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教団内には内部分裂の動きも…旧統一教会「文ファミリー外し」の現実味〈有田芳生〉

集英社オンライン / 2024年7月26日 8時0分

「解散命令という“Xデー”に備え、教団内の緊張感は高まっている」有田芳生が語る”旧統一教会の現在地”〉から続く

国による解散命令請求も現実味を帯びるなか、旧統一教会内部には大規模な組織改編が行われ、「文ファミリー外し」ともみられる動きもあるのだという。安倍晋三元首相の銃撃事件から2年。今後、教団はどこに向かうのか? 『誰も書かなかった統一教会』で教団の驚くべき実態やタブーを明らかにした有田芳生氏に聞いた。

【画像】有田芳生氏が教団の驚くべき実態やタブーを明らかにした新刊『誰も書かなかった統一教会』

教団に内部分裂の動きも

――教団への世間の関心は日に日に低下している中、つい最近、教団内部で大きな動きがあったと聞きました。



有田(以下、同)今年の6月6日に韓国の旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)本部で大規模な組織改編に伴う人事異動が行われたんです。背景にあるのは教団内部での跡目争いだと私は考えています。

教祖の文鮮明氏死去後、妻の韓鶴子氏が総裁として教団を率いてきましたが、その韓氏もすでに80歳を超えて体調も悪く、後継者問題が喫緊の課題として浮上しているんです。

――文鮮明氏の死去後、教団内では莫大な富と権力をめぐって文ファミリー内で後継者争いが繰り広げられたと聞きます。最終的には韓氏が独裁体制を固めましたが、それに反発した三男の文顕進氏、四男の文國進氏、七男の文亨進氏らが次々と離反し、それぞれ分派を形成するなど、混乱が続いています。

注目すべきは今回の組織再編で新設され、旧統一教会のすべての組織を統括することになる「天務院」のトップは韓鶴子院長が、副院長兼秘書室長に鄭元周(チョンウォンジュ、女性)が就任したことです。

その下には文ファミリー周辺もおらず、韓鶴子氏を除けば文字通り、鄭元周一人独裁体制が構築されたと言ってもよい。彼女が教団関連のすべての企業、資金、人事を掌握したのです。

鄭元周の実姉は、関連団体のリトルエンジェルス芸術団の前団長、韓国の世界日報社長は実弟、米国のワシントンタイムス社長は義兄ですから、すでに文鮮明ファミリーは実権を持っていません。

こうした文ファミリー外しの動きは日本の旧統一教会内部でも起きているように見えます。近い将来、旧統一教会は文ファミリーのものでなくなる日がやってくるかもしれません。

じつは少数ですが、以前から「韓国の本部から距離を置いて純粋に信仰に生きる独自路線を歩むべきだ」という声は教団内部にあったんです。この8月20日に「懺悔録」を出す大江益男元広報部長もそう主張していたひとりです。

たしかに独自路線を歩めば、韓国に多額の献金をする必要もなくなり、身丈に合った財政規模で信仰を行うことができる。自主的な独立路線しか健全な教団に再生する道はありません。

教団系企業は学習塾や英会話塾、病院も経営

――かつてアメリカはフレイザー委員会を下院に設置し、アメリカ政界への工作活動を強める旧統一教会の実態を徹底調査し、その闇を白日の下に明らかにしました。日本の国会にも国政調査権が与えられていますが、なぜ、日本ではフレイザー委員会のような綿密な調査が実現しないのでしょう?

1976年にフレイザー委員会は教団の実態を知る日本人に聴取をしたいと日本政府に協力を求めています。しかし、日本政府はこの聴取を阻みました。聴取対象をアメリカ人に限定することを委員会スタッフへのビザ発給条件としたため、実現しなかったのです。

日本人信者が世界最多で、過剰な献金など、教団による被害が甚大なのに、日本政府がフレイザー委員会への協力を拒んだのはあまりに不可解です。非協力の背景に日本の保守政治家と教団の何らかの深い関係があったとのではと勘ぐられても仕方ありません。

同じように今回も日本の政界に保守政治家を中心に旧統一教会の闇を徹底調査しようという機運は乏しい。

今の国会は自民が過半数を占め、教団と何らかの接点を持つ国会議員は自己申告が中心の党内調査でも179人を数えます。米フレイザー委員会のように旧統一教会の闇を国会が徹底調査するのは、政権交代が起きないかぎり難しいでしょう。

