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会話で大事なのは「テンポ」…相手との距離を深められる人とそうでない人の決定的な差

集英社オンライン / 2024年7月13日 8時0分

「とっておきを1つ」話すよりも「3つ」用意して伝える…相手との距離感が縮まる話し方のコツ〉から続く

「この人、話しやすいなぁ」あるいは逆に「この人、話しにくいなぁ」と思うことはないだろうか。これには会話のテンポが左右していることがある。

話のテンポが重要な職業といえば!

明治大学教授の齋藤孝さんが40年にわたって続けてきたコミュニケーション講義のエッセンスを紹介した『「考えすぎて言葉が出ない」がなくなる』より一部抜粋、再構成してお届けする。

状況に応じてテンポを使い分けよう

相手との関係を深めるには、相手のテンポに合わせてあげることも大事です。

ただし、まだそこまで仲がよい相手ではない場合、今の時代は、少しテンションを上げた状態のほうが、コミュニケーションをとりやすいような空気があります。

ユーチューブを観ると、それがよくわかります。ユーチューバーは、テンポよく話すことで、視聴する側を引きつけようとしています。

私もユーチューブをよく観るのですが、彼らの速い口調に影響されてか、どんどんせっかちになって、再生速度を1.25倍、1.5倍、1.75倍と上げて視聴するようになりました。今はついに、2倍で視聴するようになっています。

テレビの生放送でも、3秒の間(ま)が空くと「どうした、このスタジオは!」という状態になります。2秒でも違和感がありますし、私は1秒でも遅い感じがすることがあります。出演している側も瞬時に言葉を選ばなければならず大変です。

今は見ている人の情報処理の能力が高くなり、ゆったりした会話が耐えられなくなってきているのではないかという気がします。

授業でも、「内容が濃い」「勉強になる」というコンテンツより、「先生の話すテンポがよい」ことが、授業のうまさにつながっています。

話すテンポだけでなく、テキパキとした展開も学生には好評です。

「じゃあ次、ストップウォッチで計るから、一人15秒ね」「考える時間は30秒ね」「じゃあ次行きます、はい」と、どんどんテンポよく展開して、学生を飽きさせないようにする。そうでないと、授業を聴いてくれません。私は教えることのプロとして、100分なら100分の間中、学生が片時も気を抜けないようにします。

すると、彼らはどう感じるか。「疲れた」というよりも「あっという間だった」という感想を言ってきます。テンポがいいと、たとえ100分でも「こんなに短く感じたのは初めてだ」と感じさせることができるのです。

普段の会話で求められるテンポとは?

今の社会はSNSを筆頭に、さほど関係が濃くない人とも大量のコミュニケーションをとることが日常となっています。

そこでは、会話の深さよりも、テンポに乗っていくことが求められます。

私の授業の例からも、実は会話というものは、その「意味」よりも「テンポ」が果たす役割が大きいことがわかります。何を話すか、ではなく、テンポよく話すこと。

複数の人とポンポンとテンポよく話を回して成立させるという面では、現代の会話は山手線ゲームに似ています。中身よりも、リズムを維持することが最優先になっているのです。

しかし、相手とゆったりとした時間の中で話をすることは、感情をやりとりするうえでは、よいことです。

本来の会話のあり方としては、双方がじっくりと考え、内容のあるやりとりをするのが正道です。私自身、会話は深いほうがよいと考えていますので、相手に考える時間が必要であればそれを待ちます。

言葉が出る。さらに考える。相手に返す。そんなゆっくりした会話ができる間柄こそが、本当の信頼関係だと思っています。

もしそんなテンポで会話ができる相手がいたら、それは貴重なことです。

大事に深めていくとよいと思います。

自分のスタイルを見つけて話そう

話し上手な人がいて、聞き上手な人がいる。そんなふうに、得意なコミュニケーションのスタイルは、人それぞれです。

たとえば、戦場カメラマンの渡部陽一さんは、とてもゆっくり話します。彼はもともと話すスピードはここまでゆっくりではなかったそうです。しかし言葉が通じない地域に行ったとき、正確に、ゆっくりと、わかりやすく伝えることを心がけていた結果、現在のスピードになったそうです。

