頂き女子のターゲットになりやすい人の特徴とは? 社会から助けてもらえず過酷な状況に陥る弱者男性の実態
集英社オンライン / 2024年7月27日 11時0分
〈「40代後半でカネもない独身のおっさんに人権なんてないんです」年収の価値基準が高すぎる男性社会の地獄とは?〉から続く
数多くの「おぢ(=おじさん)」から詐欺行為でお金を搾取した頂き女子りりちゃん。彼女がターゲットにしていたのは、お金持ちではなく、独り身でモテたことがない男性だった。
『弱者男性1500万人時代』より一部抜粋・再構成し、社会から孤立していく弱者男性のおかれている実態をレポートする。
男性には「玉の輿」のチャンスがない
女性の場合、「同等婚、または上昇婚」をする傾向にある。つまり、自分の年収以下の男性とは基本的に結婚したがらないのだ。これは、たとえ無収入だったとしても相手への年収を問わない男性が圧倒的に多いのとは対照的である。
近年、政府が推し進める働き方改革などの影響もあって、女性の年収は徐々に上がり始めている。一方、低収入の男性はこうした女性から見向きもされず、未婚のまま取り残されていくことが想定される。
女性の場合は逆に、無職でも年収1000万円以上の男性と結婚するケースもあり、いまだ「玉の輿ルート」が残されている。性別によって異なる、このチャンスの差は大きい。
これは決して女性を責めるためのデータではない。2023年の『SPA!』の調査では弱者男性のうち、自分が弱者であることを女性のせいにする人はわずか2.2%であった。
そのため、男性は女性のこういった傾向を知りながら、「だから自分たちは苦しいのだ」とは言っていないのである。
ただ、現実として貧困に陥った男性は結婚することが難しくなる。それゆえに一度介護や新卒就活の失敗などでハンディを背負うと、そこから這い上がるチャンスが女性よりも限られてしまうのだ。
頂き女子のカモにされる?
そして弱者男性の場合、一発逆転して収入を得たとしても、その次にコミュニケーションの壁にぶつかるケースが少なくない。恋愛結婚が主流である現代の日本では、ただ単純にお金があれば結婚できるというわけではない。
恋愛対象となる相手とそれなりに会話を成立させねば交際にまでこぎ着けることができないのである。また、マッチングアプリや結婚相談所では、常に「誰かと比較されながら」交際を目指すことになる。
そこにもし、コミュニケーションが得意なライバルがいれば、いいなと思った女性がいてもあっという間に奪われてしまう。
そこで誠実かつ、コミュニケーションスキルの低い男性を待っているのが、「頂き女子」を筆頭とする詐欺である。2023年、頂き女子の筆頭格として有名な「りりちゃん」が逮捕された。
頂き女子とは、男性と疑似恋愛をしつつ「親の借金を代わりに返済していてお金がない」「学費が足りなくて退学になるかも」などと噓をつき、お金を無心する女性を指す言葉である。
りりちゃんはいかにお金を「おぢ」と呼ぶ中年男性から騙し取るかをマニュアルに書き起こし、販売していた詐欺幇助の疑いで逮捕されたのである。
りりちゃんは最もお金を落としやすいカモとして、「独り身・モテたことがない・お金がない」男性を条件に挙げた。これはまさに、弱者男性の典型例である。なぜお金をタカるのに金持ちを狙わないのかというと、金持ちは基本的に倹約家が多く、金払いが悪いからだという。
つまり、女性のかわいそうな話を信じ、少ないながらも懐を痛めて学費や生活費を援助しようとする、優しい弱者男性こそ被害に遭っていたわけである。
もともとお金を受け取って飲み会に同伴する「ギャラ飲み」や、デートや肉体関係を通じて金銭を受け取る「パパ活女子」はいたが、ニセの経歴でお金を貢がせるより悪質なケースとして、頂き女子は逮捕されたのである。
かつて、複数の男性に多額の保険金をかけて殺害し、今は死刑囚となっている木嶋佳苗も、狙っていたのは「お金こそ持っているが、コミュニケーションや外見などに苦手意識のある弱者男性」だった。弱者男性は加害または透明化されるのみならず、悪人に狙われてしまうケースもあるのだ。
宗教も政治も弱者男性を助けてくれない
「弱者支援」といえば、どういった団体が行っているか。そこでまず挙げられるのが宗教団体・政治団体であろう。
近年の日本では、宗教を信仰する人がどんどん減っている。NHK放送文化研究所が国際比較調査グループ(ISSP)の一員として行った「宗教」に関する調査結果を見ると1998年、2008年、2018年と、年々信仰心がない人が増加していることがわかる。
特に男性は女性より信仰心がなく、2018年の調査において39歳以下の男性は42%が信仰心について「まったくない」と答えている。2024年現在、日本の37〜47歳は多感な時期にオウム真理教事件が起きており、その影響もあるといえるだろう。
このような背景もあり、宗教団体もボランティア活動を大々的にアピールすることはない。さらに、ある宗教団体に関するリサーチでは、信者と非信者のボランティア活動への熱意について、多少信者のほうが多く参加する傾向はあるものの、それほど大きな差はなかったとされる。
実際に信仰する人も減っており、さらに信者側も、弱者支援に強い関心はない。そのため、宗教団体から弱者男性への支援はあまり期待できないといえる。
続いて、政治団体である。保守層が想定する男性像とは「女性と子どもを守り、家庭の大黒柱として前線で戦う武士」だ。そのため、弱者男性はすべての男性の中でも二流の扱いを受けることになる。
