〈結局、誰に投票すればいい?〉過去最高の候補者56人が乱立する都知事選「候補者が多いことにメリットはない?」「売名目的が多すぎる」
集英社オンライン / 2024年6月22日 9時0分
ついに告示された7月7日投開票の東京都知事選挙。過去最高、56人の候補者が乱立する中、有権者はいったい何を基準に投票すればいいのか。天下分け目の“七夕首都決戦”について、全国津々浦々の選挙を取材している選挙ウォッチャーちだい氏の見方は。
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「結局、誰に投票すればいいの?」
6月20日、東京都知事選挙がついに告示を迎えた。今回は3選をめざす現職・小池百合子知事を含め、56人が立候補する混沌とした情勢になっている。
そんな類稀なる選挙とあって、一部有権者には動揺や困惑も広がっている。いったい、何を判断材料に、誰に投票すればよいのか。選挙ウォッチャーちだい氏に話を聞いた。
ちだい氏はズバリ、「結局、誰に投票すればいいのか?」「迷っている有権者は何を基準にすればいいのか?」について、「投票する基準は“自分に直接的に影響するもの”です」と指摘する。
「『子育てをしているから』ということで子育て政策を見て決めることもできるし、『親の介護をしているから』と介護目線で決めることもできます。このように自分の立場で『どういう風にしてほしいか』という決め方が一点あります。
もう一点は、自分がどう思うかは別として、『東京都の知事にふさわしいかどうか』という視点ですね。自分のことはもちろん、『東京都民にとってどうなのか』という広い視点で選ぶというのも、ひとつの重要な視点だと思います。
こうして“自分のことと他人のこと”を考えれば決めやすいのではないでしょうか」(ちだい氏、以下同)
選挙には“争点”がつきものだが、これについては、「小池知事に対する“YES or NO”の審判が下されるというところが、今回の選挙の一番大きなポイントになると思っています」と言い切る。
「小池知事は2期8年知事をされているので、この8年間の点数をつける・評価をするということにはなると思うんですね。
結局のところ、“今の小池都政に満足しているか”どうか。なんとなく『変えたいなぁ』とか、不満があるのならば、小池氏を除いた55人の候補の中から選ぶことになると思います」
子育て世代は「長期的な視点」が重要も…
では、先述した「自分の立場」での決め方について、子育て世代・現役世代・高齢者・若者など、各属性が注目すべきポイントは。
「まず子育て世代について、学校給食費や医療費の無償化、子育て支援の助成金など、目先の支援体制も気になるところですが、長期的な視点で見ることも大切です。子どもたちに何を残してあげられるのか。子どもたちが大人になったとき、豊かで文化的な暮らしができることが大切です。
その上で、今、東京ではあちこちで商店街や森をなくし、商業施設や高層マンションを建設するプロジェクトが進められていますが、本当に商店街や森をなくしてもいいのかということも争点となっています。
子どもたちに何を残し、何を新しくするのか。親世代が懐かしむ原風景を子どもたちにどれだけ残すのかという視点でも、ぜひ考えてみていただきたいと思います」
高齢者に関しては、分断を煽る候補者への警鐘も鳴らしている。
「最近『もっと若い人たちや現役世代のために税金を使うべきだ』と主張する候補者が増えています。
しかし、東京都で暮らしているのは若い人たちや現役世代だけではありません。今は年金暮らしの高齢者たちも、長らく税金を納めてきたはずで、十分に義務を果たしてきたのではないでしょうか。
高齢者政策を切り捨てず、高齢の都民も幸せに暮らせるように税金を使う候補者は誰なのか。世代間の分断を煽り、まるで高齢者に長生きしてもらっては迷惑であるかのように言うような候補者に投票してはいけません。
若い人にも政策を届けなければなりませんが、その代わりに高齢者を冷遇する必要はありません。高齢者向けの福祉を充実させようと思っているのかどうかを確かめることも大切でしょう」
現役世代と若者は“お金”がポイント
現役世代と若者に関しては、ともに“お金”がポイントになるとちだい氏は指摘する。
「現役世代が注目すべきは『税金の使われ方』だと思います。多くの庶民は、毎月の給料からセコセコと税金が引かれています。その引かれている税金が、しっかりと子育てや教育、福祉といったものに使われているのかどうかが重要です。
