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なぜ霜降り明星・粗品は90年代の松本人志より”嫌われて”いるのか? ともに強烈な毒を吐きながらも“粗品アンチ”が圧倒的に多い意外な理由

集英社オンライン / 2024年6月20日 17時0分

宮迫博之や木村拓哉へのディスりで、芸能界を騒がせている霜降り明星・粗品。そんな彼には当然アンチが多いものの、同じように毒舌を吐きまくっていた90年代当時のダウンタウン・松本人志は、いまの粗品ほど嫌われていなかったように思う。その理由とは?

【画像】2018年の『M-1グランプリ』で大会史上最年少で優勝した粗品

霜降り明星・粗品の毒舌が止まらない

元雨上がり決死隊・宮迫博之を「先輩じゃないすよ、アイツもうやめてんから」などとディスり、元SMAP・木村拓哉を公称身長は盛っていて実際もっと背が低いかのように揶揄し、2人体制となったKing&Princeを「今のキンプリ誰が見るねん」などとコキおろす。

ほかにも『THE SECOND~漫才トーナメント』(フジテレビ系)については、15年以内に成功していない芸人たちの大会だとしたうえで「微妙やなぁ」と腐していた。また、『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)は審査員の平均年齢が50歳をゆうに超えていることを踏まえ、「年寄りすぎ」「(出場者たちが)かわいそう」とも指摘していた。

そういった歯に衣着せぬ物言いはもともと粗品のキャラクターとして認知されていたが、近頃はその毒舌ぶりが加速。彼にディスられたタレントのファンを中心に、“粗品アンチ”が急増している印象である。

そこで思い出されるのがダウンタウンの松本人志だ。

天才・松本も若かりし頃は他者を貶めるような暴言を数多く放っていた。

松本の毒舌には枚挙にいとまがないが、たとえば1994年に発売され250万部を売り上げた松本の著書『遺書』(朝日新聞社)では、下の世代のお笑い芸人を腐す文脈で、ナインティナインのことを「ダウンタウンのチンカス」とこきおろしていた。

『ABCお笑い新人グランプリ』(朝日放送)など、関西の賞レースで審査員を務めていた作家・藤本義一氏に対しても、「素人以下」「笑いに携わるのをやめなさい」などと酷評していたのだ。

これは松本の過激発言のほんの一部だが、今の粗品と当時の松本の“毒舌レベル”には近いものがある。

両者とも20代後半という若さで笑いの才能を高く評価されていたわけだが、毒舌を振りまいている粗品は現在31歳で、くしくも松本が『遺書』を刊行したのも31歳。符合する点はとても多い。

しかし当時の松本は、今の粗品ほどアンチは多くなかったのではないだろうか?

「芸人としての器」と高すぎる「毒舌レベル」

もちろん1990年代と現在では時代が違いすぎるため単純比較はできない。

昔は今のようにインターネットが普及しておらず、一般人の声が広く可視化されるSNSなんてものはなかったから、“松本アンチ”が見えにくかっただけかもしれない。

また、近年はコンプライアンス意識が強化され、差別やハラスメントに対して世間の目は年々厳しくなっているため、今は毒舌芸が厭悪の対象になりやすい。

そのため1990年代よりも現代は毒舌芸人が生きにくいという側面はあるだろう。

ただ、そういった時代背景を差し引いても、当時の松本よりも今の粗品のほうが嫌われていると感じているのは、筆者だけではないはず。

ここで筆者なりの結論をお伝えしたい。

粗品が嫌われる理由――それは、彼のお笑いの才能レベル以上に毒舌レベルが高まりすぎているから。

コレだと思うのだ。

松本人志のお笑いの才能レベルは突出しており、その天才っぷりで大衆を黙らせていた感があった。アンチもいただろうが、その次元の違うセンスで屈服させていたに違いない。

松本は旧時代の既成概念をブッ壊し、新たな笑いの価値観を生み出していた。松本の暴言も相当なものだったが、新時代を創生していた松本の才能レベルは、彼の毒舌レベルを圧倒的に凌駕していたように思う。

では、粗品はどうだろうか。

彼のお笑いのセンスは確かに素晴らしいものがある。コンビでの漫才も、ピンのフリップ芸も、平場のトーク力も、トップレベルにおもしろい。磨き抜かれた名人芸だ。

けれど、言い換えれば“今の時代のお笑いの中ですごくおもしろい”ということで、その枠組みから飛び出してしまうほどの“常識外のお笑い”ではない気がするのである。

粗品がもし、旧時代をブッ壊して新時代を創っていくほどのお笑いを提供できていれば、毒舌を吐きまくってもここまでアンチは湧いていないのではないだろうか。

松本人志は紛れもなくお笑い界のゲームチェンジャー 

粗品は、25歳だった2018年にコンビで『M-1グランプリ』優勝、26歳だった2019年にピンで『R-1ぐらんぷり』優勝している。しかも両大会とも史上最年少で頂点に立つという快挙を成し遂げている。

この二冠達成の実績から、粗品の笑いの才能は誰もが認めるところ。きらりと光るセンスがあり、既存のお笑い界のなかでも非常に優秀な芸人だ。

しかし、松本は次元が違っていた。

26歳だった1989年に今なお続くご長寿番組『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系)、28歳だった1991年に伝説のコント番組『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)のレギュラー放送をスタートさせている。

この2つは社会現象を起こすほどムーブメントを巻き起こしたが、ただヒットしただけでなく、その後のお笑い界に変革を起こしたエポックメイキングな番組だったといえる。

ときには皮肉的に、ときにはサイコに……それまで誰も思いつかなかったような斬新な角度からの笑いを、松本は次々とアウトプットしていく。そして、新しく世に現れた“松本人志のセンス”を、後続の芸人たちやバラエティ番組がアレンジしながら真似していく。

松本は紛れもなくお笑い界のゲームチェンジャーだった。“松本以前・以後”で日本のお笑いは確実に変わっている。

だが、粗品は今のところそういった決定的なゲームチェンジを起こせていないのだ。

余談だが、テレビ業界において霜降り明星はかなり失速している。

2018年の『M-1』優勝で本格ブレイクした霜降り明星は、全盛期には全国ネットのレギュラー番組が10本近くあった。

だが今年7月からはコンビのレギュラーはわずか1本になる模様。フロントメンバーを務める『新しいカギ』(フジテレビ系)は、今年の『FNS27時間テレビ』(フジテレビ系)のメインに抜擢されるなど絶好調だが、今月末で冠番組『霜降りバラエティX』(テレビ朝日系)の終了が決定済で、残るは『新しいカギ』のみになる。

もちろん今の時代、テレビの成否が芸人としての成否ではない。実際、粗品は個人のYouTubeがチャンネル登録者数205万人、コンビとしてのYouTubeがチャンネル登録者数212万人(6月18日現在)と大成功しているので、本人に焦りはないだろう。

とはいえ、テレビ業界での存在感が薄まってきているのもまた事実なのである。

才能の器以上の毒舌レベルに達していることが原因か

“粗品アンチ”が急増しているとしたら、彼の暴言の数々が嫌悪されているというのは、あくまで表面的な原因という気がしてならない。

粗品がセンスあふれる芸人であるということは間違いないし、彼のネタで何度も何度も笑わせてもらった。

だが、その毒舌レベルは、彼の芸人としての器を超え、かなり高い域に達してしまっているように感じる。それこそが、アンチ急増の真の原因なのではないだろうか。

文/堺屋大地 サムネイル/共同通信社

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