〈紅麹・死亡調査対象は100人〉増え続ける死亡報告は「過去最悪レベル」グダグダの調査報告に厚労相は「もう任せてられない」健康被害を訴えた消費者は「購入履歴がホームページで確認できない」
集英社オンライン / 2024年7月13日 8時0分
〈〈紅麹・5人死亡〉「社長の会見後も定期購入のサプリが郵送されてきた」「返金はQUOカードで」「通販購入者への注意メールは2日遅れ」に被害者たちから怒りの声、続々。小林製薬の回答は…〉から続く
小林製薬のサプリメント「紅麹コレステヘルプ」の摂取が原因で死亡した可能性がある人が100人にも上り、過去最悪レベルの食品健康被害事件になる恐れが出てきた。通信販売でこのサプリを定期購入していた消費者によれば、同社のホームページに開設できるマイページではこのサプリだけ購入履歴が確認できなくなっており、自分の摂取実態も把握できず、不安を感じているという。
〈画像〉“日本のビバリーヒルズ”と呼ばれる芦屋にある“小林家”の超高級住宅と、健康被害発覚後も利用者に届いた“紅麹”の束
「工場の衛生管理がなっておらず、毒性のある異物の混入により…」
小林製薬は、問題のサプリを飲んだ後に腎疾患で入院した人が出たとの報告を今年1月15日に最初に医師から聞いた。
さらに2月27日までに6人が入院したことを確認しながら、問題発生を公表して使用中止を呼び掛けたのは3月22日になってからだった。
「発表までの2か月の間にも摂取を続け重症化した人がいた可能性があり、会社の対応は発覚直後から強い批判を浴びました」(社会部記者)
3月29日に記者会見した小林章浩社長は、発表が遅れに遅れた原因について「(対処する上で)一番大事なのは因果関係。(健康被害の件数が)4、5件あったが(サプリとの)因果関係はわからなかった」と説明。
製品と健康被害との因果関係が把握できれば製品を回収するガイドラインがあると言いながら、3月18日に回収を決断するまで「今回のケースはこのガイドラインにあたらなかった」と繰り返し、消費者の健康よりも会社の都合を優先して発表時期を計っていたことをうかがわせた。
こうした態度も「原因が特定できなくとも、問題が起きればまず公表し使用中止を呼び掛けるのが当然だ」(東京都内の医師)と医療界から強い非難を浴びている。
「この会見の時点で、紅麹コレステヘルプや原料から青カビの天然化合物である『プベルル酸』が検出されていました。
当時はプベルル酸が有毒かどうかはっきり分かっていませんでしたが、その後、厚労省はこれが腎障害を引き起こすことを確認しました。
一方、プベルル酸は紅麹から生まれることは考えにくい物質です。しかし厚労省が同社の製造ラインの付着物を川崎市の国立医薬品食品衛生研究所で分析した結果、大阪や和歌山工場の培養室や培養タンク内の付着物からは青カビが検出され、この青カビを培養するとプベルル酸が生成されました。
工場の衛生管理がなっておらず、毒性のある異物の混入により健康被害が生じた可能性が高くなっています」(社会部記者)
厚労相は「もう小林製薬だけに任せておくわけにはいかない」
こうした原因は少しずつ明らかになってきていたが、健康被害の規模が爆発的に拡大していることは公表されていなかった。
「またしても小林製薬の態度が原因ですが、厚労省も信じがたい失態です。同社は3月29日に、摂取との因果関係が疑われる死者は『5人』と発表していましたが、その後も死者に関する報告が増え続けたのに厚労省に報告せず、厚労省は6月中旬までこの異常な態度に気づきませんでした」(社会部記者)
結局、6月中旬に厚労省が問い合わせたのに対し、小林製薬は6月27日になって「新たに170人の死亡者の遺族から相談があり、うち76人について因果関係を調べている」と厚労省に報告したというのだ。
「小林製薬は逐次報告しなかった理由を『腎疾患と診断された事例のみを報告対象としていた』からだと釈明しました。厚労省はこれに怒り『医師の診断で健康被害が疑われる事例』をすべて報告するよう要求。
小林製薬がこれだけの規模の疑い例を報告してこなかったのは、最初の公表を2か月以上遅らせたのと同根の、被害の矮小化、隠蔽工作と受け取られても仕方ないでしょう。
さらに、そんな状況3か月間、見過ごしてきた厚労省も何をやっているのか。武見敬三厚労相は『もう小林製薬だけに任せておくわけにはいかない』と拳を振り上げていますが、失態を隠すためのパフォーマンスでしょうね」(社会部記者)
その後も死亡報告は増え続け、7月11日の厚労省の発表では、10日時点で同社に相談が寄せられた死亡事例は249人で、ここからサプリの摂取が確認されなかった146人と確認中の3人を除く100人が詳細な調査の対象となっている。
医療機関を受診した、生存している摂取者の数も2000人を超えている。
