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〈密着・脱ホスト依存〉借金総額5000万円。風俗、闇金、個人融資を駆使して…ホス狂だった元女性会社員(26)が“回復施設”に入居して思うこと「未練がないと言ったら嘘になる、でもこれが最後のチャンス」

集英社オンライン / 2024年6月23日 17時0分

〈ホス狂は病気か?〉「薬は効かない。必要なのは我慢と根気そして…」回復施設を運営し、これまで500人のホスト依存症患者を治療した医師が“ホス狂”とその家族に伝えたいこと〉から続く

依存症治療歴30年の大石雅之院長が開院した「大石クリニック」では、ホスト依存となった女性たちも受け入れている。合田さん(仮名・26)は約2年前から通院を始め、現在は同クリニックが展開する「回復施設」と称したグループホームで暮らしている。彼女は18歳から24歳までの6年間で、ホストクラブにハマり、5000万円以上の借金を抱えていた。当時から治療に至るまでを聞いた。

〈写真多数〉携帯は子ども用、自炊し家計簿もつけた…グループホームで暮らす合田さんの1日に密着

一般企業の事務で働く女性がホスト依存症に…借金は5000万円

都内在住の合田さん(仮名・26)がホストクラブにハマったきっかけは、高校3年生のときに付き合っていた彼氏と別れた後に始めたマッチングアプリだった。

そこで出会った男性は「アパレルで働いている」と言っていたが、初対面で「お店で話をしよう」と告げられ、歌舞伎町に連れて行かれたという。

「はじめは働いている洋服屋さんに行くのかな、と思っていたのですが、たどり着いた先はホストクラブでした。

もともとホストクラブは怖いところだと思っていたので帰りたかったのですが、彼に『お金は払うから』と言われたので、そのときはラッキーだと思って。

そのホストとはそれきりだったのですが、“怖いところ”というイメージはなくなっていたので、それから女友達と『ホストクラブの初回巡りをしよう』と気軽に行くようになったんです。そのうちにホストクラブの楽しさに目覚め、しだいに1人で通うようになりました」

高校卒業後は専門学校に通い、その後は一般企業で働きながらホストクラブに通った。だが、それだけではお金が足りなくなり、昼に仕事をしながら夜は風俗で働いたり、援助交際をしたりして稼ぐように。

担当ホストからは色恋営業を受け、完全に「担当に会いたい」「担当のためになりたい」という一心で稼いでいたそうだ。

そのうち、消費者金融で限度額までお金を借りてからは、個人間で金銭を借りるかわりに性交渉したり、性的な写真を送ったりなどする「ひととき融資」にも手を出し、20名以上の男性に借金をしながら性交渉を繰り返した。

「私はほとんど売掛をしてなくて、だいたい消費者金融やひととき融資などで借りたお金を使っていました。

そのため借金がどんどん膨らんでしまい、最終的には消費者金融3社ほどから数百万円、ひととき融資は多い人で3000万円くらい借りました。借金の総額は、たぶん5000万円くらいだと思います」

ひととき融資は、某掲示板サイトで貸し借りのやりとりを行ない、その後、個人間で対面などして金銭を借りる仕組みだが、当然ながら違法の個人間融資だ。

合田さんはひととき融資で金銭を借りる際に、顔写真を撮られたり、住民票を渡したり、性交渉時の写真を撮られたりしていたため、返済が焦げつくようになると貸主がネット上に合田さんの写真を晒すようになったという。 

ADHDと診断され、グループホームに入居

さらにネットで住所を知った者から送り主不明の手紙が自宅に届いたり、ネットで住所を知った者が嫌がらせで自宅に押しかけてきたりすることもあった。

「このあたりの記憶が曖昧なんですけど……ホストクラブに通い始めて6年目くらいに自宅にも手紙が来たり、人が押しかけてきたりするようになって。

『もうダメだ』と思って母親にすべてを打ち明けたんです。それで母親が見つけてくれたのが、大石クリニックでした。

はじめて訪れたのは、一昨年の5月。そこで検査を受けてADHDと診断され“衝動性を抑えられない”という自分の特性を改めて自覚したのですが、これまでを振り返って妙に納得してしまいました。

莫大な借金を抱えてまでホストクラブに行ってはいけないとわかっていながら、『なんとかできる、なんとかしよう』と通ってしまっていたからです。どうにかしなきゃと思って、一昨年8月に大石クリニックのグループホームに入居しました」

