〈カオスすぎる都知事選〉エロポスターに掲示板“ショバ代ビジネス”は「日本の恥」か。NHK党・立花孝志氏は「まさにシメシメです」有権者からは「選挙に関心を持つ人が増える」との声も
集英社オンライン / 2024年6月21日 22時32分
7月7日投開票の東京都知事選は6月20日に公示されるや否や、カオスの様相を呈している。立候補者のポスター掲示板には全裸女の写真が貼りだされ、掲示板の半分近くのスペースは「ショバ代ビジネス」に使われている。街のあちこちで醜悪な光景が展開されることになった首都決戦はどうなるのか。
〈画像多数〉“ほぼ全裸”卑猥なポスターを張る桜井MIU氏ほか
エロポスターを掲示した候補は警告を受けると一転…
候補者番号「18」の河合悠祐候補は、「名もなきイメージガール」を名乗る桜井MIU氏がほぼ全裸でM字開脚のポーズをとるポスターを張り出した。
「表現の自由への規制はやめろ」「モザイク解禁」の文字があり、性器の露出を解禁しろと主張したいらしい。
「顔面を白塗りし『ジョーカー』と名乗る河合氏は草加市議でしたが、知事選に立候補したため公職選挙法の規定で失職しました。政治家といっても“迷惑系”で、奇抜なメイクをし、新宿で困難を抱える若い女性を支援する団体Colabo(コラボ)の活動を妨害することなどで名を売ってきました。
昨年、朝日新聞が河合氏のヨイショ記事を書いたところ、“これまで河合氏は差別発言を繰り返してきた人物だということを朝日はわかっているのか”との非難が高まり、朝日新聞は記事の取り下げと謝罪に追い込まれました(社会部記者)
河合候補は立候補届け出直後の20日、桜井氏がポスターを掲示板に張り出す動画をSNSにアップし「こちらのセクシーポスターが東京中に貼り出され、東京の街は地獄と化します」と書き込むなど大はしゃぎだった。
しかし、首都のあちこちにグロいエロ写真が現れたことには早速、非難の声が上がった。
「掲示板は当然、通学路にもありますが、子どもにポルノを見せることは性暴力だとみなされます。都や都選挙管理委員会に『子どもに見せられない』『なんとかしろ』という声が次々上がりました。
結局、警視庁が夜になって都の迷惑防止条例違反(卑猥な言動の禁止)に当たるとして河合候補本人を呼び出して警告しました。
その後、河合候補は報道陣に『警告をいただいたということです。速やかにはがすように求められたので、それに従ってはがしていいきます』と言った後、新宿内の掲示板では自らポスターをはがしていました。
表現の自由を掲げて闘うようなことをうたいながら警告一発で白旗を上げるとは、結局ウケ狙いだったのでしょう」(警視庁担当記者)
21日になって河合候補はSNSに「ありがたいことに、いろんな方にお手伝い頂いて、はがす対応を早朝から行っています」と書き込み、前日の強気は影もない。
NHK党は掲示場案でショバ代稼ぎ
一方で今回もゲリラ選挙で注目を集めるのが「NHKから国民を守る党(NHK党)」だ。
「56人の立候補者のうち24人は立花孝志氏率いる政治団体『NHKから国民を守る党(NHK党)』の関係者が占めているんです。立花氏らはこの24人分のポスターのスペースを事実上販売し、選挙の掲示板があちこちで出会い系サイトや風俗の“宣伝媒体”に変貌してしまったのです」(都庁担当記者)
記者が中野区役所前の掲示板を見に行くと、「カワイイ私の政見放送を見てね」と書かれたピンク色のポスターが24枚貼り出され、そこにあるQRコードを読み込むと有料の写真投稿サイトに誘導された。
ほかにも、表参道の掲示板には女性専用風俗の広告が貼られまくっているとの情報がある。
「NHK党はウェブサイトで『選挙ポスター掲示場の常識をぶっ壊す!』をうたい文句に、党に寄付すれば都内約1万4000ヶ所に設置される掲示板のうちの1ヶ所で24枚分のスペースに好きなポスターを貼る権利を譲ると宣伝しています。
掲示板1ヶ所あたりの寄付金額という名の「料金」は、5月末までは5000円、6月1日~19日は1万円で、告示の20日からは2万5000円に設定されています」(社会部記者)
立候補者の顔と名前を売り込むポスターを貼る掲示板に、勝手なポスターを貼ってもいいのかという問題は後述するが、なぜこのようなことを始めたのだろうか。
「都知事選の立候補には1人当たり300万円の供託金が必要です。NHK党関係の24人は供託金が没収される水準(有効投票数の1割)に達することが難しく、仮に全員が没収されるとすると党側は7200万円を失う可能性があります。
一方、1か所あたり1万円の寄付を得られるとするなら1万4000ヶ所分で1億4000万円の収入になり、収支ではプラスになる計算です」(政治部デスク)
NHK党の行為は公職選挙法にあたらない?