――フレイザー委員会は宗教にとどまらず、教育、文化、政治、収益事業なども行う教団を「文鮮明機関(Moon Organization)」と規定しました。この収益事業を糸口に、アメリカは教団の不正を追及し、1984年には文鮮明氏を脱税で1年半の実刑・収監に追い込んでいます。

やる気さえあれば、同様の手法は日本でも有効でしょう。教団系企業としては霊感商法で知られる「ハッピーワールド」や「一信ジャパン(旧一信石材)」、軽トラックで鮮魚を移動販売する「一心天助」などが有名でしたが、他にも学習塾や英会話塾、病院など、かつてもいまも多彩なビジネスを営んでいます。

スーパーやコンビニで見かけるウコン飲料を2020年まで製造していた「コスモフーズ」(旧社名日本メッコール)もそのひとつです。この教団系企業は年商が59億円(2020年度)もありながら、純利益はたった1900万円しか計上されていません。ちょっと不自然な数字で、経理上のからくりがあるようにも見えます。

もし、そこに不正な経理や脱税行為があるとしたら、税法違反などで教団関連企業の不正を問える。これなら刑法上の違法行為を摘発するだけで、教団を圧迫して日本国憲法が定める信教の自由を侵害することにはなりません。

信者たちをどのようにケアしていくべきか

――今後、国やメディアは何をすべきでしょう?

解散命令が出れば、信者には動揺と混乱が起こるでしょう。だからこそ、まずは宗教2世をはじめとする信者のケアが不可欠です。退会するにしろ、しないにしろ、教団解散後も社会で生きていけるように支援しなくてはいけない。

参考になるのはオウム真理教のケースです。1995年に東京地裁がオウムに解散命令を出した時、専門家の間では全国の保健所に専門窓口を設置し、オウム信者のケアに当たるべきという論議が交わされました。

残念ながら、この窓口設置は実現しませんでしたが、旧統一教会に解散命令が出た時には同じような対応が有効となるでしょう。

ただ、支援するといっても、何十年間も信仰を守り、総額1億円を超える献金をしてきた信者にいきなり教団を脱会し、社会復帰しろと言ってもなかなか聞き入れてくれないでしょう。教団解散といっても法人格がなくなるだけで、任意団体としての宗教団体や関連組織はそのまま残るわけですから。

だったら、被害者を生む馬鹿げた過度な献金なんかやめて、収入に見合った財政規模で教団を維持し、静かに信仰に生きることも一つの解決法です。これならだれにも迷惑をかけないわけですから、社会も信者を支援できるはずです。

あとひとつは教団と関係の深かった政治家の動向をチェックすること。解散後も選挙支援を受けたり、教団主催のイベントに出席したり、選挙時の推薦と見返りに教団関連団体と政策協定を結んだり――。そんな不適切な関係を継続していないか、しっかり監視するべきでしょう。

なにしろ、旧統一教会には秘書養成講座を開設してまで信者を国会議員秘書として永田町に送り込み、政界への浸食を図ろうとした過去がありますから。そして、それはいまも続いている可能性がきわめて高い。

いまでも国会議員に教団系の機関紙である「世界日報」を届けるため、議員事務所に出入りする信者がいると聞いています。宗教によって政治や政策が歪められることがないよう、一有権者として関心を持つことが大切です。

取材・文/集英社オンライン編集部

誰も書かなかった統一教会

有田 芳生
誰も書かなかった統一教会
2024/5/17
1,056円(税込)
256ページ
ISBN: 978-4087213140

無関心=空白の30年間が招いた安倍元首相銃撃事件から2年。
闘い続けるジャーナリストが、政界への浸食、北朝鮮との関係、組織の武装化まで教団の素顔を暴く!

◆内容◆
2022年7月の安倍元首相銃撃事件後、統一教会 (現・世界平和統一家庭連合)と政界の癒着を中心に多くの報道があった。
だが、メディアが報じたのは全体像のごく一部だった。
教団をめぐる多くの問題が残されたまま事件の風化を憂慮したジャーナリストが、教団の政治への浸食の実態、霊感商法の問題はもちろん、「勝共=反共」にもかかわらず北朝鮮に接近していた事実、教団の実態を早くから認識していたアメリカのフレイザー委員会報告書、教団関係者による銃砲店経営、原理研究会の武装組織、「世界日報」編集局長襲撃事件、公安が教団関係者を調査していた事実等、その全貌を公開する。

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