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小学2年生のバリスタが語るコーヒーの奥深さとは?「コーヒーは自由」「パナマ産の“ゲイシャ”はおいしい」8歳の誕生日にはカフェの1日店長にも挑戦

集英社オンライン / 2024年6月8日 11時0分

「一番好きなのは雲南(うんなん)の豆。すっきりしてるけど、酸味があって、フルーティーで、桃みたいな」。コーヒーの複雑な味わいを嬉々として説明してくれるのは、小学生バリスタの小澤俊介くん(7)。5歳のときに「師匠」に出会ってから、コーヒーの世界にのめり込み、自分で焙煎をするなど大人顔負けの技術と知識でスペシャルティコーヒーを淹れる。そんな俊介くんが8歳になる誕生日の7月30日にコーヒーの聖地・清澄白河で1日店長としてコーヒーを提供する。イベントを前にコーヒーとの出会いやイベントへの意気込みを聞いた。

俊介くんが綴ったコーヒー日記「うんなん。19ccおおかった。あじがぼけた。おいしくなかった。人にのませたくなかった。くやしかった」

バリスタのミスに唯一気がついた俊介くん

江東区の清澄白河駅から徒歩5分のところにある「リトルトーキョー」の3階。俊介くんの師匠でバリスタの中楯聡(なかだて・あきら)さんがカフェ「+Angle coffee works」を営むこの場所で、特別に俊介くんがコーヒーを淹れてくれた。

注ぐお湯の温度は90度。4回にわけて60グラムずつお湯を丁寧に注いでいく。「注ぐ時間やお湯の量で味が変わっちゃう」(俊介くん)と、0.1グラム単位で重さが測れるという精密な計量器とタイマーを使う徹底ぶりだ。

使用する豆も自分で焙煎したという中国・雲南省のもの。豆本来の魅力を最大限活かすため、豆を挽く粗さから、お湯の温度まで30パターン以上を研究。「将来の夢はもちろんバリスタ! 産地のことも、味のことも、ちゃんと説明できるようになりたい」と話す。

小学校2年生の俊介くんを温かく見守る母・舞奈美さん(39)は「保育園のときはずっと電車が大好きで。駅の名前も勝手に覚えちゃうような子なんです。でも、今は電車2、コーヒー8くらいの割合でコーヒーに夢中。親としては、本人がやりたいって思うことを自由にやらせてあげたいって思ってます」

そんな俊介くんがコーヒーの世界にのめり込むようになったのは2年前。清澄白河にあるカフェで飲んだハニーラテがきっかけだった。1ヶ月ほど前にも同じ店で同じラテを飲んでいた俊介くん。前回はおいしく感じたはずなのに、なにかが違う感じがした。

「なんか、ちょっと苦い」

それを聞いて驚いたのが、その店でバリスタをしていた中楯さん。

「実はその日の豆は焙煎を少しミスっていて。抽出の仕方を工夫して調整したので他のお客さんには気づかれなかったけど、俊介くんだけには見破られてしまったんです」

俊介くんが綴るコーヒー日記の中身

ミスを見破られたことで、俊介くんの味覚に興味を持った中楯さん。試しに、パナマ産の「ゲイシャ」と呼ばれる最高峰のコーヒー豆で淹れたコーヒーを出してみることに。一口飲んだ俊介くんは、「おいしい!!」と感動。ブラックコーヒーをごくごくと飲み干した。

「ポジティブな味もネガティブな味もちゃんと繊細に感じ取れるんだってわかって。お母さんに『この子は素晴らしい感覚を持っているから、カップラーメンとか食べさせないで大事にしてあげてください!』って言いました(笑)」(中楯さん)

中楯さんとの出会いをきっかけに、コーヒーのおもしろさに目覚めた俊介くん。週に1回は中楯さんのお店に通いながら、家族でさまざまな珈琲店を巡るように。コーヒーにまつわるいろんな人の話を聞いたり、コーヒーを飲んだりするなかで疑問に感じたことを「師匠」に質問することで知識を深めていった。

そして、コーヒーを淹れることにも興味を持つように。中楯さんのドリップセミナーに参加したお母さんからやり方を教えてもらい、ドリップの基本を学んでいった。

それまでは単なる趣味だったコーヒーに本気になったのは、ある失敗がきっかけだった。

2024年1月、中楯さんのお店の常連にコーヒーを淹れる機会をもらった俊介くん。いつも通りに淹れたはずが、注ぐお湯が多くなってしまい、ぼやけた味に。

家に帰ってからも、思った通りの味を提供できなかった悔しさが消えなかった。行き場のない悔しさを何かにぶつけたくて、その日からコーヒーの日記をつけ始める。その日の日記にはこう書かれていた。

「うんなん。19ccおおかった。あじがぼけた。おいしくなかった。人にのませたくなかった。くやしかった」

このページについて中楯さんはこう解釈する。

「俊介くんなりにちゃんとしたものを抽出してお客さんに楽しんでもらいたいっていうイメージがあった。だからこそ、それとあまりにもかけ離れたものを出した罪悪感があったんだと思います。それを感じられて、あそこまで落ち込めるのは、プロフェッショナリズムがあるなって思いました。

コーヒーにまつわるいろんな人に会って話を聞いているからこそ、その人たちの想いを俊介くんなりに背負ってコーヒーを淹れている。落ち込む彼のことを見て、『小学生なのにコーヒーが淹れられてすごいね』っていうんじゃなくて、ちゃんとひとりのプロとして接しようと思うようになったんです」

豆の焙煎にも挑戦

俊介くんは今年3月に中楯さんがカフェをしている「リトルトーキョー」の3階で1日店長としてコーヒーを提供することに。

悔しい経験を糧に今まで以上にコーヒーに熱中するようになっていった。中楯さんから課題をもらいながらオペレーションを効率化したり、お湯を入れる量を調整できるように特訓したり。豆の焙煎も自分で挑戦した。

「コーヒーの味を日本の色の名前で表現してみようと思って。2回焙煎をして、それぞれ『紅』と『勿忘草(ワスレナグサ)』って名付けました」(俊介くん)

特訓の甲斐あってイベントは大成功。好評のため2回目のイベントを7月30日に開催する予定だそう。

今は、次のイベントで出すコーヒーのレベルを上げるために訓練の日々なのだそうだ。

 「今度はインドネシア産の豆を自分でブレンドしてみたい。DEEP27っていうドリッパーを使いたくて。角度が27度で垂直に近いから、お湯が落ちるのが早い。そうすると、スッキリメーターで言うとスッキリ度合いが高くなりすぎちゃうから、浸漬の時間を長くするように入れ方を工夫しなきゃ」(俊介くん)

そんな俊介くんにコーヒーを淹れる理由を聞くと、こんな答えが返ってきた。

「自由だから。何十秒おきにお湯を注いでもいいし、何をやってもいい。やり方で味が変わるのも楽しい」

俊介くんが淹れるこだわりのコーヒーは、7月30日に清澄白河のリトルトーキョー3階で飲むことができる。気になる方はぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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