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〈追及・ヤマト運輸〉ドライバーから非難轟々の「クール部隊」は解体か「絶対にあそこへは戻りたくない」。置き配サービス導入も「利用はほぼなし」、残業打ち切りも「以前のままがよかった」

集英社オンライン / 2024年7月5日 17時38分

〈ヤマト2万8000人の委託・パート切りから1ヶ月〉「仕分け役不在で配達が始められず…」しわ寄せで現場は大混乱、後継サービス「クロネコゆうメール」もトラブル続出「2、3日で届いていたものが2週間かかることも」〉から続く

ヤマト運輸は昨年から、現場ドライバーの利益効率化を目指して「分業制」をスタート。これにより「CD」(クールドライバー)と呼ばれる、クール便専門の配達部隊を組織したのだが、現場からは批判が殺到。集英社オンラインは過去記事(#4、#6、#7)にて「クール便の遅延が相次いでいる」「いつか必ず食中毒を起こす」など、CDたちの悲痛な声を届けてきた。しかし、ここにきてヤマト運輸は方針を転換、都内23区の一部で「CD」の解体を進めていることが明らかになった。いったいヤマトになにが起きているのか。。

現場の声を聞いたはずなのに…本社の方針転換で上がった配達員たちの不満の声がこちら

クール部隊…やっぱりやめた!

日本郵便との協業にともない、ヤマト運輸に従事する非正規社員およそ2万8000人の契約終了が昨年6月に発表されて以降、集英社オンラインは過去8回にわたって現場で働く人々の混乱ぶりを報じてきた。

そのなかで明らかになったのが、昨年からヤマト運輸が推し進めてきた「分業制」だ。

もともと現場のドライバーは「SD」(セールスドライバー)と呼ばれ、集荷や配達のほかに営業も行なうのが基本だった。

ところが、現場ドライバーの利益効率化を目指して、昨年から港区・品川区・千代田区・新宿区・江東区などで新たにクール便専門の「CD」(クールドライバー)をスタート。

すべてのドライバーを対象に「説明会」を開いてメンバーを指名し、「クール部隊」と呼ばれる組織を立ち上げたのだ。

しかし、これに現場ドライバーからは批判が殺到。集英社オンラインの過去記事(#4#6)のなかには現役のCDも証言しており、

「ドライバー1人あたりの配達範囲が広すぎて、時間指定順守率が10%を切っている」
「荷物(クール便)が多すぎて当たり前のように路駐して配達している」
「荷物が冷凍庫に入りきらず解凍事故が起こりそうになった」
「冷蔵庫や冷凍庫が完備されていない自前の車で配る”委託業者”もいて、食中毒を起こす可能性がある」


などと、その杜撰なシステムが浮き彫りになった。

そんななか、現役のヤマト従業員から新たな情報提供があった。事態の混乱を受けてか、急にヤマト運輸が方針を転換したというのだ。千代田区のセンターで働く現役ドライバーはこう証言する。

「あれだけ本社が力を入れていた『クール部隊』ですが、最近は解体の方向に進んでいるようです。都内23区の一部主管(エリア)のCDは、もとの現場に戻ってふたたびSDとして働いているようです。

実際に、昨年5月ごろからCDとして働いていた同僚も最近になって戻ってきました。クール部隊での日々は相当ツラかったようで、『やっと解放された』とか『マジでキツかった』と話していましたね」

新宿区のセンターに勤める現役ドライバーも、「ウチのエリアでもクール部隊は一旦解散しました」と言う。

「今年4月ごろに同僚たちの間でも『CDが解散するらしいよ』とウワサになっていたので、CDの先輩に聞いてみたんです。そうしたら『上司に、新宿区のCDは一旦解散するからって言われたんだよね』と困惑してて。

結局、5月初旬に新宿区のすべてのCDが戻ってきて、人手不足のエリアにSDとして配属されたわけですが、本社としてはクール部隊を完全に終わらせたわけではないそうです。また再集合する可能性もあるみたいで、『もうあそこには絶対に戻りたくない』と先輩も愚痴をこぼしていました。

CDとして働いている時期は、朝が早くて夜も遅いからめったに同僚たちの飲み会には参加しなかったし『体力的にしんどすぎる』と参っていましたから……」

置き配サービス導入も利用客はほぼなく

発足当時は、該当エリアの全ドライバーを対象に説明会を開き本社側がメンバーを指名するという熱の入れっぷりだった「クール部隊」だが、今回の解体の報告は、本社はおろかセンター長からもいまだにないという。前述の千代田区のドライバーはこう肩を落とす。

「昨年はあれだけ『クール部隊を立ち上げる』とか息巻いていたのに、トラブルが多発して解散することになっても、ドライバーたちにはなんの報告もない。

当然、分業制をやっていない地方のドライバーたちの人はいまだにCDが解散したことを知らないだろうし、僕自身も、CDだった先輩が帰ってきて初めて気づいたわけですから……。

