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高校野球レゲエ校歌で話題の和歌山県南陵高校。全校生徒18人、毎月の赤字1500万円、“悪行三昧”の前経営陣一掃…再建に向けて「一歩前へ」

集英社オンライン / 2024年7月19日 11時0分

第106回全国高校野球選手権大会予選が始まり、全国各地で地方大会が繰り広げられている。そんな中、和歌山県のとある高校の校歌が、あまりにも“令和的すぎる”と注目を集めた。

【画像】南陵高校の令和すぎる校歌の歌詞!「Yeah Yeah Yeah」「やれるやれるやれさ〜」「一歩前へ」

 

令和すぎるレゲエ校歌を歌う高校球児たち

SNSで話題になっているのは、和歌山県日高郡日高川町にある私立高校、和歌山南陵高等学校の校歌だ。高校球児たちがグラウンドに礼儀よくきれいに整列してキャップをとると、「イエーイエーイエー!」と突然、爽やかなレゲエ調の曲が始まりだす。

そして「和歌山南陵高校 進めー」「やれるやれるやれるさー!」「一歩前へ 一歩前へ」と、校歌では聞いたことのない歌詞とメロディーが続く。



頭を丸めた純朴そうな球児たちと曲のギャップはすさまじく、こちらのポストはインプレッションが1100万以上の大バズリ。

SNSでは〈これが令和の校歌なんか〉〈校歌と知らずに聴いたら、JPOPだわ〉〈古臭い民謡のような校歌よりこれの方がいい〉〈よく承認されたなってくらいなレゲエ校歌〉〈甲子園で流れることを期待します!〉と反響が集まった。

 この曲は、レゲエアーティストのINFINITY16、横川翔、WASANの3名が作詞・作曲を手掛けたもの。いったいどんな経緯でこのような校歌が制作されることになったのか。

和歌山南陵高校に問い合わせると、理事長の甲斐三樹彦さんに話を聞くことができた。

「昔から横川翔さんと友人で、7年前くらいから『南陵高校の校歌をお願いするね』と約束していました。そこにWASANさんやINFINITY16さんが賛同してくれて、無償で作ってくださいました。

生徒たちは新しい校歌を喜んでくれていますね。なんせ、ウチは暗いニュースばかりの学校だったので……」(甲斐三樹彦さん、以下同)

実は南陵高校、ついこの間、前経営陣たちが撤退したばかり。教職員への給与未払い、住民税の滞納、公共料金の未払い、さらにはパワハラ・セクハラ、生徒への暴力、学校のお金を自分の会社へ流用など、悪行三昧で経営が破綻していたという。

これを甲斐さんたちがなんとか再建しようと新経営陣として着任し、今年の4月より再スタートを切ったばかりなのだ。

全校生徒はわずか18人 南陵高校を襲った悲劇

新しい校歌はいわば、新体制となった南陵高校を示す象徴でもある。校歌が変更と聞くと、一般的にはOBなどから反発を受けそうなもの。

しかしこうした事情もあり、「前経営陣の跡形もなくしてほしいというのがみなさんの望みでした」と、変更にはみんなが大賛成だったようだ。

とはいえ、現在、南陵高校の全校生徒は3年生の18人のみ。前経営陣らの悪行によって県から経営改善の措置命令を受けて、生徒の募集を停止しているのだ。

最初は学年に90人ほどいたが、どんどん転校していってしまい、この18人だけが残ったという。

「野球部が10人、バスケ部が6人、吹奏楽部が2人の18人です。それでもバスケ部は県大会でベスト4になり、インターハイ出場。野球部は今年、和歌山県大会で選手宣誓をしています。

この宣誓の言葉は、彼らの辛かった気持ちも入っているように感じられて、私はそれを聞きながら号泣してしまいました」

もともと、南陵高校はスポーツが盛んな高校であった。甲斐さんも営業部長というかたちで、九州から野球やサッカーなどが上手い生徒をスカウトしていた。

そんな中、学校の経営陣たちのずさんなやり方に意見をしたところ、クビになってしまったという。他の教職員たちと話して、内部告発なども試みたが、これも結局有耶無耶にされて、意見を言う人はどんどん切られてしまった。

元プロ野球選手で現在は指導者としても活躍する岡本哲司さんも南陵高校野球部で指導をしていたが、彼もまた、この大騒動のときに去ることになってしまった。

かつて、スポーツ強豪校として君臨していた南陵高校が、わずか数年で一気に崩壊してしまったのだ。

「前経営陣が去ってからは、OBたちが来てボランティアで学校のことを手伝ってくれていますし、パワハラで辞めてしまった教師たちを呼び戻したりもしています。

岡本さんもまた、戻ってくれる予定になりました。とにかくみんなが、『子どもたちを守りたい』『学校を立て直したい』という思いで、“義”で集まっている状態です。

経営は毎月1500万円の赤字になるほど大変ですが、賛同してくれる仲間や企業がお金を出してくれて、なんとかやっていけています」

野球部員に「ピアスをしてもいいんだぞ」

南陵高校はクラウドファンディングも実施して、資金を集めている。校舎は今まで整備などをまったくしていなかったので老朽化が進んで損傷が激しい。

寮は雨漏りして、お風呂場はボロボロ。「贅沢な環境にしたいわけではない。ただ、普通の環境にしてあげたいだけなんです」と、甲斐さんは語る。

そして今、南陵高校は新しい校歌の歌詞のように、 “一歩ずつ”再建に向かって前へ進んでいる。

「今回の校歌が南陵高校にとって、少しでも明るい話題になってほしいと思っています。SNSで話題になったのは本当に嬉しいですね。また生徒の募集再開ができるようになったとき、子どもたちが『南陵っておもしろそう!』って思ってもらうきっかけになればと。

曲は、もともとあった楽曲を南陵高校バージョンに再構築してもらい、歌詞は、南陵のイメージなどを横川さんらに伝えながら書いていってもらいました」

南陵高校は、生徒の自主性を重んじ、答えを教えてもらうのではなく、答えを作る力を養うことを目標にしている。そのため、厳しい校則のようなものはほとんどない。

「自主性を与えることよって、子どもたちはちゃんとした答えを出せると思っています。私が野球部に赴任したとき、部員たちに『髪を伸ばしてもいいぞ』と言ったら、自分たちから『坊主でいいです』と言ってきたんです。

『ピアスだってしていいんだぞ』と言っても、『いや、それをやったら人間として軽く見えるんで』と……。校則とかではなく、子どもたちが全部自主的にやっているんです。この子らはすごいなって思いますよ」

甲斐さんは今後、南陵高校を開かれた学校にし、閉鎖的になっている昨今の学校の風潮を、まとめて改革していきたいと明かす。

「学校はマスメディアにも積極的にきてもらって、『ここをこうした方がいい』と言われるべきなんですよ。地域の人も集まるのが学校です。

これは、教育業界への革命でもあると思っています。だから、あえて校歌もこのように変更したのです」

SNSで校歌が話題になったために、今こうして、南陵高校に大きな注目が集まっている。再建に向けたスタートはひとまず、大成功と言えそうだ。来年、募集再開となり、多くの生徒でまた校舎が賑わうことを期待したい。

取材・文/集英社オンライン編集部 

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