庶民から取った税金が、子どもたちや困っている人たちのために使われるならともかく、どこぞの利権のために使われているのだとすれば、庶民からの税金が一部の金持ちに流れていることになり、頑張って働いている我々の生活が苦しくなる一方で、ろくすっぽ働いていない金持ちの生活がよくなるばかりです。こんなにバカバカしい話はありません」
例えば、オリンピックを理由に築地市場を移転したが、その跡地には高級マンションが建設された。投資目的で購入する海外の投資家たちが乗っかり、都の財産でお金儲けをする金持ちが続出しているという。
日本の金持ちのためでもなく、海外の金持ちの投資のために税金が使われていることにも目を向け、税金で誰が得をしているのを見定める力が必要だと、ちだい氏はいう。
「また現在、若者たちは貧困が深刻です。貯金がある若者はほとんどおらず、それどころか、奨学金の返済に追われる若者たちの人生設計が非常に難しくなっています。
少子高齢化が進んでいる原因もここにあります。若者たちに手厚い政策をしないと、東京であっても少子高齢化が進み、人口が減少していくことになります。
今後、さらに東京一極集中が進み、地方から東京に若者が集まるようなことになっても、それでは地方の過疎化が急速に進むだけで、日本全体としては著しく経済が衰退することになります。
若者たちに“稼げる”環境を整えてくれるのかどうか」と、都知事が少子化・経済といったマクロな問題に与える影響も解説している。
さらに、「LGBTを含む性別や国籍(出身)などによって差別されないことが、東京で働く若者たちの処遇改善につながります。自分たちの個性がどれだけ尊重され、人生を豊かなものにできるのか。こうした政策を実現してくれるのが誰なのかを見比べることも大切です」と多様性の尊重についても語った。
それでも自分の主張に合う候補者がいない場合は… 候補者乱立の弊害も
とはいえ、それでも自分の主張に合ったり、信用できそうな候補者がどうしてもいない場合もあるだろう。こうした場合は、どのような投票行動をとればいいのか。
ちだい氏はこの問題に関して、「選挙は必ずしも『自分の主張に合うか』という観点で投票する必要がありません」と提案する。
「ありとあらゆる政策が自分の考えと完全に一致する人を見つけるのは至難の業です。そんなときは、自分の主張に合わなくても『誰が最も都知事にふさわしいか』という観点で投票することもできます。
候補者が信用できない人だらけだと嘆く人もいるでしょうが、もし100%信用できるなら銀行の暗証番号すら教えられると思いますが、そこまで信用できる人は家族ぐらいしかいません。なので、ある程度なら信用できそうだという人に絞り、そこから1人を選ぶという方法もあります」
信用問題に関しては、過去最高の候補者が乱立している状況への弊害もあるという。
「今回の東京都知事選には『信用できそうにない候補』がたくさん出ているのも特徴です。もし本当に都知事になりたいと思っている人が50人以上も立候補するのであれば、こんなに賑やかで素晴らしいことはありません。
しかし、今回は『売名』や『商売』を目的とし、最初から『東京都知事になりたいとは思っていない』と言い切ってしまうような人たちがたくさん立候補しています。
こうなってしまうと、候補者が多いことにメリットはなにもありません。ポスター掲示板の拡張費用には数億円がかかるし、人々の命や生活がかかっている大切な選挙に『宣伝』が入ることになります。
また、本来は立候補した人全員をよく吟味して、誰が最も知事にふさわしいのかを判断しなければなりませんが、そのためには誰が売名で、誰が本当に知事になりたいと思っているのかをまず調べ、整理をして、取捨選択をする作業が増えてしまう。
忙しくて時間がないという人たちは選択が適当になり、最もふさわしい人に投票するチャンスが失われかねないのです」
候補者乱立の弊害がこの記事でも…
この点に、ちだい氏は特に問題意識を感じているという。
「実は、こうしている今も、この問題は大きな影響を及ぼしています。というのも、僕がこの問題に触れ、コメントをしている時点で、本来はもう少し争点となる部分を掘り下げ、皆さんに解説できたかもしれないのに、候補者が乱立している問題に触れないわけにはいかず、候補者がたくさんいることばかりが報じられ、肝心の政策などが報じられる機会が失われているのです」
1400万の人口を抱えるメガロポリスとあって、国政への影響も必至の都知事選。有権者が投票用紙という名の短冊に込めた思いは、七夕の夜にどう表れるのか。
取材・文/久保慎
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