〈カオスな都知事選〉情勢不利が伝えられる蓮舫氏が、逃げる小池氏をまくるカギは「国民民主党支持者」にあった
集英社オンライン / 2024年6月25日 7時0分
東京都知事選では7月7日の投開票に向けて、各候補者が舌戦を繰り広げている。これまでの選挙戦では現職の小池百合子氏が離島や23区外で支持を訴え、前参院議員の蓮舫氏が都内の主要な駅前で街頭演説を繰り返し、前安芸高田市長の石丸伸二氏は1日10ヶ所以上でマイクを握るなど、三者三様の動きを見せた。その狙いはどこにあるのか、最新情勢も踏まえながら探った。
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郊外を中心に選挙戦を展開する小池氏、その狙いは?
「私、小池百合子に東京大改革、第3幕をみなさま方とともに進めていきたい」
6月23日、青梅市のJR河辺駅前で小池氏は聴衆に向かって力強く叫んだ。
小池氏は22日には離島の八丈島を訪れ、23日には青梅のほかに奥多摩町のJR奥多摩駅前に訪れるなど、人口が多くて目立つ都心部ではなく、あえて郊外を中心に選挙戦を展開している。
その狙いは何なのか。永田町関係者は語る。
「小池氏が今回の都知事選で一番危惧しているのは、自身と蓮舫氏の対決が盛り上がって、その中で逆転を許すことだ。選挙戦が盛り上がれば盛り上がるほど、挑戦者である蓮舫氏が際立ってしまう恐れがある。
郊外を中心に回っているのは、支持固めの目的ももちろんあるだろうが、都心で舌戦を繰り広げる蓮舫氏をかわして、対決への注目を抑える狙いがある」
実際に選挙については一般的に、選挙戦が盛り上がらないほど現職にとって、あるいは固定の支持層や組織票を持っている候補者にとって有利に働くと言われている。
政治家としての自身の見せ方や見え方を徹底的に意識して、これまで政界を渡り歩いてきた小池氏らしい戦法であるとも言えるだろう。
一方で蓮舫氏は渋谷駅や池袋駅など、主要な駅で街頭演説を繰り返す、スタンダードな選挙戦を繰り広げている。
23日には錦糸町駅前で「小池さんは光に光を当てるのは得意です。でも東京で広がる格差。光と影。だったら私は影に光を当てて、その影がなくなるまで光を当て続ける都知事になりたい」と聴衆に訴えかけ、困窮者への経済支援などを充実していくと主張した。
蓮舫氏は連日、トレードマークとも言える白ジャケットを身にまとい、得意の蓮舫節を炸裂させている。
そして、第三の勢力として注目されているのが、ネット上での人気が高い前安芸高田市長の石丸氏だ。
石丸氏は22日、23日の土日にかけて20ヶ所以上でマイクを握り、「銀行で経済アナリストとして活動し、その後、市長として理論を実践した。経済を知る都知事として、東京を経済都市として盛り立てていく」と力を込めた。
なるべく多くの場所で街頭演説をし、1人でも多くの都民に姿を見せることで、ネット上での知名度を、実際の投票行動に繋げさせるよう邁進している。
事前の情勢調査では小池氏有利も…
このように選挙戦が繰り広げられている都知事選だが、永田町では自民党が告示前に実施した情勢調査に関する情報が出回っている。
筆者が入手した自民党による情勢調査は、6月1~2日、8~9日、15~16日の3回にわたって行われ、投票先として「小池百合子」「蓮舫」「石丸伸二」の3氏と「その他の候補者」、「わからない・まだ決めていない」を挙げた。
その結果、1~2日は小池氏が43.1%の支持を集めてトップとなり、蓮舫氏が33.0%、石丸氏8.1%、その他6.6%、わからない9.2%と続いた。
同じく8~9日は小池氏40.3%、蓮舫氏34.6%、石丸氏9.7%、その他6.4%、わからない9.0%。15~16日は小池氏43.6%、蓮舫氏32.1%、石丸氏8.3%、その他7.8%、わからない8.2%となっている。
この調査を読み解くと、おもしろいことがわかってくる。
情勢調査の結果には、回答者の支持政党別の投票先についても記載されており、小池氏は自民党や公明党の支持層のうち約8割から支持を得ているのに対して、都連が支援を表明している国民民主党支持層からは約4割の支持しか得られていない。
一方、蓮舫氏は立憲民主党、共産党、社民党の支持層のうち約7割から支持を得ているのに加えて、国民民主党支持層からも35%の支持を得ているのだ。
このことから、国民民主党の支持者は小池氏と蓮舫氏で支持が割れていることが伺える。
国民民主党は労働組合の中央組織である「連合」の中でも、「同盟系」という主に民間企業の労働組合によって支えられている。
民間企業は業績を左右するような政府の経済政策に敏感であり、そのことから国民民主は政府与党と協調路線を取ることも多く、野党の中でも政治的にはやや保守的だ。
また、連合は経営陣とともに会社の利益を追求し、その中で雇用環境を改善しようとする「労使協調」の姿勢であるため、共産主義への転換を図る共産党とは相容れず、共産との選挙協力にも否定的となる。
共産はなぜ蓮舫氏を熱心に応援?
一方で、今回の都知事選では共産は熱心に蓮舫氏を応援している。その背景には、立憲の東京都連が共産との選挙協力を積極的に行なってきたという経緯がある。
というのも、東京で働いている労働者は千葉や埼玉、神奈川などの隣県から通勤し、都内の選挙の選挙権を持っていない人もいるため、どうしても連合の集票力は弱くなってしまう。
それに比べて、人口の多い都内には、市民運動の参加者や共産党の支持者などのリベラル層が一定数いて、票を集めやすいのだ。
こうしたことから、東京都においては立憲と共産の繋がりが深く、それを忌避する国民民主都連や連合東京は蓮舫氏ではなく小池氏の支持を選んだということになる。
しかし、小池氏は裏金問題で大逆風の自民からの支援を受けているため、連合の中でも小池氏をそのまま応援することには抵抗がある人も多い。
何より、国民民主党も元をたどれば蓮舫氏が代表を務めた民進党や、一時的にせよ政権を担っていた民主党に行きつく。そのため、連合東京は小池氏への支持を表明した一方で、傘下の産別組織が蓮舫氏を支援することも容認した。
このことが情勢調査で国民民主党支持者が小池氏と蓮舫氏で割れたこととして表れていると言えるだろう。こうした支持層を蓮舫氏が獲得し、さらにパイを広げることができるか否か、それが残りの選挙戦を左右すると分析できる。
果たして、誰が次の都政を担うことになるのか。都民だけでなく、多くの国民がその行方に注目している。
取材・文/宮原健太
集英社オンライン編集部ニュース班
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