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<新党結成は?>15分間の街宣活動から見えた「石丸マジック」の正体――熱狂はいかに作られたのか

集英社オンライン / 2024年7月10日 18時0分

「当選していたら東京でもとんでもないことしていたよ」石丸伸二氏の躍進を安芸高田の市議たちはどう見たか?「独裁、パワハラ… 彼は安芸高田をガタガタにした」「後継者が落選したのが民意」〉から続く

さきの東京都知事選。立候補した当初は陣営も「50~60万票取れれば御の字」と考えていたそうだが、あれよあれよと支持が広がり、終わってみれば2位の蓮舫氏に大差をつけて165万票も獲得した石丸伸二氏。だが、その一方で関係者からは「早くもメッキがはがれつつある」との声も。はたしてこの“熱狂”はいつまで続くのか?

〈画像で振り返るカオスすぎた都知事選〉“ほぼ全裸”のポスターを貼る元アイドルに脱いだ候補者、ビリビリ破かれたポスター、「ヘイ、ヘイ」と街宣車で回るつばさの党など

立候補当初は関係者の間では泡沫候補扱いだったのが…

7月7日に投開票が行われた東京都知事選挙は、291万票を獲得した小池百合子候補の圧勝に終わった。学歴詐称疑惑や神宮外苑再開発問題等、都知事選を前に反小池の嵐が吹き荒れていたにもかかわらず、である。

しかし、子育て支援政策等への支持は厚かったようで、知事が交代して廃止・縮小されてしまったらたまったものではない、という認識が現職支持につながったのだろう。

一方で、選挙では「改革」や「変える」といった主張やスローガンを前面に出して、支持の獲得やを狙う候補者は必ず出てくるし、程度の差こそあれ、ほとんどの候補者がそうであると言ってもいいだろう。

今回再選された小池候補も「東京大改革」を掲げ、変化や前進の意味を込めたであろう「もっと!」を個別の政策の見出しに付けている。ただ、小池候補の場合は、「変える」といっても現職なので、他の候補とはその趣旨が異なるが。

さて、今回の都知事選の候補者の中で、「何か変えてくれる」、「変えてくれそう」として期待や支持を集めたのが、今回165万票を得て2位につけた石丸伸二氏である。

広島県安芸高田市の前市長時代、市議会と何度も衝突したが、それを上手に切り取ったショート動画が人気を博し、メディアでも注目されるようになっていた。

市長については再選の見込みはないと考えたのか、不出馬を表明、そして東京都知事選への出馬となった。

そもそもなぜ東京都知事選なのか?と大いに疑問であったが、今回の都知事選が候補者56人と過去最多となり、かつ泡沫というより売名行為候補やビジネス候補と思しき候補者が多数いたことを考えると、その中の一人ぐらいだと思っていた。実際、立候補当初は関係者の間では泡沫候補扱いであった。

ところが、日を追うごとに支持を拡大していった。今回の都知事選は実質的には小池候補対蓮舫候補の戦いと見られていたが、なんとその蓮舫候補まで追い抜くに至った。

その背景にはSNSやYouTubeでの動画配信を上手に活用したことがあるとされるが、それらは他の候補も活用していたし、その上手下手はあるとしても、それだけでは理由になるまい。

やはり安芸高田市長時代からの動画、それもショート動画の視聴者、はっきり言えばファンが多数、都の内外(外と言っても近隣の地域)におり、彼らがSNS等での発信を盛り上げ、拡散していったこともあるのではないか。

この辺りの詳細な分析はネット、SNSの活用を専門にする方々にお任せするとして、筆者は実際の街頭活動に着目しながらその理由を考えたい。

「ウォー」や「オー」といった熱狂する声ばかり

石丸候補の街頭活動は、数は多いが毎回15分が基本。選挙戦の街頭活動、特に多くの聴衆が集まる街頭活動の場合は、関係地方議員や団体関係者らの短い演説から始まって、大物応援弁士らの応援演説、そして最後に候補者本人からの訴えというのが基本的な構成であり、ざっと1時間はかかる。

その間ずっと聴いているのは動員された党員や関係者、または熱い支持者、取材するメディア関係者、そして私のように情勢把握をしたい人ぐらいである。

もちろん大物や有名人が来るのであれば、それを待つ聴衆が溢れかえるということもあるが、聴衆もゲンキンなもので、その大物や有名人の演説が終わればパラパラと帰ってしまう。

特に今の若者などはそんな演説を長々聴いている時間もないし忍耐力もない。そうなると、短い演説を何回もやった方がそうした有権者には訴求できる。

では何を訴えるのか?

