マリオ、ドラクエ、ゼルダ…ゲームの“リメイク多すぎ”問題にファンから賛否。背景にあるメーカー&ユーザー「それぞれの事情」
集英社オンライン / 2024年6月27日 18時30分
6月18日、任天堂の情報番組「Nintendo Direct 2024.6.18」が配信され、今後発売予定の作品ラインナップが明かされた。数々のサプライズにネット上では盛り上がりを見せたが、その一方で切ない声もあがっている。
リメイク作品だらけの新発売情報
今回発表されたタイトルは、『マリオ&ルイージRPG』の9年ぶりの新作、HD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』、『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』、『メトロイドプライム4 ビヨンド』、『スーパー マリオパーティ ジャンボリー』などなど、超人気タイトルの新作が並んでいる。
発表された直後は、Xのトレンドが「Nintendo Direct」に関連するワードで席巻されるほどの大にぎわいをみせた。
だがそんな歓喜の声が多くあがる一方で、「リメイク作品が多すぎるのでは?」との指摘も多数寄せられている。
確かに今回のラインナップを見ると、『ドラゴンクエストIII』のほか、HD-2D版『ドラゴンクエストI&II』、『FANTASIAN Neo Dimension』、『かまいたちの夜×3』、『ドンキーコング リターンズ HD』、『逆転検事1&2 御剣セレクション』、『ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン』などリメイク作品が多い。
この現状には、〈もしかすると俺たち世代はこの先ずっと、自分の黄金時代のリメイク作品をひたすら遊び続けるだけで、残された余暇の時間を失っていくのではないか?〉〈過去の遺産の食いつぶしばかりだな〉〈何だかんだやるけどリメイクばっかでゲーム業界ヤバそう〉〈ハリウッドがリブートとか続編だらけになったように日本のゲームもリメイクだらけになってる〉といった、ネガティブな声もあがっている。
いったいなぜ、リメイク作品がこんなにも多いのだろうか。
チャンネル登録者数21万人のゲームレビューYouTubeチャンネル「KENT for 任天堂ゲームレビュー」を運営するKENTさん(@kentworld2)に見解を聞いたところ、メーカーの事情、そしてユーザーの事情からそれぞれ、リメイク作品が多くなっている理由が考えられるという。
何度リメイクしても爆売れする『ドラクエⅢ』
「まずメーカーの事情ですが、ゲーム開発の長期化によって以前ほどはコンスタントに新作を出せない状況なので、リメイク作に頼らざるを得ないのではないかと思います。
ケースバイケースではありますが、リメイクタイトルは新作よりも作りやすく、安定した結果を残しやすいので、商業的には非常に美味しい戦略です。
また、昨今は少子化が進んでいて、ゲームユーザーの年齢層もどんどん上がっています。その層に訴求する場合、新作よりも彼らが多感な時期に遊んだリメイク作のほうが、琴線に触れると考えられているのでしょう」(KENTさん、以下同)
確かに今回、様々なタイトルが発表された際、Xで特ににぎわっていたのは、リメイク作品たちだ。
HD-2D版としてリメイクされる『ドラクエIII』に関しては、1988年にファミリーコンピュータ用のゲームソフトとして発売されて以来、これまでに8回、かたちや対応機種を変えて販売されているが、それでも、発売のたびに爆発的なセールスを記録するほど、いまだに大人気を誇っている。
ゲームから離れていた人も、HD-2D版『ドラクエⅢ』をプレイするために、PlayStation5やNintendo Switchの本体を購入する可能性は十分にある。“確実な成功”が約束されている分、メーカーは思い切ってこの開発に予算をつぎ込むことができるだろう。
「私が個人的に印象的だったのが、2023年11月17日に発売されたSwitch版の『スーパーマリオRPG』です。同作は1996年にスーパーファミコン用のソフトとして発売され、Switch版はリメイクだったのですが、発表当時、30代~40代のユーザーを中心に注目を集めていました。
私がふだん投稿しているマリオゲームの動画は、20~30代の視聴者が多いので、明らかにいつもよりも上の年齢層に注目されていましたね」
ゲームで思い出に浸りたい人が多い?
確実にヒットが約束されている名作リメイクだが、そもそもヒットが約束されているのはユーザーが望んでいるからにほかならない。メーカー事情とユーザー事情は密接な関係がある。
「動画投稿をしている者としては、多感な時期の思い出に浸りたいという需要を強く感じます。よく『任天堂に今後出してもらいたいタイトル』を視聴者に募っていますが、そこで出てくる要望は、過去作のリメイク・リマスター版が多いです。
最近だと『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』『ゼルダの伝説 風のタクト』『カービィのエアライド』あたりでしょうか。もちろん新作を遊びたいという要望も多くありますが、ある程度内容がわかっているリメイクのほうが、安心できると感じているご意見も多くいただいています」
また、古いゲーム機で発売された名作の場合、気軽にプレイすることが難しいうえ、昨今はレトロゲームの高騰化が進んでいて、定価以上で販売されているタイトルも珍しくない。そういった不満を解消してくれるのも、リメイクのメリットだ。
「メーカーの思惑とユーザーの需要が噛み合った結果が、昨今のリメイクラッシュにつながっていると感じています。個人的にはリメイクの売上が新作の開発資金につながればよいと思っています」
新作を望む声、リメイクを望む声、二つの要望に応えなければいけないゲームメーカー。そして今制作されている新作も、十数年後には名作レトロゲームの一つとして、リメイクされていくのだろう。
取材・文/集英社オンライン編集部
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