グループホーム入居前にスマホは解約し、現在は必要最低限の連絡を取るために子ども向けケータイを持っている。

日曜日と月曜日は都内の実家で過ごし、火曜日から土曜日はグループホームで過ごす。グループホームでは平日は毎日6時30分に起床。自炊した朝食を食べ、呼気チェック(アルコール摂取の有無の検査)を行なってから、8時に介護系の仕事場に出勤。

夕方まで仕事をして、帰ってきてから再び呼気チェックを行う。そして22時から23時には就寝するという。

「入居してしばらくは朝も昼も起きられなかったし、気分もすぐれなかったです。最初はとてもじゃないけど働けなかった。

お金も1日1000円渡されるだけで、それでやりくりする生活だったので、ほとんど部屋で寝ていました。

1カ月ほどそのように過ごしていたのですが、仕事を始め、お金も1日1000円ではなくまとめて7000円もらえるようになったり、職場で得た1カ月7〜10万円の給料を自分で管理してやりくりするようになるなど、段階を経て回復していきました。それによって、どんどん通常の金銭感覚を取り戻していったんです」

今はもうホストクラブに未練はないのかと問うと、合田さんは少し考えながらこう答えた。

「未練がないと言ったら嘘になる。やっぱり昔の暮らしのような、普通のスマホが持てて、外出が制限されない生活に戻ったら、ホストクラブに100%行かないとは言い切れません。

でも以前のように『なんとかなる』とは思いませんし、手持ちのお金がないことや、迷惑をかけた両親の気持ちを裏切るのかとか、そういう自制心は働くとは思います。私にとって、これが最後のチャンスだと思っているので」

幼いころから「いつかは結婚して子どもがほしい」という思いがあった 

合田さんに「今ホストにハマっている子たちは、どうしたら抜けられるか」と聞くと、#1で大石先生が言及したように「ハマっているときは、何を言っても絶対に聞き入れられないと思う」と言う。しかし合田さんは、「だけど」と続けた。

「だいたいのホストは、自分から約束を破ります。私はホストに通っていた5年間で、頂き女子りりちゃんが通っていたグループ店や業界最大手とされるグループ店などのホスト3人に主にハマっていましたが、一番長くて2年間、同じ人に貢いでいました。

部屋の鍵を渡されて『先に帰って待っていて』と言われたときも“私だけなんだろうな”と勘違いしていたし、彼の『結婚しよう』という言葉も信じていました。

でも、その彼も『バーイベ(バースデーイベント)で使ってくれたら旅行に行こう』とか言いながら、前日にドタキャンしたり、デートもなんだかんだ行かなかったりと、こちらの気持ちを踏みにじるんです。

それで、だんだんと私は『このままホストにハマっていても、何も残らない』と気づきました。そういう気づきと、いよいよ借金で首が回らなくなった状態になって、いい加減やめなければいけないと自ら思えたんです」

なんといっても、幼いころからの「いつかは結婚して子どもがほしい」という思いが、合田さんとってには大きかったという。

「私は幼いころから結婚願望があったし、子どもが大好きだからいつか子どもは絶対にほしい。だから結婚願望がある女性なら、沼から抜けられる見込みはある気がします。

ハマっている間はその結婚相手がホストならいいのにと思うだろうけど、だんだんと約束を反故にされたりするうちに『私がこの人を思うように、この人も私を思ってくれているのか? 大切にしてくれているのか?』と考え直すときがくると思います。

もちろんそれは辛く苦しいことだけど、そんなときに、私の場合は家族が手を差しのべてくれた。そのおかげで、今の私があると思っています」

合田さんの今の密かな楽しみは「グループホーム内の女性と一緒に外食に出かけること」だとか。

「以前のように借金返済に追われて常に焦燥感に苛まれる感じがないので、安定した気持ちでいられます。もともとすごく物欲があったわけではないし、そうなると、基本的にそんなにお金っていらないんですよね。

金銭感覚が普通に戻ったのはよかったです。グループホームにいる女性との約束は必ず果たされますから。『これが普通の幸せなんだな、充実した生活なんだな』という気がしています」

現在は、かつて抱えた借金問題を解決するために、両親とともに準備をしているという合田さん。

「もう二度と同じ過ちは繰り返さないと反省しながら、毎日を穏やかに暮らして、治療が終わったら外で一人暮らしがしたいです。そしてできたら、いい男性と巡り合って結婚して子どもがほしい。

この記事が、今まさにホストにハマっている女の子たちが何かに気づくきっかけになったらいいなと思っています」

合田さんの声が、ホストにハマる女性の耳に届くことを願う。

※「集英社オンライン」では、ホストにまつわる事件、トラブルについて情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。

メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

X(Twitter)
@shuon_news  

取材・文/集英社オンラインニュース班

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