〈姫路城・外国人観光客は入場料4倍案〉「今までどこの自治体もやらなかったのが不思議」「すでに自国民の生活が脅かされている」と専門家。鉄道ファンからは「ジャパン・レール・パスも不公平」との声も。JRは…
集英社オンライン / 2024年6月24日 11時0分
今年3月と4月の訪日外国人数は、2ヶ月連続で過去最高の300万人を超えた。全国的にインバウンド需要が高まりを見せているが、世界遺産である「姫路城」も、2023年度の外国人入城者数が過去最高の約45万人を記録。そんななか、6月17日に兵庫県姫路市の清元秀泰市長は「外国人観光客に限って、入城料を30ドル(約4700円)にしようと思っている」と発言した。これに対して賛同の声が多い中、不満を述べる人たちがいるようで…
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「二重価格」が存在するのは世界の常識
ことの発端は、6月16日に姫路市で開催された国際会議「防災グローバルフォーラム」のシンポジウムでの清元市長の発言だ。
城を保存するための経費が年々増大していることから、入城料を「外国人観光客は30ドル(約4700円)くらい、市民は5ドル(約790円)くらい」と価格差をつける意向について初めて言及した。
その翌日に同市内で行われた記者会見では、「木造建造物をたくさんの人が上ると木がすり減り、壊れやすくなる。木造のメインタワーに対するオーバーツーリズムの問題がある。(昨日の会議で)ディスカッションする中で、30ドルくらいが世界の標準ですねという話になったので」と述べた。
実現すれば、現在は国籍問わず18歳以上の入城料は一律1000円のところ、外国人観光客のみ4倍以上の価格に値上げされることになる。
これに対し、経済評論家の渡邉哲也氏は「むしろこれまでどこの自治体もやらなかったのか不思議なくらい」と言う。
「世界では二重価格が存在するのは常識ですし、日本は外国人観光客を優遇しすぎな面があります。カンボジアのアンコールワットやインドのタージマハル、エジプトのピラミッドなど世界的観光地には二重価格が存在します。
また、市長が仰っていた『世界の標準は30ドル』という発言は、ニューヨークの自由の女神の入場料が25ドル、エンパイアステートビル展望台が大人が約46ドルといった価格を参考にしているのではないでしょうか」
渡邉氏は「二重価格政策は当然のこととして、観光客のインフラなども規制やコントロールが必要なのでは」とも述べた。
「観光地と大都市は、完全なオーバーツーリズム状態にあります。京都など一部の都市では、大きな荷物を持って移動する観光客が路線バスを占拠し、地元民の通勤や通学にも多大な影響が出ています。
富士山エリアへのアクセスに欠かせないJR・富士急行直通特急『富士回遊』も、観光客の増加によって今年3月に増発されました。
また、日本人が出張や国内旅行するときに宿泊施設の予約が取れないなどの事態も起こっており、すでに自国民の生活が脅かされている状況にあると言えるのではないでしょうか」
「なぜ外国人観光客ばかり優遇するんだ」という声も
観光客向けインフラに関しては、一部の鉄道マニアからも批判の声が上がっている。それが、外国人観光客のみが入手可能な「ジャパン・レール・パス」だ。40代の鉄道ファンは、外国人観光客をこう羨む。
「ジャパン・レール・パスはJRグループ6社が共同販売する訪日外国人限定商品で、新幹線(のぞみやみずほなどを除く)を含むJR全線やJRバス、一部私鉄を7日間乗り放題で7万円(普通車用は5万円)という、まさに夢の切符です。
たとえば博多から東京を経由し、函館新北斗駅まで行くと片道でほぼ元がとれてしまう。これははっきり言って羨ましいというより妬ましい!」
また、6月18日に今夏の発売時期が発表された日本人向け期間限定の乗り放題切符「青春18きっぷ」と比較する声も上がった。
「青春18きっぷの発売に関して、近年は春、夏、冬の発売の案内がまとめて発表されていたのに、今年は夏と冬の分は発表がなく、『もしかしたら今後発売されないのでは』と乗り鉄の間でザワついていた。
でも、18日に発表されたのでホッとしました。それに比べてジャパン・レール・パスは年中発売されているから、不公平な感じがします。なぜそこまでして外国人観光客を優遇するんだ、という気はしますね」
鉄道ファンのなかには「できれば外国人観光客優遇のジャパン・レール・パスの販売はやめて、外国人観光客も同じ額、もしくは高くしてほしい」という声や「パス撤廃はしなくてもいいけど、日本人にも期間限定でもいいから夢の切符(ジャパン・レール・パス)を売ってほしい」との声もある。
JR東日本広報に今後の展開について問い合わせたが「この件に関する広報コメントはJR九州になります」と回答。JR九州は「おそらく今後もジャパン・レール・パスの発売はしていきます。日本人向け販売はないと思いますが、正式な回答は共同販売する6社に聞かないとできない」と答えた。
前出の経済評論家・渡邉氏は「今回の姫路城における二重価格の設定を皮切りに、全国的に一律でやるべきだ」と言う。
「富士山は今年3月に通行料として2000円を徴収することを決めましたが、エベレストの入山料約170万円と比較しても驚くほど安いです。
登山道や山頂のゴミ問題も深刻化していますが、これはゴミを持ち帰るという習慣のない外国人観光客による影響が大きいとも言われています。日本を代表する世界遺産・富士山も、姫路城と同じように外国人観光客のみ値上げし、全国にも広げていくべきではないでしょうか」
自国民から不満の声が上がらないような形で地域のインバウンドを促進してほしいものだ。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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