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〈おねだり兵庫県知事・告発職員は死亡〉「まだ飲んでない」の一言でワインをゲット。一方「生意気で」「目立った」職員にはキレ散らかすパワハラ三昧…“妨害工作”もおこなわれた百条委員会の中身

集英社オンライン / 2024年7月19日 21時13分

〈県警も注目〉「兵庫県知事はパワハラどころでない」元同僚男性が告発「局長のAさんは知事らを諫めるために命を絶った」知事は会見で辞職を否定も…〉から続く

兵庫県の斎藤元彦知事や側近の違法行為疑惑を告発した文書を警察やメディアに送った元西播磨県民局長Aさん(60)が県の懲戒処分を受けた後に自殺した問題に絡み、疑惑の真偽を調べる県議会の調査委員会が6月19日に開かれた。Aさんはこの調査委で話す予定だったことを問答式の「陳述書」として書き残していた。遺族の希望で公開された陳述書に記された、斎藤知事のパワハラとたかり体質とは―。

〈画像多数〉辞職の際泣きじゃくった片山副知事と、兵庫県当局が作成した百条委の証人になる職員への注意文書。末尾に証言内容の承認を事前に取ることを求める内容がある

告発当初は在阪メディアも取り上げず

Aさんは3月12日付で、斎藤知事のほか、片山安孝副知事や井ノ本知明総務部長ら庁内で“4人組”と揶揄される側近に関する7項目の疑惑を書いた文書をメディアに発送した。

文書には斎藤知事が日常的に県職員にひどいパワハラを繰り返し、側近ともども自治体や企業にたかっている、という問題行動だけでなく、重大な告発が記されていた。

①プロ野球の阪神とオリックスの優勝を祝し行われた昨年11月のパレードの費用をねん出するため県が信用金庫に補助金を増額しそれをキックバックで寄付させた

②昨年7月の斎藤氏の政治資金パーティーに絡み片山副知事が主導し関係団体に補助金の減額をちらつかせてパーティー券の購入を強要した

③2021年の前回知事選で4人組が斎藤氏のために事前運動を行い論功行賞で昇任している―など、事実なら重大な金融・選挙犯罪になる内容だ。(♯1

「告発文の存在を知った斎藤知事は激怒し、4人組と共に裏切者の“摘発”を始めました。県当局はAさんに目を付け、3月25日に片山副知事が他の幹部1人を伴い西播磨県民局を突然訪問、Aさんのパソコンを持ち去りました。

パソコンに文書のデータが入っていたこともあり、Aさんはこの日、文書作成を県当局に認めたようです」(県関係者)

斎藤知事はその2日後の3月27日の記者会見で、「ありもしないことを縷々と並べたことを作ったと本人も認めている。不満があるからといって、業務時間中なのに、嘘八百含めて文章作って流すという行為は公務員として失格だ」と発言。

Aさんが嘘を書いたと決めつけて同日付で西播磨県民局長職から解いたと発表した。同月末で退職予定だったAさんは退職を認められず、停職3ヶ月の懲戒処分にされた。

「告発は完全な公益通報であり、内容を検証すべきだったのに大阪や神戸のメディアは当時、斎藤知事や県当局の発表になんの批判もせず、Aさんは怪文書を書いた不満分子と扱われました。

関西のメディアは大阪維新の会への批判精神を欠いており、維新の推薦を受けて当選した斎藤知事についても、以前からパワハラのひどさは有名だったのにまったく取り上げなかったほどです。

しかし、4人組の一人である原田剛治・産業労働部長が、企業からコーヒーメーカーの提供を受けていたと読売新聞が4月にスクープ。

さらに丸尾牧県議が県職員へのアンケートで、パワハラやたかりに関する証言を得たと発表したことで、ようやく告発内容自体に目が向き、県議会で地方自治法100条に基づく調査特別委員会(百条委員会)が設置されるまでになりました」(県関係者)

Aさんが遺した「陳述書」の内容

しかし、ここから知事周辺はとんでもない反撃に出る。

「押収したパソコンに入っていたAさんのプライベートなデータをプリントした資料を4人組の中の人物が持ち歩き、県OBや県議に見せて歩いたんです。その事実が伝わりAさんはひどく緊張しました。私的な内容を加工して流布することでAさんを貶め、信用に値しない人物だとの印象を広めようとする意図と見えます。

実際に資料を見せられた一人は憤慨し『百条委で証人尋問が始まればこのことを証言する』と言っていました。その百条委では維新の岸口実県議らが、パソコンの中の資料を全部開示しろと要求。さすがにこんなめちゃくちゃな要求は通りませんでしたが…」(県職員)

