小学校「暑すぎてプール中止」だけじゃない酷暑対策…休み時間の外遊び制限、体育の授業は振替、登下校時は日傘、ネッククーラー、水筒を持参
集英社オンライン / 2024年7月15日 10時0分
記録的な猛暑となっている今年の夏。7月上旬には「暑すぎて学校のプール中止」という矛盾のようにも感じられる言葉がSNSで話題となり、世間を騒がせた。災害級の暑さに学校関係者はこれまでにない対策に追われているようだ。
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「暑すぎてプール中止」になった原因とは
「寒すぎてプール中止」ならわかるが、「暑すぎてプール中止」とはいったいどういうことか。
暑い夏の学校内で唯一の涼がとれる授業であることから、子どもたちの間で人気のプール活動。
しかし昨今は熱中症警戒アラートに基づいて、学校が屋外での活動の有無を決めるようになっているため、いくら水の中に入るプールの授業といえど、一定以上の気温を超えると中止になるというのだ。
またそもそも、水の中に入っているからといって熱中症にならないわけではない。環境省・文部科学省の熱中症予防情報サイトで、今年4月に公開された「学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き(案)」を見てみると、〈プールサイドが高温になりがちなことや水中においても発汗・脱水があることに留意し、他の体育活動時と同様に熱中症予防の観点をもった対応が求められます〉と記されている。
プールの中にいると涼しいと感じて、喉の渇きにも気づきにくくなるため、より脱水症状に注意をしなければいけないのだ。
科学的に様々な根拠があっての「暑すぎてプール中止」。理屈はわかるが、それでもSNS上では複雑な声が多くあがっている。
〈熱中症を避けるには仕方がないのかも知れんが暑すぎてプール中止はかわいそうだね〉
〈こんな暑いのに子どもたちのプール中止するとか……やりたいやろうになんかかわいそう〉
〈水泳って子どものうちになるべくやっとかないと、大人になってからはよっぽど自発的に取り組まなきゃ泳ぐ機会なんてそうそうないよねぇ。ただでさえ回数が少ない授業だろうに〉
〈あーあ…息子のクラス今日のプール中止だって。かわいそう…〉
〈体育といえば水泳しかできるものがなかったからプール中止でーす!! とかなったら私なら絶望するな〉
この件について、愛知県の30代男性・小学校教師に詳しく話を聞いた。
プール中止の影響か? 子どもたちの水泳能力の低下
「現在うちの学校では熱中症対策のためのプール中止策のほか、授業見学者はプールサイドで座っているのではなく、教室か職員室、または校長室など、涼しいところで自習してもらうようになりました。
基本は教員が監督している中で自習をしています。ただ、人手が足りていない学校も多いのでその場合はおそらく、子どもだけで自習してもらうようになっているでしょう。
こういった対応は今年からだと思います。あとは、水泳の授業でラッシュガードを着るのが当たり前になってきたり、プールサイドに水筒を持参してもらったりなど。我々が小学生だった頃とはまったく違った対応をとっているなぁと、自分自身で指導しながら感じています」(30代・小学校教師、以下同)
確かにわずか20年ほど前の小学校では、遠足や運動会など特別なときを除いては水筒の持参はNG。夏は喉が乾いたら、生温くて鉄の味がする水道水をがぶ飲みしていたものだ。
また、相次ぐプール中止によって懸念される、子どもたちの水泳能力の低下だが、やはり教師たちも感じているようだ。
「水泳の授業は暑さ対策もそうですが、子どもの中でもスキルの差が大きすぎるのが難しいところですね。5年生でも顔つけができない子もいるくらいで、とても教員1人では指導しきれないし、安全の確保も困難です。
特に3、4年生あたりだと、教師が手を引いてバタ足だのクロールだのを練習させてる隣で、他の子どもたちを泳がせるため、接触の危険性が常にあります。プール中止による水泳能力の低下が原因なのかはわかりませんが、実際に泳げない子が少なくないことは確かです」
水泳の授業で教師は毎時間、気温、水温、塩素濃度を測り、参加人数、欠席人数、見学人数の記録をして異常がないのか監視。
授業が終わったら、忘れもの、プール内の落としものがないかチェックしながら、子どもたちがちゃんと体を拭けたか確認したうえで、次の授業の指示を出し、その後に自分の着替えをして急いで次の授業に向かわなければならない。
「プールの中に入ってる時間は結局、長くて25分くらいしかありませんね。そんな中で水泳の授業をして、暑すぎると中止にもなる。これではスキルが上がらなくて当然ですし、事故の可能性も高まりますよ」
日傘とネッククーラーで登校する子どもたち
教師にとっても想像以上に過酷だった水泳の授業。毎年、プールの水を出しっぱなしにした教師が、多額の損害賠償を請求されるというニュースが話題になるが、教師からすると、ここまでリスクしかない水泳の授業など、もはや廃止にしてほしいと思うことだろう。
実際、設備の老朽化などを理由に、全国の小・中学校で水泳の授業を廃止するところが増えている。
また、水泳の授業以外にも、教師は日々、この記録的な暑さの対策に追われているという。
「5年以上前から熱中症指数を測って、昼休みの外遊びを制限、屋外での体育の規制、行事の日程の変更などをしていますね。体育館で行う体育の授業では、大型扇風機を入れて、少しでも空気が入れ替わるようにしたり、こまめに水分補給をうながしたりしています。
また、気温が高い日は、ドッジボールやマットといった激しい運動をさせないようにして、あまりにも暑い日は、保健の授業に代えることもしています。
登下校のときは、ネッククーラーや日傘の許可をしていますし、あとはスポーツドリンク、凍らせたペットボトルもOK。学校には塩分チャージのタブレットを常備してますね。日によっては1時間ごと熱中症指数を計って、昼休みに必要に応じて放送を入れるなどしています」
ただでさえ、過労が問題視されている小学校教師たちを悩ます酷暑対策。夏休みの期間を長くするなど、根本的な改革が必要になってくるかもしれない。
取材・文/集英社オンライン編集部
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