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<牧之原3歳女児バス置き去り>「はいはい。わかりましたよ」事件後驚きの言動をした元園長に禁固1年4カ月の実刑判決。女児の父が当時取材で明かした「2つの決着」とは…

集英社オンライン / 2024年7月4日 20時25分

静岡県牧之原市の認定こども園で当時3歳だった河本千奈ちゃんが送迎バスに置き去りにされ、重度の熱中症で死亡した事件で、7月4日静岡地裁は元園長の増田立義被告(74)に禁固1年4ヵ月の実刑判決を言い渡した。この事件では当時、送迎バスを運転していた増田被告のほか、園児の所在確認を怠ったとして元クラス担任の西原亜子被告(48)が業務上過失致死罪に問われていた。西原被告は禁錮1年、執行猶予3年の判決を言い渡されている。昨年の9月20日、千奈ちゃんの父親は集英社オンラインの取材に『まだ何の決着もついていない』と語っていた。

川崎幼稚園の職員全員が退職や廃園を願う旨を書くなか、増田元園長のみ、どこか他人事で幼稚な言葉を残している念書

「決着」にはふたつの意味があった

判決後の会見で千奈ちゃんの父親は「まず初めに実刑という言葉を聞いた時にホッとしたし、よかった。納得は出来る判決にはなった。ですけれど、叶うことなら両名、少し遡るなら書類送検された4人全員が実刑判決だったらと思うことはある」と語った。

昨年の9月20日、千奈ちゃんの父親が集英社オンラインのインタビューに涙ながらに語っていた『決着』にはふたつの意味があった。

ひとつは刑事裁判での判決だが、もうひとつは元園長が遺族の前でノートに記した川崎幼稚園を「廃園にする」という約束についてだ。しかし、「入園希望者がいる限り園を継続する」と園側は現在も廃園しておらず、父親は今後も廃園を求めていく考えを示している。あらためて当時の父親のインタビューをふり返る。

2022年9月5日、河本さんはベッドで眠る千奈ちゃんの寝顔を見て「行ってくるね」と声をかけ、朝7時30分ごろ出勤した。千奈ちゃんはふだんから寝相が悪く、この日も枕のほうに足を向けて逆さまに寝ていて、その微笑ましい様子が印象に残っているという。

「これが僕が千奈と接した最後でした。その後、8時ごろ妻が起きて朝食を食べさせています。その後、歯を磨かせ、顔を洗わせ、髪を三つ編みに結ってあげて幼稚園の送迎バスに送り出しています。

幼稚園が大好きだった千奈は送迎バスが到着すると、妻が持っていた幼稚園のバッグを自分から持ち、送迎バスに乗り込みました」

このあと、園に到着した送迎バスの降車確認などを元園長の増田被告が怠り、千奈ちゃんは高温の車内に約5時間にわたって置き去りにされ、搬送された病院で死亡した。

「救急車などに乗せる際に使うようなキャリーベッドって言うんですかね。そこに千奈は裸で寝かされていて、いたるところに管とかが繋がれていました。

前髪は汗で額にべったりくっついている状態で、朝に妻が結った三つ編みも濡れていました。目も焦点が定まってないように半分開いていて、口の周りには血の泡が固まったような状態でした。

僕も妻も取り乱して『千奈ちゃん、千奈ちゃん』と声をかけ続けていました」

「廃園にする」と交わした念書

事件直後、園側は遺族に「廃園にする」と約束し、念書も交わしていた。川崎幼稚園を「廃園にする」という念書を交わしたときのことについて河本さんはこう語っていた。

「事件から1日経って司法解剖から千奈は帰ってきました。体のいろいろなところに大きな絆創膏が貼られて切った痕を隠してあり、半分開いていた目も綺麗に閉じられていました。

司法解剖の前に警察から千奈ちゃんの帽子を用意してくださいと言われていたのですが、その理由もわかりました。頭を開けて脳を見たので、その痕を隠すために千奈は帽子をかぶっていました。

その日、千奈を前にして増田元園長を含めた関係者9人と話し合いをしました。この前の話し合いから僕たちは廃園を望んでいることを伝えていました。その上で『千奈を見てあなたたちどう思いますか? 千奈の顔を見て思うことを(ノートに)書いて下さい。書きたくないなら何も書かず帰ってくれてかまわないです』と僕は言いました。

担任とか副担任の方や乗務員の方などは涙を流して千奈を見ていましたが、あろうことか増田元園長は怖い物や汚い物でも触るように、千奈の肩を僕らに許可なく触ったんです」

当然だが、河本さんたちは激昂した。

増田元園長はその後も事件の当事者とは思えない発言や行動を繰り返したという。河本さんは9人にノートを手渡した。

8名の職員が『廃園を願います』や『園を辞めさせていただきます』とそれぞれの今後や責任の取り方をノートに記すなか、増田元園長は『苦しかったろうな あつかったろうな ごめんな 千奈ちゃん』という一文を残したという。

「本当に謝罪する気があるとは思えませんでした。『ふざけるな』と言うと、今度は『はいはい。わかりましたよ、書きますよ』と声を荒らげて書き殴るように『誠に申し訳ありません。廃園に致します』と記しました。もちろんこの念書に法的な効力がないことは僕もわかっています」

当時、河本さんにとっての『決着』とは何か尋ねるとこう答えていた。

「川崎幼稚園の運営は榛原学園が行っていますが、バスを運転していた増田立義元園長は榛原学園の元理事長です。事件後辞任しましたが、新たに榛原学園の理事長に就任したのは増田立義元園長の息子です。

結局、一族経営のままなんです。僕は一族経営を辞めさせること、そして川崎幼稚園を廃園にするか、他法人に引き渡すことを『決着』と考えています」

会見で、判決というひとつの『決着』について千奈ちゃんにどう報告するか問われた際、父親は「裁判がひとつ終わったよと。元園長は実刑になったよと。元担任も有罪判決、それでよかったとはいえない、ごめんなさいと謝ると思う」と話していた。

月日が経っても愛娘を失った遺族の心の傷が癒えることはない。廃園というもうひとつの『決着』については遺族と園側の溝は深まるばかりだ。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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