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いきなり!ステーキ430円の値上げでビジネスパーソンのステーキランチが高嶺の花に?「むしろこの10年間、安かったことが奇跡…」

集英社オンライン / 2024年6月12日 11時30分

帝国データバンクの発表によると2023年のステーキ店の倒産数が過去最多となった。輸入牛肉の仕入れ価格高騰により各社値上げを強いられているからだ。もうリーズナブルなステーキは食べられなくなってしまうのか? この10年でステーキ店がヒットした背景、今後の動向について外食・フードデリバリーコンサルタントの堀部太一氏に話を聞いた。

【写真】値上がりした「いきなり!ステーキ ワイルドステーキ 150g」

創業から6年で約500店舗展開…ステーキブームの背景とは

少し前までステーキといえば、ご馳走というのが一般的なイメージだった。そんな高級な印象を変えたのがステーキレストラン「いきなり!ステーキ」である。

2013年12月に東京・銀座に1号店を出店し、ランチメニューでワイルドジューシーカットステーキ 300gセットを1,000円(税抜)という驚きの価格で提供。

1g5円の量り売り・立ち食いというスタイルも目新しく、新たなマーケットが生まれるきっかけとなった。

「いきなり!ステーキの登場までは、本格的なステーキをランチで気軽に食べるというマーケットはありませんでした。このコンセプトが大いに支持され、糖質制限ダイエットブームで赤身肉への関心が高まったことなども追い風となり一躍人気店になりましたね。

ステーキの主な調理は切って焼くだけのため、オペレーションがシンプルで、少ないスタッフで顧客回転率を上げやすかったことも急速に拡大した理由のひとつです」(フードデリバリーコンサルタントの堀部太一氏、以下同)

テレビや雑誌などのメディアもこぞって取り上げ、猛烈な勢いで店舗網を拡大。2016年に100店舗、2019年には約500店舗を展開するに至った。

いきなり!ステーキはステーキブームの火付け役となり、模倣する店も続々オープン。平日のお昼にリーズナブルな価格でステーキを味わうことができるようになったのだ。

輸入牛肉の価格が5年で1.4倍増! 業態によっては好調だが… 

だが2022年以降、世界有数の穀物輸出国であるウクライナの戦争による混乱や、干ばつなどを背景に、牛のエサとなる飼料の価格が高騰。輸入牛肉の仕入れ価格は財務省「貿易統計」によると過去5年で1.4倍も上昇した。

さらに円安による輸入コストの増加も加わり、各社ステーキ店の値上げが相次いでいる。

いきなり!ステーキでは、2024年4月3日より、「ランチワイルドステーキ 150g」(ライス・サラダ・スープ付き)が1,390円(税込)から1,560円(税込)に。もっとも大きな値上げは「特選ヒレステーキ 300g」で、4,200円(税込)から4,630円(税込)と430円もの値上げとなった。

これまでにも段階的な価格改定はあったが、オーダーカットの廃止、一部メニューに使用する牛肉を米国産から豪州産に変更、ポイントサービスの見直しなど、開店以来最もインパクトのある価格調整となったのだ。

だが前出の堀部氏によると、影響を受けないステーキ店もあるという。

「ステーキ店の業態は大きく分けると『レストラン型』『ロードサイド型』『繁華街・オフィス立地型』の3つになります。
レストラン型の代表的な店舗は『ウルフギャング・ステーキハウス』のような高級業態。デートや接待といった用途でも使われ、サービスやお店の雰囲気にもバリューがあるため、そもそも値上げの影響を受けにくい。

ロードサイド型は交通量が多い幹線道路沿いに面し、ステーキやハンバーグが名物になっている業態を指します。ロードサイド型はステーキ専門店ではないため、利益率の高い商品と低い商品を組み合わせることで利益を調整する粗利ミックスという手段が取れます。
たとえば、原価率の高いステーキと原価率の低い鶏肉をセットにして提供することなどで全体としての原価率は抑えられるため、物価高の影響を上手に回避しています」

よって、ロードサイド型の人気店「ブロンコビリー」は2024年1〜3月期の連結決算で純利益が前年同期比2.8倍の5億2,700万円となり業績は好調だ。

ここで苦境に立たされているのが、いきなり!ステーキを代表とするリーズナブルな価格でステーキを提供する繁華街・オフィス立地型である。

「繁華街・オフィス立地型は、まさにいきなり!ステーキが切り拓いたマーケット。ビジネスパーソンが昼休みに低価格でステーキをガッツリ食べるという需要を作り出しました。
ただ消費者はあくまで“低価格で”食べることが来店目的だったため、値上げにより客足が遠のくことは避けられないでしょう」

なお、ホットペッパーグルメ外食総研が2024年4月に発表した調査によると、働く人の平日ランチの外食予算は1,243円だった。 仕入れ価格が高騰する現状では、予算内でランチにステーキを提供するのは困難だろう。

むしろこれまでが奇跡の価格

仕入れ価格の上昇が解消されれば、値上げの必要はなくなる。

だがロシア・ウクライナ戦争の終結や、日本の財政が健全化するといった見通しは立っていない。今後、リーズナブルなステーキ店はどうなっていくのだろうか。

「店舗周辺で働いている人の所得基準が高いなど、特殊な店舗は残る可能性はありますが、全体としては減っていくでしょう。

また、業態変更による生き残りを模索する可能性もあります。低価格のステーキ専門店が高級レストランに転換するには内装の面でも難しいので、粗利ミックスができるメニュー幅を増やし、業態に幅を持たせるケースも考えられるでしょう。

ただ、輸入業者からは仕入れ価格が今後5年でさらに1.5倍になるという話もよく聞きます。適正な原価率・粗利率で販売した場合、現在2,000円のステーキは2030年までに3,000円になるということです」

10年前のように、贅沢なメニューに戻りつつあるステーキ。価格が1.5倍となり、我々庶民の所得もアップしないというのであれば、ランチで気軽にというわけにはいかない。

むしろこれまでの約10年間、リーズナブルな値段でステーキが食べられたことを感謝したほうがいいのかもしれない。

文・取材・いきなり!ステーキ写真/福永太郎 
取材協力/堀部太一(外食・フードデリバリーコンサルタント)
イメージ写真/shutterstock

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