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ローソンついに非上場化…共同経営体制に移行する三菱商事・KDDIの狙いとその行先は?

集英社オンライン / 2024年7月17日 8時0分

創業100周年の老舗「洋菓子のヒロタ」に2度目の経営危機…債務超過転落と手持ちの現金が1億円を下回る非常事態に〉から続く

7月24日にコンビニエンスストア御三家の一つ、ローソンが上場廃止となる。KDDIによるTOB(=株式公開買い付け)が成立したためだ。ローソンは三菱商事とKDDIが50%ずつ出資する共同経営の形をとって再出発する。KDDIは今回の株式の取得に5000億円もの巨額の資金を投じているが、3社の狙いはどこにあるのだろうか。

【図を見る】ローソンの全店平均日販55万円に対して、セブンイレブンは?

資源の市況悪化でローソンを連結子会社化

ローソンの非上場化で一番メリットが大きそうなのが三菱商事だ。



三菱商事は、TOBによって2017年にローソンを連結子会社化した。その際、総額1440億円を投じ、出資比率を33.47%から50.11%に高めている。三菱商事は2016年3月期に1493億円もの純損失を出した。原油を中心とした資源市況の悪化により、関連資産の減損損失を計上したためだ。

アメリカは2014年に国内石油の余剰解消を目的とし、国内で産出された石油を輸出できるよう法改正を行った。当時、アメリカではシェールオイル開発が盛んで、余剰在庫が積み上がっていたのだ。

これにより、1バレル当たり100ドルを超えていた原油価格(WTI)は、40ドルを下回るまでに下落する。三菱商事のような資源への依存度が高い会社は大打撃を受けた。2015年2月期のローソンの純利益は326億円。連結子会社化することのメリットは大きかった。

しかし、その後のウクライナ危機やコロナ禍からの経済の回復で資源価格は高騰。三菱商事は2023年3月期に1兆1806億円の純利益を出した。2024年3月期は9640億円、2025年3月期は9500億円の純利益を予想するなど業績は絶好調だ。そこで、手持ちの資産の売却へと動いた。

三菱商事は中期経営計画において、ROE(=自己資本利益率)が二桁水準を維持することを目標に置いている。経営効率の悪い資産を整理の対象としたのだ。ケンタッキーフライドチキンを展開する日本KFCホールディングスは2023年3月期のROEが8.9%ということもあり、今年5月、投資ファンド・カーライルに売却されることが発表された。

しかし、ローソンの業績は堅調そのものだ。2023年2月期のROEは11.4%、2024年2月期は18.3%だった。2期連続で三菱商事を上回っている。

ただし、ローソンのROEが高いことにはあるカラクリが潜んでいる。

借金を巧みに活用してROEを高めたローソン 

ROEは自己資本利益率のことで、株主が出資した資金でどれだけの利益を出したのかを見る指標だ。純利益を自己資本(株主資本)で除し、パーセントで計算する。数字が大きいほど、資本を効率的に活用していることになる。投資家に好まれる指標だ。

実はこのROEには別の算出方法がある。デュポン分解と呼ばれるものだ。

ROEを純利益率、総資産回転率、財務レバレッジという3つの要素に分解する。それぞれを掛け合わせるとROEを求めることができる。要素の1つ目は利益率を高めること、2つ目は資産の効率を上げることを示しており、理解はしやすいはずだ。

3つの財務レバレッジが少々わかりづらい。これは総資産を自己資本で除したもの。借入金や社債などの他人資本をいかに効率的に活用しているかを見るものだ。数字が大きいほど、他人資本を上手く使っていることになる。

総資産500に対して自己資本100であれば、財務レバレッジは5。自己資本が250であれば2である。つまり、借入を多くすればROEを引き上げることができるのだ。ローソンの財務レバレッジは8.1と高い。三菱商事は2.6だ。2社の純利益率はほぼ同水準だが、三菱商事の総資産回転率は0.8でローソンが0.5。

