新宿“立ちんぼ”がまさかの組織化⁉「なに撮ってんだよ!」集団でカツアゲ、ホストへの追い込み、売値の談合=「立ちんぼカルテル」も。一方で界隈では性感染症も激増。「誰に梅毒うつされたかわからない」
集英社オンライン / 2024年7月8日 17時0分
“路上売春(通称・立ちんぼ)の聖地”として名の知れた場所となった、新宿・大久保公園周辺。今年4月には、過去の路上売春行為について逮捕状を取られた無職女性が、売春防止法違反(客待ち)の容疑で逮捕された。それを受けて、集英社オンラインでは「立ちんぼ大移動」や「観光客に買われる立ちんぼ」など、現況を複数回にわたって報じてきた。再びピーク時に戻りつつあるという大久保公園周辺の状況だが、そこから危惧される「ある問題」について、専門家たちは警鐘を鳴らしている。
〈画像大量〉取材に応じた梅毒に感染した女性、“聖地”新宿で路上売春する立ちんぼたちと群がる男たち
集会「立ちんぼカルテル」で金額を設定
大久保公園周辺の路上売春に関して、去年から今年にかけての動向を観察してきたあるライターは、次のように言う。
「昨年、立ちんぼが社会問題化し、警察による集中摘発が相次ぎました。それを受けて、今年1月〜2月は(大久保公園周辺は)毎日のようにガランとして、『ついに壊滅か』と思ったほどです。
しかし、3月〜4月になると再び増え始めました。そんな中、4月24日に現行犯逮捕ではなく、過去の行為で逮捕状を取られた女性が捕まったことで、立ちんぼたちが大移動して公園近くのホテル街に立つようになった。そして、6月ごろからはホテル街だけでなく、大久保公園周辺にも再び増え、去年のピーク時と同じ状態に戻りました」
吉原の高級ソープランドで働くAさん(28歳)は、立ちんぼが増えた理由について、次のように語る。
「最近の吉原では、稼げる店舗と稼げない店舗の二極化が進み、リピート客を掴めないと厳しい状態です。私の場合は“ロングコース”で単価の高いお店で働くほうが稼げるので、短時間で何人も相手しないと稼げない路上売春は割に合いません。
でも、大衆店や格安店で働く子はバック(給料)が60分9000円くらいなので、立ちんぼして60分で相場の1万5000円もらえるなら、そのほうが得だと考える。だから(ソープから)路上売春に切り替える子もいるって聞きますね」
また、毎日のように大久保公園周辺を歩いているというホストクラブのWebディレクター兼ライター・つちけん氏は、立ちんぼの“ある変化”について指摘する。
「彼女らは、かつては単独でポツポツと立っている印象でしたが、最近では横の繋がりができ始めたようです。
価格変動が起きないように金額を決める集会『立ちんぼカルテル』が行われるようになっただけでなく、なかには携帯電話で撮影していると思しき人間を集団で詰めたり、撮影しようとした者から金銭をせしめたりするケースもあるようです」
「誰のために身体を売っていると思ってんだよ!」
さらに、つちけん氏の後輩のホストは、こんなトラブルにも見舞われたという。
「後輩ホストの姫(女性客)が立ちんぼだったようで、その子が梅毒に感染したんです。それを知った後輩がどうしてもその姫を抱けずにいたら、立ちんぼの集団に『誰のために身体を売っていると思ってんだよ!』と詰められたそうです」
梅毒といえば現在、爆発的に感染者数が増えている性感染症だ。国立感染症研究所の報告(感染症発生動向調査週報 2024年第24週)によれば、2024年6月10日〜16日の1週間だけで、梅毒の感染者報告数は全国で190例。今年1月からの累積報告数は6,183例だという。
新宿駅東口近くにある泌尿器科「マイシティクリニック」の平澤精一総院長は、昨今の梅毒感染拡大について、次のように解説する。
「当院でも梅毒と性器の周りに尖ったイボができる『尖形コンジローマ』の患者が多く、梅毒は月に新規で5名ほどいらっしゃる状況で再感染例も多く見受けられます。
出会いの形がSNSや(マッチング)アプリなどに変わり、不特定多数の方との関わり合いを持つようになったこともあり、風俗で働いている方だけではなく、いろんなところで感染拡大が広がり、日本性感染症学会では梅毒はパンデミック化しているという見方もあるほど身近な感染症になっています。
女性は20代、男性は20代~30代に特に多いですが、中高年層にも幅広く見られます。これについては、風俗利用など、パートナーではない不特定多数との性行為が大きな要因だと言えます」
いったい、立ちんぼたちは1日に何人の男性客と性交渉をするのだろうか。かつて男性客から梅毒をうつされてしまったことがあるという立ちんぼのBさん(20歳)は、次のように話す。
「そのときは1日6人近く相手して稼いだお金を全部メンズ地下アイドルに使っていました。梅毒に感染したのは去年10月頃ですが誰からうつされたかは、正直わかりません。
でも、デリケートゾーンの痛みが続き、病院でヘルペスと言われたものの治らずに無理して立ちんぼは続けていたら、そのうち手に赤い点々が出てきたので別の病院に行ったところ第2期梅毒だと診断されました」
専門医は「HIV感染の拡大」を危惧
誰からうつされたかわからない––––––非常に恐ろしいケースだが、性感染症専門クリニックである「銀座ヒカリクリニック」の剣木憲文院長は、「女性の風俗従事者に性感染症が多い」と説明する。
「当院には20代から70代まで、さまざまな患者さんがいらっしゃいますが、その半分近くが風俗従事者と、その利用者です。それ以外は、マッチングアプリやSNSで出会った相手と性交渉をしてうつった、といったケースが多いです。
症例として特に多いのは、やはり梅毒ですね。次いで『尖圭コンジローマ』や『性器ヘルペス』にかかる方も多いです。また、それらが併発してしまった方などもいらっしゃいます。
女性の風俗従事者は不特定多数の男性を相手にするので、『誰からうつされたかわからない』という方は多いですね」
冒頭で触れたように、大久保公園周辺で行われる路上売春は現在、昨年のピーク時と同等の水準まで戻ってきている。また、先日報じたように、立ちんぼが外国人観光客に買われるケースも増えているという。
こうした現状に対して、剣木院長は次のように危惧する。
「私が危惧しているのは、かつての梅毒のようにHIV(ヒト免疫不全ウイルス)が蔓延してしまうケースです。今後さらに外国人観光客が増えて、その中にHIV陽性者がいたとして、コンドームなどを使用せずに性交渉をする機会が増えれば、当然ながらHIV感染の確率は高まります」
剣木先生は性感染症に関して「誰もが“うつされた”と思い込むが、自分が“うつす”可能性もある。そうならないために、日頃から一人一人が性病検査への意識を高めることが大事だ」と指摘する。
前出の平澤精一総院長によれば「行政からも新宿に集まる家出少女らへの診察の補助を検討する声が上がっている」という。警察による取締強化を願いつつ、性感染症拡大は対岸の火事ではないことを心に留めておきたい。
※「集英社オンライン」では、路上売春のトラブルについて、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。
メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com
X(Twitter)
@shuon_news
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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