NHK党の真意はどこにあるのか。21日の立花党首の定例の記者会見ではポスター問題の質問が続いた。
「今回、非常に大きな問題提起ができたというのが、そういう意味では大成功と思っております。ポスター掲示場を作るのに安く見積もっても設置と撤去で10万円、1万4000ヶ所で14億円というお金がかかる。
2013年にインターネットを使った選挙運動が解禁されたわけですから、合理的な理由があるものは経済的な効果も考えてやめていかなければいけない。私は掲示板が無駄だ無駄だと(これまで)何回言い続けたか」(立花氏)
選挙費用を節約するために掲示板をやめようという主張を知ってもらおうと、今回の販売を始めたというのだ。
「(今回の行動で)何かわれわれがお金儲けをするために悪用しているという報道が非常に走っていますけど、それはまさにシメシメです。次の秋の臨時国会にはポスター掲示場に関しての法改正(論議)が出てくるでしょう」(立花氏)
出会い系サイト誘導看板については「われわれは今サイトの社長と連絡を取っているなかで、これまったく出会い系サイトではなくて、月に1枚だけ写真を載せてコメントできるという、出会いようがないサイトなんですよ。出会い系サイトと勘違いされていることに関しては今後、早急に対策を練っている」と説明した立花氏。
だが、表参道の風俗ポスターは把握していなかったようで、問題があるポスターは「すぐにはがしにいきますので」とも言う。
こうした行為は公職選挙法違反にはならないのだろうか。
集英社オンラインは21日、都選管の見解を聞こうと電話を入れたが終日話し中でつながらない。都の別の部署の職員は「なんか、電話が殺到しているみたいです」という。そこで、都内の選管関係者に今回の事態をどう思うか聞いてみた。
「ポスターの内容は基本的に自由なので、立候補している別の候補者を宣伝する内容以外は何でも許されるんですよ。事前の内容チェックも何もない。エロポスターだって公選法では取り締まれない。だから警視庁は迷惑防止条例という別の法令を出してきたんですね。
ポスターショバ代ビジネスも同じで、制限はできません。以前から社会的に問題だと非難されるポスターはちょくちょく出てきましたが、議論にもなっていません。
私も個人的には『おかしいだろ』と言われれば『そうだな』と思いますが、今の法の中で選管職員としては何も言えないんですよね」(選管関係職員)
カオスな都知事選に有権者の反応は?
21日、雨が降りしきる新宿の都庁前で有権者に感想を聞いてみると、60代の自営業男性は「言語道断!ふざけるなって思いますよ。選挙を何だと思っているんですかね。東京都民として恥ずかしいです」と激怒していた。
40代の主婦は「あまり変なポスターは掲示しないでもらいたいですね。子どもの教育にもよくないと思うし、ここは外国人の方もたくさん来る場所だから日本のイメージダウンにも繋がりかねない」と困った様子だった。
一方、中野区役所そばでは、10分ほどの間に15人ものスーツ姿の男性らが、出会い系サイト誘導ポスターのQRコードを次々とスキャンしていった。こうした男性らはほとんど取材に応じてくれなかったが、ポスターに怒っている人が答えてくれた。
「こんなのふざけてますよね。本来、日本の選挙はもっと厳粛に行うべきですよ。こんなのに大金使ってバカバカしいけど、規定に反しているわけじゃないし、これを機に選挙に関心を持つ人が増えるって意味ではいいんじゃないかなぁと思いますよ。」(50代のIT関係の男性)
「あやしいポスターがこんなにも並んでいたら、気になってつい足を止めちゃいますし、当然話題になりますよね。試しにスキャンしてみたら、よくわからない変な課金サイトに飛びました。
選挙と全然関係なくてびっくりしましたね。炎上商法だと思いますよ。今どきのやり方だなぁと感じましたね」(40代の男性公務員)
都民にとっては今後の生活がかかる重大イベントなのだから、どのような候補者がいいか、今一度、落ち着いて考えてほしいものである。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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