今回の上場廃止によってローソンは三菱商事の連結から外れ、持分法適用会社となる。

これにより、三菱商事は総資産回転率やROA(総資産利益率)を引き上げる余地ができるというわけだ。ローソンを非連結とした後の2025年3月期のROEは10.5%と予想。前期とほとんど変わらない。会計上のメリットが際立つ結果となりそうだ。

三菱商事は2018年にコンビニ向けの弁当を製造するグルメデリカの株式をキユーピーから譲受。80%の株主となった。ローソンは中食商品がグルメデリカ、商品を三菱食品など三菱商事のグループ会社から仕入れている。共同経営という形をとる以上、この図式が崩れることもないだろう。

コンビニの無人化に着手していたKDDI

非上場化のカギを握るのがKDDIだ。5000億円という過去最大の投資であり、リスクを伴うものである。その一方で、狙いは不明確であるように見える。

KDDIは自社の商品やサービスをローソンで取り扱うことや、相互が持つ会員情報を連携してデータ基盤を整備すること、DX知見や技術の提供によるオペレーションの最適化などにシナジー効果を見出している。注目したいのはコンビニ無人化に向けた取り組みだ 

KDDIは2023年11月22日から2024年3月末まで、兵庫県淡路市のローソンにてリモート接客を試験的に行っていた。また、2022年には「auミニッツストア 渋谷店」をオープン。デリバリーアプリmenuから注文が入ると、ロボットが商品のピッキング、袋詰めまでを行い、完全自動でローソンの飲料やデザートなどを提供する試みを行っていた。

現在、コンビニオーナーが頭を悩ませている問題が人材不足だ。

経済産業省は2019年にコンビニのオーナーに対してアンケート調査を実施している(「オーナーアンケート調査」)。その中で「売上は5年前と比べてどのように変化していますか」との質問に「減少」の単語は1571回出てきた。その一方で、「従業員は十分な数を確保できていますか」との質問に「不足」は2827回出ている。オーナーが売上減よりも、人材不足に喘いでいる様子が伺える。

ローソンの全店平均日販は55万円、セブンイレブンが69万円だ。

大きな差が生じているが、三菱商事の傘下にあるローソンは仕入れの自由度が低い。そのような中で日販を高めるのは難易度が高いはずだ。

ローソンの株主構成、コンビニオーナー全般の悩み、そしてKDDIによる非上場化を鑑みると、今後は店舗の効率的な運営に力を入れるのではないか。

ローソンの経営陣は2024年4月11日に行われた決算説明会にて、創業50周年を迎える2025年にはテックを活用した実証実験用の店舗を出店したいと語っている。

省人化に向けた店舗オペレーションの構築こそ、KDDIの本領を発揮する領域だろう。ローソンの無人化でオーナーの負担を軽減し、他社と差別化を図ることができれば加盟店の増加にも期待ができる。

ローソン株の取得にはこれだけ巨額の資金を投じていることから、再上場も視野には入っているはずだ。コンビニ業界で深刻な経営課題となっている人材不足問題を解決し、企業価値を上げようとしているのではないだろうか。

KDDIには小売のノウハウがなく、経営は引き続き三菱商事主導で行われる可能性が高い。KDDIはデジタル領域で主導権を握るだろう。

将来的な企業価値向上に向けた投資を加速か

ローソンは非上場化によって株主に配慮することなく、経営改革を進められるメリットがある。

2024年2月期は前期のおよそ1.8倍となる521億円もの純利益を出した。コロナ禍以降、純利益率は年々上昇しているが、デジタルの導入によるオペレーションの簡略化、無人化に向けた設備投資は莫大なものになるはずだ。

将来的な企業価値向上を目的としたものであるとはいえ、一時的に利益率を下げるような取り組みに対して株主の理解を得るのは容易ではない。

セブン&アイ・ホールディングスのように、アクティビストに付け入る隙を見せれば、経営が混乱する事態も招きかねない。非上場化によってどんな変化が起こるのか注目したい。

取材・文/不破聡

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