だが、Aさんは証人として証言することが決まっていた7月19日の百条委を前にした7月7日、今は空き家になっている姫路市内の生家で自死しているのが見つかった。

こうした選択に至った理由の推測はできないが、斎藤知事は「百条委への精神的なプレッシャーがあったと思う」と話している。

だがAさんは百条委に向け、出席したときに自身が言えることを「陳述書」と名付けた問答の形で詳細に遺しており、百条委から逃げたわけではない。

Aさんの妻は7月12日、この文書を含む資料を百条委側に提出。

そこに「主人がこの間、県職員のみなさんのためをと思ってとった行動は、決して無駄にしてはいけないと思っています。主人が最後の言葉を残していました。そこには“一死をもって抗議をする”という旨のメッセージとともに、19日の委員会に出頭はできないが、自ら作成した『陳述書』および参考の音声データの提出をもって替えさせてほしいこと、そして百条委員会は最後までやり通してほしいことが記されていました」と書き添えた。

さらにこれらの資料は公開もしてほしいとの希望を伝達し、傍聴者とメディアが席を埋めた19日の委員会で公開された。

A4用紙で12枚になる資料では、予想通り“被害者”が多いたかりとパワハラ問題の情報が多く書かれていた。それだけ情報が集まったのだろう。最もリアルなたかりの現場は音声も残されていた。

2022年11月7日の「西播磨地域づくり懇話会」と銘打たれたイベントで斎藤知事は「ワインをちょっとまだ私は飲んでいないのでぜひまた。このあいだはイチゴ、ジャム、塩はアレですけど、また折を見てよろしくお願いします」と悪びれもせず朗らかに地ワインを要求している。

「知事が地元の特産品を試食してみたいというのは、イベントなどその場で口にするのならPR目的であるため理解できます。しかし斎藤知事の要求は“後で持ってこい”なので、個人的なたかりと言われても仕方ありませんね」(在阪記者)

百条委の調査に対して県は妨害工作

そしてこの要求通り、1週間後には合計5500円相当の赤ワインとぶどうジュース1本ずつが県庁の秘書課へ届けられたというのだ。

また「道の駅」の業者が斎藤知事や随行員に農産物の手土産を渡した際、随行員は「いつも知事が一人で持って帰る」と返事したのを見たとも記されている。

さらに、パワハラについては「職員に対するハラスメントは、県政に関する重要事項とか施策遂行上の問題といった次元ではなく『知らなかった』『気に入らない』『配慮が足りない』『生意気だ』『自分より目立った』といった知事個人にとっての不都合、不満が原因となった叱責、罵倒である」と指摘。

「聞いていない」とキレ散らかしたり机をたたいて怒ったり、タメ口で職員を罵倒したりしたほか、県幹部職員間のグループチャットに気に入らない職員へのダメ出しを公然と書き込んでいたとも書かれていた。

補助金をてこにした寄付やパー券購入の強要疑惑などは、ネタ元を守ろうとしたのか具体的な情報の入手経路は明かしていないが、「大きな話題になっていました」と書くなど、県庁内で公然の秘密として語られていることを強調している。

百条委はこの陳述書も材料に、今後疑惑の情報提供を呼び掛ける意味もあるアンケートを県職員に行うことを決定。さらに証人尋問も順次行っていくことを決めた。

一方、県関係者によると、県は百条委による真相究明の妨害工作ともとれる動きを見せている。

「公務員は百条委の証人となって職務上知り得た秘密を証言する場合には『守秘義務免除』の手続きを取る必要が一般にあります。これは通常、『百条委で何を聞かれるかわからないが、聞かれたことに答える内容はすべて守秘義務を免除しますよ』という形をとります。

ところが兵庫県の人事当局は、事前に何を話すか、すべて事前に申請して承認を受け、話す内容は最小限にせよとの指示文書を作り、7月12日には幹部会を開いて周知徹底するよう締めつけています。どの職員が何を話すつもりなのか把握し、承認を受けなければならないとする、委員会への出頭妨害です」(県関係者)

県のこの動きは19日の百条委でも取り上げられ、委員からは「調査妨害だ」として県当局を批判する声が次々と上がった。ある県議は「秘密が守られるなら百条委で言いたいことは山ほどあるという県職員はいっぱいいる」と口にした。

県職員の口を塞ごうとする県当局と真相究明を求める百条委の攻防がこれから本格化する。

※「集英社オンライン」では、今回の騒動について、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。
メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

X(Twitter)
@shuon_news  

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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