現在、右派や愛国者を自称する人間のなかには「ネット右翼」も少なからずいるが、東京大学社会科学研究所の永吉希久子准教授の調査によると、ネット右翼はそうでない者より「正社員や経営者・年収600万円以上」である割合がわずかながら高い。
そして、割合的に正規職が多く、無職も少ない。つまり、ネット右翼は強者の思想ともいえる。
では、左派はどうだろうか。そもそもリベラルとは「自由」から派生した言葉であり、個人の自由を最大限尊重する立場を持つ。そうなると、独身男性のことも「自由な意志の結果、独身を選んだ」として、自業自得扱いを受けることが多いのである。
大場博幸氏による『非モテ独身男性をめぐる言説史とその社会的包摂』では、リベラルは独身男性を「相互にケアするように促し、それを社会的に支援する」とのみ記されている。
しかし、独身男性の多くは貧困等を理由にした「不本意未婚」の状態に置かれており、自由という名の放置ではどうにもならない。リベラルから見ても、独身男性は「保護、福祉」の対象というよりは、自由な競争の結果、敗北することを選んだ者に見えがちなのである。
ここまでをまとめると、弱者男性は女性と比較して過酷な労働下に置かれやすく、過労死に陥ってしまう数も圧倒的に多い。
さらに、貧困から逃れるために体を売ろうとしても、結局はセックスワークで稼げない女性と変わらない、月々の生活保護費と大差ない金額しか稼ぐこともできない。そして親族などの影響で一度貧困になれば、負の連鎖から抜け出すことはできず、親の介護でも離職できずにフラフラになりながら面倒を見ざるを得ない。
お金はないながらも心優しい弱者男性をカモにするのは、噓をついて詐欺を働く「頂き女子」たち。宗教や政治も弱者男性を根本的に助けてくれるものではなく、弱者男性の行き場はないのである。
図/書籍『弱者男性1500万人時代』より
写真/Shutterstock
外部リンク
- 日本人の8人に1人が弱者男性 「キモくて金のないおっさん」は本人の努力不足が原因?調査で見えてきた日本の男性の現在地とは
- 「40代後半でカネもない独身のおっさんに人権なんてないんです」年収の価値基準が高すぎる男性社会の地獄とは?
- 〈ホテルでおしゃべりして4万円〉「でもワタシは『頂き女子りりちゃん』とは違うんです」なにかと噛みつく炎上アイドルに「無理してませんか?」と聞いてみると…〈胡桃そらインタビュー〉
- 〈6月28日初公判〉「JCの“初めて”売ります。1万円」殺人未遂で逮捕の元“パパ活女子”が綴った苦難に満ちた29年。「中学生というだけで自分に価値があると思った」売春との出会いが彼女の人生を変えた
- 〈密着・脱ホスト依存〉借金総額5000万円。風俗、闇金、個人融資を駆使して…ホス狂だった元女性会社員(26)が“回復施設”に入居して思うこと「未練がないと言ったら嘘になる、でもこれが最後のチャンス」
この記事に関連するニュース
-
「弱者男性」論は、なぜ盛り上がるのか?...産業構造の変化と「キラキラ勝ち組」の彼方
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月26日 14時0分
-
「40代後半でカネもない独身のおっさんに人権なんてないんです」年収の価値基準が高すぎる男性社会の地獄とは?
集英社オンライン / 2024年7月26日 11時0分
-
日本人の8人に1人が弱者男性…「キモくて金のないおっさん」は本人の努力不足が原因なのか? 調査で見えてきた「日本の男性の現在地」
集英社オンライン / 2024年7月25日 17時0分
-
「宗教に熱心な彼氏とどう向き合えば…?」結婚前に判断すべき「幸せになるための条件」
ananweb / 2024年7月13日 21時0分
-
年収1,600万円だった天涯孤独の50代独身女性、時代に抗い出世コースを爆走も…年収120万円へと落ちたワケ。ポツリとこぼした“冗談”に「ごめん、なにも笑えない」【FPが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月8日 11時45分
ランキング
-
1「うちの病院、ヤバすぎる」美容クリニック従業員がSNSで暴露…なぜ「内部告発」を止めることはできなかったのか?
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月27日 7時15分
-
2街にあふれる「アルファード」 なぜ「先代」も“高い”? すでに“型落ち”でも「現行型」に迫る「高リセール」維持する理由とは
くるまのニュース / 2024年7月26日 10時10分
-
3致命傷になる部位ってどこ? バイク事故で守るべきポイントとは
バイクのニュース / 2024年7月27日 10時10分
-
4日本のにんにくは中国産が9割。「国産にんにく」と「中国産にんにく」の違いとは? 3つの産地で比較
オールアバウト / 2024年7月26日 21時5分
-
5老眼も眼精疲労もこれで防衛できる…眼科医直伝どんなに忙しい人でも毎日続けられる"両目の自己回復習慣"
プレジデントオンライン / 2024年7月27日 10時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください