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「解散命令という“Xデー”に備え、教団内の緊張感は高まっている」有田芳生が語る”旧統一教会の現在地”

集英社オンライン / 2024年7月26日 8時0分

「テレビで『統一教会の摘発がなかったのは“政治の力”』と話したら、翌日から今日まで出演が一切なくなりました」ジャーナリスト有田芳生が語る『誰も書かなかった統一教会』〉から続く

安倍晋三元首相の銃撃事件から2年。事件の発端となった統一教会に関する報道は減っており、事件は忘れ去られようとしている。そんな中、教団を40年にわたって取材し続け、5月には『誰も書かなかった統一教会』を上梓して、教団の驚くべき実態やタブーを明らかにした有田芳生氏が、“旧統一教会問題のその後”を語った。

【画像】『誰も書かなかった統一教会』を上梓し、教団の驚くべきタブーを明らかにした有田芳生氏

自民「裏金問題」でかき消された「旧統一教会問題」

――安倍晋三元首相銃撃事件から2年。当初は旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)関連の報道が連日、メディアを賑わせていましたが、今ではほとんど見聞きしません。有田さんはこの現状をどうお考えですか?

有田(以下、同)明らかに世間の関心が薄れ、「空白」と表現してもおかしくない状況になっていますが、本質的な問題はなんら解決されていません。

おそらく来年には解散命令が下されても教団は控訴しますから、確定するのは早くても3年後の2027年頃になるでしょう。裁判は非公開です。このままではますます、旧統一教会への無関心が進みかねないと危惧しています。

実際、7月7日に行われた都議補選でもその兆候がありました。

自民は都議補選で8選挙区に候補を立て、2勝6敗の惨敗を喫しました。その象徴が旧統一教会との深い関係を指摘されている萩生田光一前政調会長の地元、八王子市選挙区です。ここで萩生田氏が推す自民新人が野党系の元職候補に4万票の大差で敗れたのです。

この敗戦について、自民関係者は「ひとつの負けではなく、ふたつの負け」と説明しています。今回の敗戦は新人候補が敗れただけでなく、“裏金問題で批判された”萩生田氏が敗れたことも意味する。つまり、自民にとってこの負けはひとつでなく、ふたつだったというわけです。

問題なのはその説明から「旧統一教会」というワードがすっ飛んでいるということなんです。

八王子には創価大学があります。その関係者は萩生田氏を許せないのは裏金問題とともに統一教会問題の象徴だからだといいます。これはいわば当事者の真っ当な感覚です。

意識から統一教会が消えているのは自民だけでない。メディアもその説明をすんなりと受け入れている。自民もメディアもわずか2年間で萩生田氏といえば旧統一教会という認識をなくしてしまい、「空白」の状態になっているんです。

――その一方で、旧統一教会は現在、どのように状況にあると見ていますか。

先日の7月7日にも博多駅前で約100人の信者が集まり、国の解散命令と福岡市の公共施設利用拒否に反対する街宣行動を行ったばかりです。私の目には教団が解散命令というXデーに備え、緊張感を高めているように見えます。

ほかにも、旧統一教会の信者たちの間では3冊の本が話題になっています。私の表現でいえば、教団にとっての「3大悪書」です。

旧統一教会が警戒する「3大悪書」とは

――3大悪書?

ええ。旧統一教会が教団を攻撃する書物だと内部で問題にしています。

一冊は小説家の柴田哲孝さんが安倍元総理銃撃事件をモチーフにして書いた「暗殺」(幻冬舎)というサスペンス小説。物語の冒頭は朝日新聞阪神支局を襲撃した赤報隊事件で、その背景に統一教会が出てくる。安倍銃撃事件ともつながってくるから、教団からすればとんでもないフィクションでしょう。それが売れている。

もう一冊が、私がこの5月に上梓した「誰も書かなかった統一教会」(集英社)。現役信者は私が2022年11月に韓国の教団本部に入ったことに驚いていました。さらにいえば柴田さんの小説に出てくる散弾銃「鋭和BBB」についても詳しく書いています。

そして3冊目が8月20日に刊行予定の樋田毅「旧統一教会 大江益男元広報部長の懺悔録」(光文社)。ここでは教団の元広報部長が霊感商法、日韓トンネル、韓国への送金問題、赤報隊事件などについて生々しく証言しているといいます。教団はまだ原稿の詳細を知らないのに出版を非常に恐れている。

