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あのウコン飲料に鮮魚販売、学習塾も…知られざる旧統一教会系企業のビジネス展開「日本は教団が世界で保有する富の最大の資金源」との声も

集英社オンライン / 2024年8月5日 8時0分

旧統一教会は、米国内の高級寿司店への鮮魚販売で成功を収めている企業や、日本国内でも飲料メーカーや学習塾を運営している。それ自体はもちろん問題ではないが、献金活動に繋がる事例もあるそうだ。

【衝撃】2007年時点の旧統一教会日本支部からの送金金額

書籍『誰も書かなかった統一教会』より一部抜粋・再構成し、教団が手がける企業について解説する。

教団が世界に保有する富の資金源は日本

数多あるアメリカの教団系企業の中でも、最大の成功を収めたのが「トゥルー・ワールド・フーズ」だ。40種類以上のサーモンや5種類の鯛、イクラの加工品などの魚介類だけでなく、鰻のたれ、ゆずなどの柑橘類、さらには包丁まで、アメリカの寿司職人が必要とするおよそすべての商品を扱っている。

現在では、アメリカ17州に加えて、イギリス、カナダ、スペイン、韓国、そして日本にも支社を持つまでに成長を遂げた。

米紙「ニューヨーク・タイムズ」の記事「The Untold Story of Sushi in America」(2021年11月5日付)によれば、トゥルー・ワールド・フーズは、2021年度、アメリカとカナダに8300以上の顧客を持ち、日本支社はアメリカに年間1000トン以上の鮮魚を輸出している。

アメリカの高級・中級の寿司店向けの鮮魚販売の実に7〜8割を同社が占め、グループ全体の年間売上高は5億ドル(当時の為替レートで約570億円)を超えるという。

だが、トゥルー・ワールド・フーズの成功や、同社を筆頭とするアメリカの統一教会系企業の隆盛は、日本の統一教会による霊感商法や事実上強制的な献金が下支えしていたのだ。

アメリカの教団系企業の多くが、70年代後半から80年代前半に設立されているが、日本で霊感商法がピークに達していた時期と重なる。いわば、日本人の被害によって、教団が言うところのアメリカン・ドリームは成就したのだ。

英紙「フィナンシャル・タイムズ」(2022年7月16日付)は「教会の指導者らが、日本から米国へ送金された数十億ドルをふくむ信者の労働力と資産を、企業帝国を築き上げるために搾取している」との批判があると指摘し、「日本は教団が世界で保有する富の最大の資金源」というのが多くの識者の一致した見方だとしている。

文鮮明教祖は1975年から日本の統一教会に月20億円の送金命令を下し、約10年間で送金された額は2000億円に上ったことが元幹部信者の告発で明らかになっている。「ニューヨーク・タイムズ」(2021年11月5日付)が報じた、日本の統一教会元財務担当者の供述と内容が一致する。

「文が信頼する日本人会計士の秘書が約180万ドルを詰めたブリーフケースを持ってアメリカに到着した。1976年から2010年まで、日本統一教会はアメリカに36億ドル以上を送金することになる」

アメリカの教団系企業の成功を支えたのが、資金面では日本からの送金だったが、人的に大きな貢献をしたのもまた日本から渡米した数百人の信者だった。選抜されたエリート信者たちはアメリカに入国すると、国際合同結婚式でアメリカ人とマッチングする。

こうしてアメリカ市民権を取得した後、教団系企業で薄給、あるいは無給で、寝食を忘れて献身的に働き続けたのだ。

学習塾や英会話教室から病院まで

アメリカでもっとも成功した教団系企業体となったトゥルー・ワールド・グループは、現在、「統一教会インターナショナル」(1977年設立)が所有する。

問題なのは、教団の反共運動やリトルエンジェルス芸術団などの文化活動、プロパガンダを行なうメディア企業、教団の脱税をめぐる訴訟費用などに統一教会インターナショナルが資金を提供していることだ。

さらに憂慮すべきは、こうした資金提供が、時には文鮮明機関のペーパーカンパニーやトンネル法人を経由して行なわれている可能性が高いことだ。

無数の組織や企業を抱える文鮮明機関を介した資金移動を、当局が捕捉するのは極めて困難なのである。

「無数のタコ足」を持ち、教団本体を覆い隠す本質は、日本の統一教会にもそっくりそのまま当てはまる。

日本の教団系企業をいくつか記す。

霊感商法の手法を使い、法外な価格で売りつける多宝塔や壺、高麗人参の濃縮液を輸入していた「ハッピーワールド」(旧「幸世商事」、旧「世界のしあわせ」)は、旅行業や貿易業、不動産賃貸業などを手掛け、2022年度の売上高は24億600万円。

同社の前身である幸世商事の設立は1971年、代表取締役に就任したのは後に「経済担当副会長」となる古田元男だ。1972年には、7億円余の小切手を携帯して韓国に持ち出したとして外為法違反で、同社の幹部たち2人が逮捕・起訴されている。

「一信ジャパン」(旧「一信石材」)は、霊感商法で販売する多宝塔や壺を輸入・販売していた。日本で販売をはじめた当初の70年代はじめは、デパートなどで工芸品として数万円で売っていたが、業績が芳しくなく、霊感商法で販売することを思いつく。

韓国で5000円の壺が400万〜500万円、原価60万円の多宝塔は2000万〜4000万円で販売された。

ほかにも、軽トラックで鮮魚を移動販売する「一心天助」、学習塾や英会話教室から病院まで、統一教会系企業の業種は広範に及ぶ。東京都練馬区には、教団信者が経営する学習塾が4つもあるし、国会議員秘書が知らずに通っている英会話教室もある。

