〈都知事選・Z世代が期待する候補者〉不適切選挙ポスターは“ゆとり教育”の影響? カオスな東京都知事選挙に対するZ世代の本音
集英社オンライン / 2024年6月30日 8時0分
すでに期日前投票が行なわれている東京都知事選挙。56名もの候補者が乱立するほか、選挙掲示板のポスターをめぐって警視庁から候補者へ警告が入るなど、前代未聞の事態が相次いでいる。さまざまな意味で“カオス”な今回の選挙に対して、Z世代の若者たちはどう見ているのだろうか。Z世代を中心とした都民100人に調査したところ、「若者の政治離れ」というイメージとは相反する意外な傾向がわかった。
ほぼ裸の女性のポスターを貼った一部候補者には「話題になれば勝ちみたいな風潮は、私は否定的」
投票には行くが政治に期待しているわけではない?
今回の都知事選は、これまでと比べて極めて異彩を放っている。その最大の特徴は、過去最多を大きく更新する56名もの立候補者だ。一方で、中には当選を目指していないと公言する候補者もいるほか、政見放送の内容が物議を醸したりと、選挙を取り巻く状況は“カオス”そのものと言える。
こうした光景を、働き盛りや選挙権を持ったばかりの若者はいったいどう見ているのか。渋谷駅周辺や学生街など、若者が多い街でZ世代を中心とした都民100人に本音を聞いてみた。
まず驚くべきは「投票に行く」と答えた人の多さだ。世間では若者世代の投票率が低いとたびたび指摘されているが、こうした声に反し、調査する限りでは「投票に行く」と答えた人が64人と多数派を占めていた。
「僕はここ渋谷が職場なんですけど、ゴミとか落ちていてすごく汚いじゃないですか? なので、街の美化をしてくれる人に投票しようと思っています。あとは、上の世代にハッキリと物を申してくれる人がいいですね」(30歳男性・会社員・大田区)
「今回初めて選挙に行きます。学生時代は政治に関心がなく『なんとなく』の4年間を過ごしていましたが、社会人になってから税金の重みや円安などの問題点に目を向けるようになり、都政にも関心を持ち始めました」(24歳男性・会社員・練馬区)
しかし、よくよく耳を傾けると、「投票には行くが政治には期待していない」というシビアな本音も見え隠れする。
「都民の義務なので期日前投票しようと思っています。でも新しい都知事に期待することはそんなにないです」(20歳女性・学生・江戸川区)
「新しい都知事に期待することはないし、いい候補者もいないけど投票には行きます。白票を投じる予定です」(19歳男性・学生・文京区)
期待はしなくても“問題意識”はしっかり
せっかく政治への参加意識が高くても、「投票したい」と思える候補者がいないのは大変な不幸といえるだろう。調査では「投票に行かない」と答える人も多かったが、今は関心が高い層も、いずれこうした“棄権”に回ってしまうかもしれない。
このように、若者たちは投票する・しないにかかわらず、政治不信や期待の低さをにじませている。しかし、問題意識がないわけではない。今回の都知事選で大きな騒動になっている“ポスター問題”は、「投票に行かない」「選挙に関心がない」と答えていた人でさえ知っていた。
都知事選のポスターをめぐっては、一部候補者がほぼ裸の女性を印刷したものを選挙掲示板に貼ったところ、警視庁から都の迷惑防止条例に反するとして警告が入り、差し替える騒動が起きている。
他の候補者も、女性用風俗店を紹介するポスターを掲示し、同じく警視庁からの警告で差し替える事態へと発展した。
こうした掲示を「不適切」だとした人は圧倒的に多く、政治への“不信感”と“無関心”が必ずしもイコールではないことが見てとれる。
「投票に行く予定はありません。政治をあまり知らないので、もっと興味を持たなきゃと思います。でも、ポスター騒動は知っていました。『話題になれば勝ち』みたいな風潮は、私は否定的ですね」(43歳女性・新宿区)
こうした掲示を法律で規制することを求める声も多かったが、これには選挙活動や表現の自由の観点から「難しい問題」という意見もある。
「投票に行くかどうか迷っています。新しい都知事に何も期待しないし。ネットで投票できればいいけど、それでも行かないかも。ポスターは不適切だと思うし、ここまで来ると規制が必要だと思います。ただ、選挙の自由とか表現の自由もあるし、難しいですね」(31歳男性・会社員・江戸川区)
不適切ポスターの背景に「ゆとり教育」を見る人も
さらに調査を進めていくと、こうしたポスター騒動がなぜ相次いでいるのか、独自の視点で分析する人に遭遇した。
「ポスター騒動は、社会が不安定な状態だということを表していると感じています。あの手のポスターはおかしいことだと思いますが、ああやって選挙で遊ぶのは、社会が不安定だからでは」(25歳男性・会社員・八王子市)
同男性はさらに、問題は立候補者ではなく有権者にもあり、背景に「ゆとり教育」があるのではという持論も語った。
「今はゆとり教育を受けた『ゆとり世代』が多く社会に出ていますが、彼らは『怒られる』という経験をあまりしてこなかったじゃないですか? そのせいで大抵のことは許されると思っているフシがあり、不適切なポスターもさほど問題だと思わないから、貼る人も現れてしまうのでは」(同男性)
今回の調査の結果、「投票に行く」は64人、「投票に行かない」は16人、「未定」は20人という内訳であり、若者の政治参加の意識が高いことがうかがえた。
ポスター騒動に関しては「不適切だと思う」が実に78人にものぼり、いかに問題視されているかが浮き彫りになったと言える。これだけ問題と感じる声が多いと、国会での法改正もありえない話ではなくなってくるかもしれない。
取材・文・撮影/久保慎 集英社オンライン編集部
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