今はそれが渡部さんのスタイルとして認識されています。

先ほどお話ししたように、今の社会は、会話のスピードがどんどん速くなってきています。

しかし親しい間柄であったり、2~3人の少人数であれば、たとえ話しぶりが流暢でなくても、自分のスタイルを変えずに会話をすることができます。

一例を挙げると、合理的に話したがるタイプの人は、すべてを論理的に説明しようとしすぎて堅苦しい言い方になることがあります。

でも、それが自分のスタイルだと相手に理解してもらえていれば、「頭が固くて小難しい理屈を言う、冷たい人」などと思われることなく、「そうはいっても、ちゃんと仕事をする人だから」と評価されます。

初対面で「この人、無口だな」と思われても、だんだんと慣れてくると「ああ、単に無口なのではなくて、無駄なことを言わない人なんだ」とわかってもらえます。話すことがあればちゃんと話す人なんだな、と、相手に理解してもらえる段階が必要なのです。

場のテンポに合わせる

それぞれの人に、生き方のスタイルがあるように、話し方にもスタイルがあります。

自分自身のスタイルは保ちながらも、必要に応じて速いテンポでも話せるようにしておく。お互いゆっくりと、深い話ができる相手がいれば、自分のスタイルで話す。こんなふうな切り替えができるとよいと思います。

長く友だちでいるには、スタイルが合う人を見つけることも大事です。

「この人とはしっくりくる」という人を見つけたら、その関係を大事にしましょう。

なお、速いテンポに合わせるのが苦手な方は、食事をしながら人間関係を深める、という方法もあります。

食事をしながらの会話は、食べる時間が必要ですから、ずっと話を続けなくてもかまいません。会話のテンポは少しゆっくりになります。

お酒が入ると、さらにテンポは変わります。特にお酒の場は、関係を親しいものに変える場でもあります。

その場の会話のテンポをつかみ、それに合わせることで、苦手意識も取り去ることができます。


写真/shutterstock

「考えすぎて言葉が出ない」がなくなる(サンマーク出版)

齋藤孝
「考えすぎて言葉が出ない」がなくなる(サンマーク出版)
2024/6/26
1,650円(税込)
256ページ
ISBN: 978-4763141187

自然と人間関係が自由自在になる「話し方」の極意

「こんなことを言うと、どう受け取られるだろう」「これを質問したら、引かれるかな?」「こんな話をして、嫌われたかもしれない」「すぐに言葉が返せなかったけれど、ノリの悪い人だと思われているだろうな」「へんなことを言っちゃった気がする——。どうしよう」

人間関係は、考えすぎると疲れますね。すると会話も億劫になります。しかし、多くの「こんなこと言って嫌われたかも……」は、思い過ごしであることも多いです。さらにいえば、思い過ごしで会話が億劫にならないための「コツ」があるのです。

●齋藤孝先生の100%効果がある伝説の講義のエッセンスを書籍化!
本書では、40年にわたって続けられた齋藤孝先生のコミュニケーションの講義のエッセンスを紹介! 学校の先生やプロのアナウンサーになった方も受けられたその内容は、100%効果があるといわれています。上手に人間関係をつくれるようになりたい、コミュニケーションで悩まないようにしたい方のための、仕事や生活、婚活まで、様々なところで活用できる内容です。

【目次より】
第1章 
コミュニケーションの悩みは思い過ごし
ぐいぐいコミュニケーションしてくる人になりたいですか?
なぜ、他人と話すと疲れるの?
ビジネスでも「仕事以外」の話が必要な理由
「話が苦手」は性格の問題ではありません など

第2章 
初対面でも話が続く人、途切れる人
「休日は何をしているんですか?」と聞かれたら、どちらが話が続く?
会話で「知らない」は暴力です
忙しくても人間関係をつくれる「10秒雑談」 など

第3章 
また会いたいと思ってくれる人の「聞く技術」
人間関係をつくるのに「話し上手」である必要はあるか?
面白い話は「会話」ではなく「リアクション」で成り立つ
「すごいインタビュアー」を自分に降ろしてくると、質問がしやすくなる など

第4章 
相手と距離を縮める話し方
「中距離」の人間関係が人生を豊かにする
人間関係が続くかどうかは、勇気のある人がいたかどうか
「次の機会」をつくれる人の情報交換 など

第5章 
広い人間関係をつくる
知り合いは多いほうがいいですか?
最初に声をかけるときは「あいまい」がいい
せっかく会ったのに、人の顔と名前が覚えられない…… など

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