実際、通常の街頭演説でも候補者本人がしゃべる時間は15分ほどであるから、その時間で政策や主義主張を訴えることは十分可能である。しかし、街頭演説は前座から入ってトリに至るように、起承転結というか盛り上がる流れを作っている。

15分間候補者本人が演説して終わりでは、動員なしの駅頭や交差点等での演説と同じであるから、盛り上げるのはなかなか難しい。

しかし、筆者が実際に見た石丸候補の街頭演説は非常に盛り上がっていた。

では、その内容はと言えば、ある街頭演説では、自己紹介から入り、時折まるで芸能人かミュージシャンかのように右手を高く突き上げて聴衆の歓声を誘い、自分は銀行でアナリストをやっていた、だから経済の専門家である、経済の専門家が都知事になれば東京の経済は活性化する、自分はYouTubeを使って安芸高田市議会への注目を集めたから東京都議会でも同じことをやる、この場に来ている聴衆は皆仲間である、選挙を最後まで楽しみ切ろう…といった話。

端的に言って政策の話は全くなかったに等しいし、東京都知事になって何をやりたいのか、今、東京都はどのような課題を抱えていてそれをどのように解決していこうと考えているのかといった、通常の街頭演説であればして当然の内容は聞こえてはこなかった。

これでどうやったら支持が集まるのだろうか?筆者が気づいたのは、聴衆の熱狂であった。政策を訴える街頭演説であれば、「そうだ!」とか「そのとおり!」といった声援が聞こえてくるが、政策的主張がないので「こうした声」が聞こえてくるわけもなく、「ウォー」や「オー」といった熱狂する声ばかり。都知事選ということを考えなければ、まさに芸能人かミュージシャンのライヴにでも来たかのようであった。

東京維新の会の一部と合流して“新党”設立の話も…

石丸候補の街頭活動から見えてきたのは、熱狂を与える街頭活動と、それを短時間で繰り返し行うことで、聴衆を熱狂に巻き込んでいく手法だ。

そして聴衆、街頭日程を確認してやってくるのだからもう聴衆というより熱狂的な支持者と言っていいだろうが、彼らはその熱狂を求め、さらに繰り返し求めるようになる。そしてその組合わせが石丸候補を2位に押し上げた大きな原動力になったのではないかということである。

別の言い方をすれば、「政策を理解し、咀嚼できなくてもいい。ただ熱狂し、何か起きるかもしれない、変わるかもしれないと期待させる」という石丸候補の戦略と、ファンのたちの「期待させてくれることを喜ぶ態度」の組合わせということであろうか。

それで都政を担えるわけがないと筆者などは思ってしまうわけであるが、聞くところによると、石丸候補、なんと新党を準備しているらしい。それも、日本維新の会の東京の支部都連に当たる東京維新の会の一部と合流して設立するとの話も聞こえてくる。

そもそも石丸候補側から日本維新の会に応援の打診があったものの、推薦なしの応援だけというのは困難であるとして御破算となり、党本部としては都知事選は静観としていた。

一方、東京維新の会の柳ヶ瀬裕文代表及び音喜多駿幹事長が独自に石丸候補に推薦の打診をしたところ断られて激怒、党としての決定以上に東京維新の会としての引き締めを強化したにもかかわらず、応援したい東京維新の会の一部が勝手連で応援したのが始まりのようである。

一方で、予想外の2位につけたことで大手メディアの注目を一気に集めるに至ったが、投開票日当日から、中継インタビューにまともに答えないどころか、上から目線ではぐらかしたりイラついたりと、そのある種の「本性」が全国に知れ渡るや、筆者の見る限り「石丸バッシング」の流れができはじたようにも思える。

このことを踏まえて、「石丸候補は蓮舫候補の票を削るために立てられた候補で、目的が達成されればあとは用済みなのだ」とする見解もSNSでは散見される。初めは「石丸信者」であったが、選挙戦の途中で気づいて「信者」を辞めたとする元支持者も、SNS上ではチラホラ見かける。

前者などは推測の域を出ないし、実際のところは不明であるが、少なくともこれまでの石丸旋風が続くことはないのではないか。石丸氏本人は何か公職に就いているわけでもないので、かつての小池劇場のようなことを仕掛けることもできない。石丸氏の不遜な態度のショート動画もすでにネットで拡散され、安芸高田市長時代の実態も別の形で明らかにされつつある。

ただ、熱狂というある種の麻薬のようなものを上手に使うことで今回のような現象が起こせるということは、一つの教訓として肝に銘じておくべきではないだろうか。

※「集英社オンライン」では、今回の記事に関連した情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。

メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

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@shuon_news  

取材・文 室伏謙一
集英社オンラインニュース班

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