結局、そういう対応をされると『本社は失敗を全部なかったことにしたいのかな?』と心配になるし、現場を知らない本社の連中への不信感に拍車がかかりました」

一方で、ヤマト運輸では「分業制」と入れ替わるように6月10日から「置き配サービス」がスタート。

もともとAmazonやZOZOTOWNといったネット通販の注文品のみ置き配の対象だったが、新たなサービスとして冷蔵・冷凍品や着払い品をのぞく「宅急便」も可能になった。

ヤマト運輸の無料会員サービス「クロネコメンバーズ」に登録しているユーザーなら誰でも利用でき、玄関先のほか、車庫や自転車カゴにも置き場所を指定できるとあって、ドライバーの負担軽減にも繋がるのではと期待されている。

だが、「そもそもサービス自体が認知されていないので、正直、何も変わりません」と言うのは、前出の新宿区のドライバーだ。

「サービス開始以降も、1日に100個以上のドライ(宅急便)を配っていますが、置き配は10個もないですね。結局は対面で受け取る人がほとんどで、不在票を入れたり再配達に回ったりといったルーティンは変わっていません。

そもそも高齢のお客さまはインターネットに疎く、無料会員サービスの登録方法すらもわからない。

もちろん『荷物を盗まれたら嫌だな』という思いからサービスを利用しない人もいるかもしれませんが、若者もふくめて置き配サービスがあることを知らない人が圧倒的に多いんです。ほかの担当エリアの同僚もみんな『宅急便の置き配は一日に数件程度しかない』と嘆いていました」

給料激減で節約生活を強いられるドライバーも

集英社オンラインでは、現場ドライバーの「労働環境」についても過去記事(#4#7#8)で報じている。

そのなかで、都内23区のドライバーたちから「人手不足で就業時間内に荷物を配達しきれない」「でも休憩を取っていないと上司に注意されるから虚偽報告している」などの悲痛な声もあがっていることを紹介した。

だが、ドライバー不足が懸念される「2024年問題」への対策としてか、ヤマト運輸では4月以降ある変化が起きているという。都内23区のドライバーたちはこう証言する。

「今年4月ごろから厳しく労働時間を管理されるようになったので、夜に不在票が出た場合は、翌日に再配達するようになりました。

いわゆる『7-9』と呼ばれる最後の配達時間では、これまで夜7時ごろに一周してみて不在だったら、夜9時ごろに再配達に行かなきゃいけなかった。

そうなると労働時間が延びてしまうので、今は一周したら切り上げるようになったんです」(千代田区・SD)

「これまでは朝7時や7時半に出勤して荷物を仕分けして配達に向かってましたが、今は8時半出勤で固定されてます。朝はスキマバイトの人たちに仕分けしてもらうので、出勤したらそれをトラックに積んですぐに配達に向かうようになりました」(新宿区・SD)

これは一見、現場のドライバーにとっては朗報に聞こえるが、実はそうでもないらしい。前述の千代田区のドライバーはこう続ける。

「ヤマト運輸のドライバーの給与は基本給が低く設定されていて、荷物の集荷量で決まる『インセンティブ』や『残業代』で稼いでいる人がほとんど。

自分の場合、住宅街エリアを担当しているのでインセンティブはあまり付きませんが、そのぶん『7-9』の配達希望が多いため残業代は月に12~3万円ほど支給されていました。

しかし、今はとにかく早く切り上げなきゃいけなくなったので、給料もガクッと下がりました」

現在の残業代はおよそ7万円。同じセンターの同僚たちも給料が減ったことで節約を余儀なくされており、「こんなことになるなら以前のほうがよかった」との声もあがっているという。

また、前出の新宿区のドライバーは「月の労働時間を減らすために、勝手に有給を使われた」とため息をつく。

「労働時間の管理が厳しくなってからも、これまでと荷物の量は変わらないので、残業するしかない日もあります。ところが残業を続けると、月の労働時間を無理やり減らすために有給を勝手に使われる。

もともと有給って自分から取得するものなのに、センター長に『お前、今月ヤバいから有給ここで入れてな』と強制的に有給を消化させられました」

こうした現状についてヤマト本社はなんと答えるのか。質問状を送ったところ、以下のような回答があった。

「当社は、EC化の進展やお客さまのニーズ・流通構造の変化など、社会・事業環境の変化に対応するため、ネットワーク全体の品質・効率性の向上に取り組んでいます。

また、『2024 年問題』など物流業界が抱える社会課題の解決に貢献し、持続可能な物流サービスの実現に向けて、様々な取り組みを進めておりますが、いずれのご質問も個別の事案のため、回答は差し控えさせていただきます」

ヤマト運輸の社訓は「ヤマトは我なり」。社員一人ひとりが「自分はヤマトを代表している」という意識で行動してほしいと創業者が制定した「社訓」だが、この思いをもった社員はいったいどれだけいるのだろう。

※「集英社オンライン」では、宅配業者のトラブルについて、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。

メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

X(Twitter)
@shuon_news

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

 

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