「戦後、大変な被害をもたらした食品健康被害事件としては、1955年ごろから起きた『森永ヒ素ミルク中毒事件』があります。ヒ素が混入した粉ミルクを飲んだ乳幼児、約130人以上が死亡し、被害を受けた子は1万2000人を超えたとみられています。
今回、因果関係が疑われる死者の規模は、ヒ素ミルク事件の被害者数に迫っています」(社会部デスク)
「購入履歴を復元してください」と小林製薬に求めても…
さらに小林製薬の対処を巡っては、このサプリを飲んでしまった人も強い不信感を抱いている。約2年半以上、通信販売の定期購入で紅麴コレステヘルプを飲み続けてきた50代の女性Yさんが話す。
「私は2月上旬にめまいと嘔吐がひどくなり出社できない時もありました。尿の色が茶色になって異変を感じていて、3月上旬に健康診断を受けたのを機に摂取を控えていたのですが、3月下旬に会社の発表がありました。
めまいが残り、疲れやすくなったという自覚症状があります。また私がこのサプリを勧めた友人の腎機能が低下し心配しています」
そこでYさんは、正確にいつから問題のアプリを飲みはじめていたのか、病院で診断を受けるにあたってできるだけのデータを準備しようとしたという。ところが…
「通信販売での購入者は、小林製薬のホームページから自分の購入履歴を確認できるマイページを持っているのですが、今回そこから購入記録を確認しようとしたところ、紅麹コレステヘルプの購入履歴だけごっそりないんです」
Yさんはメールで小林製薬に対し「購入履歴を復元してください」と求めたが、同社はメールでYさんの購入履歴として、購入開始時期や購入された製品のロット番号を知らせ、「回収対象のロット番号の製品はYさんには販売していない」と復元には応じなかった。
これに対してYさんは「会社の対応には疑問だらけです」と憤り、被害が出たという発表が遅れた同社の初期対応にも「多分まだ隠していることあるのではと思えてくる」と疑問を投げかける。
この点について小林製薬にたずねたところ、
「『紅麹コレステヘルプ』」の購入履歴のみを閲覧できないようにする措置をとっている事実はございません。弊社の定期購入をご利用いただいているお客様のマイページには定期購入中の商品が表示されますが、定期購入を中止した場合にはマイページから削除される仕様となっております。
『紅麹コレステヘルプ』を定期購入されていたお客様に関しては、弊社にて定期購入を全て中止させていただきましたため、マイページから削除されております。一方で、購入履歴の情報は弊社側で引き続き管理しており、お客様から購入履歴に関するお問い合わせいただいた場合には、お手紙やメールにて購入履歴の詳細を送るなど、随時ご回答差し上げております」
と回答。マイページでは見られないがデータは提供している、と説明している。
また、3月下旬以降、関連が疑われる死者数が増え続けたのに逐一厚労省に報告しなかった判断への認識をたずねると、
「当初は速報性を重視し、申告内容のみに基づいて行政当局に報告をしておりましたが、行政当局との協議も踏まえ、関連性が遠いと思われる事例に関する報告などもあったことから、より詳細な確認を重視することとし、即時の報告は実施しておりませんでした。ご指摘は真摯に受け止め、今後、皆様からの信頼回復に努めてまいります。
今回、ご報告した経緯としては、リリースに記載のとおり、紅麹関連製品と死亡の関連性の調査・認定が当初想定していた以上に困難を極めており、現時点においても死者数を具体的かつ確定的に特定することができない状況であったため、公表のあり方を見直し、ご報告させていただきました」
と説明した。
♯6でも報じたが、同社の消費者への対応を巡っては、3月22日に記者会見で問題を公表した後も通信販売で定期購入していた人への個別の連絡が遅れた上、会見の数日後になってもサプリの配達が続いたため、記者会見のニュースを知らなかった人の中にはその後も飲み続けた人がいたことがわかっている。
発覚当初から後手に回った対応が目立った事件は、食品健康被害問題で犠牲者が過去最大規模になりかねない恐れも出てきた。
会社の対応によって被害が拡大しなかったか、また、実態把握が遅かったのではないかといった点も今後検証が求められることになりそうだ。
※「集英社オンライン」では、今回の「紅麹」をめぐる健康被害について情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。
メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com
X(Twitter)
@shuon_news
取材・文 集英社オンラインニュース班
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