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〈人を座らせないベンチ〉東京・新宿の“意地悪ベンチ”に批判続出! 一方、下町では真逆の試み…ベンチだらけの商店街を取材

集英社オンライン / 2024年7月18日 18時0分

あえて座りづらいデザインになっているとして、最近、物議を醸している“意地悪ベンチ”。先日には、座面に交通規制用のポールを固定した東京・新宿区のベンチ画像がSNSで拡散され、「さすがにやりすぎ」と大きな話題になった。その一方で、利用者思いの人情味溢れるベンチを置く商店街も存在している。

【画像】意地悪ベンチと、人情味あふれる商店街のベンチ

ポールがそびえ立つ“意地悪ベンチ”が物議

本来は休憩に使用されるはずが、あえて座り心地の悪いつくりになっている……。最近、こうした“意地悪ベンチ”と呼ばれるベンチが増加中だ。これは“排除アート”とも呼ばれ、中央に仕切りがあるタイプや、座面が反り返っているものなど、さまざまな手法で座る人を排除しようとしている。



7月中旬、この“究極系”ともいえるベンチ画像がSNSで拡散されたところ、大きな話題を集めた。画像のベンチは本来3人がけなのだが、うち2箇所に交通規制用のポールが設置され、1人しか座れないようになっている。

あからさまに座る人を拒絶するこのベンチには、〈こうまでして座らせたくないのか……〉〈排除アートどころかベンチとしての利便性すら損なっている〉〈ここまでやるなら撤去すれば〉など、ネット上で多くの否定的意見が寄せられた。

同ベンチが存在するのは、西武新宿線・都営大江戸線などが通る新宿区・中井駅近くの高架下広場だ。いったいなぜこのようなベンチが誕生したのか、現地へ足を運ぶと近隣住民の深刻な事情も見えてきた。

広場はちょっとしたグラウンドほどの広さがあり、高架下で空こそ見えないが、なかなか開放的な雰囲気。意地悪ベンチは広場の端に2つ設置されており、3人がけで計6人が座れるが、中央の4席分がポールで利用できなくなっている。

ポールは結束バンドのようなものでがっちりと固定されており、ちょっとやそっとではびくともしない。中央部分を利用させたくないという、固い意志すら感じられるほどだ。

こうした措置がとられてしまった理由は、周辺を見渡すとすぐに判明する。実はこの広場、至るところに騒音に対する注意書きが掲示されているのだ。

問題のベンチの背後には、「夜間は会話を控えてください」という看板が、地元の町会の名義で設置されている。

広場の各所には工事現場で用いるバリケードやコーンがあるのだが、ここにも「夜間の会話禁止」との張り紙があるほか、柱には壁打ち・球技の禁止を伝える掲示が一文字ずつ大きく張り出されている。

すぐに分かった対策の理由

注意書きは広場内だけにとどまらない。広場の敷地外にあたるガードレールにも、スケートボードや夜間会話の禁止を伝える掲示が数多く張り出されていた。

こうした現地の様子からは、夜間の話し声やスポーツによる騒音が、近隣住民にとって無視できないレベルでの迷惑になっていたことがうかがえる。中央4席を塞いだ意地悪ベンチも、人が集まって話し込むことを防ぎたかったのは想像に難くないだろう。

こうした対策に、ベンチの利用者は複雑な思いを抱えているようだ。撮影時、実際に腰を掛けていた男性に話を聞いた。

「この辺は夜、たまり場みたいになることもあるみたいですね。話し声とか遊ぶ音が近所迷惑で、たばこのポイ捨てにも悩まされているみたいで……。そう考えれば仕方ないかもしれないけど、これは(ポール設置は)ちょっとやりすぎのようにも感じます」(50代男性)

今回の話題を受け、新宿区の吉住健一区長は、7月16日更新のXで「広場ができて以来、苦情が絶えない状況が続いていたので、現場も悩んだ末の暫定的な対応だと認識しています」と説明している。

また、「有効な対応策を発案し指示を出せなかったのは私の責任です」とも表明し、「現地の方々と相談しながら、今後のあり方をなるべく早く決めていきたいと考えています」と違った対策に乗り出す意向も示した。

このように意地悪ベンチが広がる中、まるで逆を行くかのごとく、積極的に座る場所を提供している商店街がある。

広場最寄りの中井駅から都営大江戸線で1本、40分ほどで到着する江東区・清澄白河駅付近の深川資料館通り商店街だ。

同じ沿線の人情商店街

「縁台の似合う街」をうたうこの商店街は、約800mある通りのいたるところにベンチや縁台が設置されている。

商店街の人に話を聞いたところ、ホームセンターで購入したものから近隣の芸術家が作成したもの、商店の人が手作りしたものなど、さまざまな種類を厚意で置いているのだという。

「あそこ(店先)のベンチは商店街の方が作ったやつです。あと、この辺に芸術家の方がいて、その方が作ったものもありますね」(商店のAさん)

手作り縁台はゼブラ柄など個性豊かな塗装で、デザインもなかなか凝っている。ドリンクホルダーに使えそうな穴や、遊びに使えそうなマス目を描いたものなどがあり、ゆっくりと過ごすことを推奨するかのようだ。

店舗によっては、テラス席の前にも縁台を置いているほか、複数人で座れる長い縁台、テーブルと椅子を並べた場所まである。

その環境は、人を排除することを目的にした意地悪ベンチとは真逆。深川資料館通り商店街では、食べ歩きや散策中に気軽に休憩し、来た人が長時間過ごせるような工夫が施されている。

この利用者思いに溢れた優しい商店街の人々は、昨今の意地悪ベンチについて何を感じるのか。実際に話を聞いたところ、その回答からも優しさがにじみ出ていた。

「ウチの前に置いているのは、手作りじゃなくホームセンターで購入したやつですね。(意地悪ベンチは)事情は分かるんだけど……世知辛い世の中ですね」(商店のBさん)

「私も縁台を置いている取り組みは好きなの。まぁここは下町だからね! みんな優しいのよ」(商店のCさん)

溜まり場のほか、路上飲酒やホームレス対策など、さまざまな観点から広まっている意地悪ベンチだが、これによって今度は地べたに座る人が増えるなど、別の問題も噴出している。

いっそのこと、深川資料館通り商店街のように座る場所を提供した方が、治安や景観は守られるのかもしれない……。

取材・文・撮影/集英社オンライン編集部

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