をお金で買う男なんてくだらないと思うが、中学生の頃の大人とは、絶対的な存在で、大人に認められることで両親にも認められているような勘違いをしていた。特に周りの子たちが同い年や先輩後輩と恋愛をしている中で、自分だけは大人とセックスをしていることで、自分まで大人になったつもりでいた。》
高校生になっても勉強や部活についていけず、部屋に閉じこもるようになった伊藤被告は母の勧めで通信制の高校へと編入する。気分を一新するため、髪型をベリーショートにし、男子用の制服を着て学校へと通うようになった。
すると、他校の女子高生に告白されて交際したり、下級生とバンドを結成したりと、高校生活は充実したものへと転じる。
それでも不特定多数の男性と体を重ねる日々は変わらない。
《私は、始めての恋人(他校の女生徒)と別れてからは、何人かの男と体の関係を持った。同じクラスの男の子を家に誘い、家族のいない間にセックスをした。初めて同い年のセックスの相手は、名前すら思い出せない。次にセックスをしたのは、これも同じクラスのFだった。私が誘うのは、どの集団にもぞくしていない、オタク君ばかりだったと思い出す。》
彼らに入れあげることはなかったが、本人も《中学生の頃に、男からも女からも浮いていて、よく「キモイ」と言われていた事を思えば、女とも男ともセックスできるレベルまでの見た目になったのではないかという認識もあった。》と振り返るように、高校生活は、それまで強い劣等感を抱いてきた伊藤被告の自尊心を満たしてくれるものだったようだ。
しかし、伊藤被告の人生の歯車が再び狂い始めるまで、そう時間はかからなかった。後編に続く。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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