この懺悔録に教団はとくに警戒感を高めていて、「第2の世界日報事件が起きてもおかしくない」などと言う者までいるようです。間接的な脅迫だと言ってもいい。

――世界日報事件とは1983年に旧統一教会系の政治団体である国際勝共連合のメンバー約100人が同じく教団系機関紙の世界日報本社ビルを襲撃し、多数の負傷者が出た事件ですね。

当時、世界日報は後に月刊「文藝春秋」で教団の闇を内部告発することになる副島嘉和編集局長のもと、教団の宗教活動とは一線を画す紙面作りを進めていたんです。

ところが、その編集方針に反発した教団側が勝共連合のメンバーに世界日報を襲撃させました。標的はもちろん、副島編集局長でした。

ただ、副島さんは別フロアの営業局にいて襲撃を免れましたが、編集局のフロアにいた記者10人が負傷し、渋谷署の警官80人が駆けつける騒ぎとなりました。ちなみに、この襲撃は文鮮明教祖の指示によるものだったと副島さんは証言しています。

副島さんはその後「文藝春秋」で告発しますが、発売6日前、自宅付近で何者かに刺されました。一時は生死の境をさまよいましたが一命をとりとめています。

旧統一教会の信者は概しておとなしくてまじめな人が多い。ただ、世界日報を襲撃した勝共連合メンバーのように、どこの組織にも跳ねっ返りのような人はいるものです。

解散命令というXデーを前に教団内の危険水域は上昇しています。教団側は解散命令をめぐる一連の動きを戦争ととらえているフシもあるだけに、ちょっと心配しています。

知られざる旧統一教会の“軍事力”

――有田さんの著書「誰も書かなかった統一教会」に詳しく書かれていますが、旧統一教会は過去に高い殺傷力を持つ空気散弾銃を大量に輸入していた事実もあります。

その総数はじつに約1万8000丁にもなり、1968年には約1000人の信者が警察署に散弾銃の所持許可申請を提出していたことが国会質疑などを通じて明らかになっています。

また、教団はピーク時に25店(教団内部資料では38店)の銃砲店や会員制射撃場も保有していた。勝共連合には非公然活動を行う「特殊部隊」があり、定期的に軍事訓練を行っていたという内部証言もあります。

なのに、世間もメディアも旧統一教会への関心は日々に薄れ、「空白」の状況となっている。問題の多い献金問題も、7月1日にNHKのインタビューに応じた勅使河原秀行教会改革推進本部長が「教団への献金総額は安倍元首相銃撃事件前に比べて、3分の1にまで減っている」と胸を張るものの、その一方で信者が韓国に渡り、教団本部施設などに直接献金する額が月間1億円を超えていることも認めている。

「献金しないと家族が地獄に落ちる」などの脅迫めいた言い方で教団から過度な献金を強いられ、生活が破綻したという信者の悲鳴がいまだに絶えません。

献金額が3分の1に減ったとはいえ、献金集めの手法は旧態依然のままで、旧統一教会の反社会性は変わってないと言うべきでしょう。なのに、教団への世間の関心は日に日に低下している。これは、じつに憂うべき状況といえると思います。

取材・文/集英社オンライン編集部
写真/shutterstock

誰も書かなかった統一教会

有田 芳生
誰も書かなかった統一教会
2024/5/17
1,056円(税込)
256ページ
ISBN: 978-4087213140

無関心=空白の30年間が招いた安倍元首相銃撃事件から2年。
闘い続けるジャーナリストが、政界への浸食、北朝鮮との関係、組織の武装化まで教団の素顔を暴く!

◆内容◆
2022年7月の安倍元首相銃撃事件後、統一教会 (現・世界平和統一家庭連合)と政界の癒着を中心に多くの報道があった。
だが、メディアが報じたのは全体像のごく一部だった。
教団をめぐる多くの問題が残されたまま事件の風化を憂慮したジャーナリストが、教団の政治への浸食の実態、霊感商法の問題はもちろん、「勝共=反共」にもかかわらず北朝鮮に接近していた事実、教団の実態を早くから認識していたアメリカのフレイザー委員会報告書、教団関係者による銃砲店経営、原理研究会の武装組織、「世界日報」編集局長襲撃事件、公安が教団関係者を調査していた事実等、その全貌を公開する。

教団内には内部分裂の動きも…旧統一教会「文ファミリー外し」の現実味〈有田芳生〉〉へ続く

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