霊感商法を行なう企業は別にして、行商で鮮魚を売ったり、学習塾や英会話教室を経営すること自体は、もちろん悪いことではないし違法でもない。

あらゆる手を使って教団に献金させる

だが、統一教会は傘下の教団系企業のビジネスを接点に、「精神世界に興味はありますか?」「無料で手相を見てあげます」などと言葉巧みに近づいてくる。彼らの狙いは、名前と住所を聞き出すことだ。

相手の経済事情を調べ上げ、裕福な人に狙いを定めると、先祖の因縁話などで不安を煽り入信させる。その後は、安倍晋三元首相を銃撃した山上徹也の母親がそうだったように、あらゆる手を使って教団に献金させる。これこそが問題なのだ。

統一教会の本質は、「祝福」と「万物復帰」に集約される。

「祝福」とは、教祖が決めた配偶者と、国際合同結婚式で婚姻することだ。「祝福」のためには祝福献金や祝福を受けるための合宿など、多額のカネを教団に納めなければならない。

一方、「万物復帰」とは、「神を中心とした地上天国をつくるために、サタン側に奪われた万物を神の側に取り戻さなければならない」という教義だ。

「この世の人も財産もすべては神のものであり、サタン(一般社会)のもとにあるすべてのもの(「万物」)を本来の所有者である神(文鮮明)に『復帰』させることは善であり、救いとなる」というもので、教団では「万物」の中でもとくにカネが重視される。

この教義が悪質なのは、カネ集めのために、統一教会であることを隠して教団に勧誘することをはじめ、霊感商法や福祉を騙った詐欺募金などの犯罪行為さえも「万物復帰」のために正当化されてきたことだ。

霊感商法に手を染めた信者に犯罪の自覚があったとしても、教義によって「善」であり、「救い」とされているので罪悪感はむしろ減り、信者は進んで霊感商法や詐欺的な伝道を行なうことになる。

「ウコンの力」などを教団系企業が製造していた

統一教会系企業が問題なのは、市井の人々が知らないうちに、さまざまな業態で身近に存在している点だ。彼らが手掛けるビジネス自体には問題がないかもしれない。だが、教団系企業は、この「万物復帰」を行なわせるための窓口になっている。

しかも、大多数の国民はどの会社が教団系企業であるかを知らないのだ。

典型的な例を挙げよう。

二日酔いを避けるために酒席の前などに飲む人も多く、全国のコンビニやスーパーで販売されているドリンク「ウコンの力」は、販売元はハウス食品だが、製造元は統一教会系企業の「コスモフーズ」だった。旧社名は日本メッコール。「メッコール」とは韓国の統一教会系企業一和が製造する〝麦コーラ〞とも呼ばれる清涼飲料水のことだ。

コスモフーズは、元は教団系の商社・ハッピーワールドの飲料製造部門で、分割独立して現在に至る。社長をはじめ役員の大多数が、国際合同結婚式で祝福を受けた信者だ。2万平方メートル超の広大な敷地の工場が建つのは、埼玉県児玉郡神川町(旧・神川村)。

文鮮明教祖が3度この地を訪れ、1978年には1610組が合同結婚式のための婚約式に参加した「教団の聖地」だ。「ウコンの力」は、この工場で製造されていた。

プラズマ乳酸菌を配合したキリンHDが販売する機能性表示食品「iMUSE(イミューズ)」シリーズの「iMUSE 朝の免疫ケア」も、2022年3月の全国発売以降、コスモフーズが製造を担っていた(2023年3月出荷終了)。

なぜ、日本を代表する大手飲料メーカーの製品を、教団系企業が製造するのか。「ウコンの力」はコスモフーズが2004年から2020年までOEM(受託生産)を請け負っていたが、「週刊文春」(2022年9月8日号)によれば、ハウス食品は同社が統一教会の関連企業であることを把握していなかったという。また、キリンHDは「宗教上の理由で得意先を選定することは行っていない」という。

もちろん、ハウス食品やキリンHDが悪いわけではない。製品に問題があったわけでもない。ただ、コスモフーズが生産していた「ウコンの力」や「iMUSE 朝の免疫ケア」がヒット商品だっただけに莫大な富が教団にもたらされたのは間違いないだろう。

同社のHPによれば、事業内容は清涼飲料水製造と自動販売機による飲料水販売だ。取引先にはアサヒ飲料、キリンビバレッジ、サントリーフーズ、ダイドードリンコなど大手メーカーが並び、年商は59億円(2020年度)に上る。ところが、奇妙なことに純利益は1900万円(同年度)しか計上されていない。


資料/書籍『誰も書かなかった統一教会』より
写真/shutterstock

誰も書かなかった統一教会(集英社新書)

有田芳生
誰も書かなかった統一教会(集英社新書)
2024/5/17
1,056円(税込)
256ページ
ISBN: 978-4087213140

無関心=空白の30年間が招いた安倍元首相銃撃事件から2年。闘い続けるジャーナリストが、政界への浸食、北朝鮮との関係、組織の武装化まで教団の素顔を暴く!

◆内容◆
2022年7月の安倍元首相銃撃事件後、統一教会 (現・世界平和統一家庭連合)と政界の癒着を中心に多くの報道があった。

だが、メディアが報じたのは全体像のごく一部だった。

教団をめぐる多くの問題が残されたまま事件の風化を憂慮したジャーナリストが、教団の政治への浸食の実態、霊感商法の問題はもちろん、「勝共=反共」にもかかわらず北朝鮮に接近していた事実、教団の実態を早くから認識していたアメリカのフレイザー委員会報告書、教団関係者による銃砲店経営、原理研究会の武装組織、「世界日報」編集局長襲撃事件、公安が教団関係者を調査していた事実等、その全貌を公開する。

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