競泳・池江璃花子「暑いのにお疲れさまです」会場入りの際に警備員に必ず声をかけた理由…母親が重要視した「あいさつの習慣」
集英社オンライン / 2024年7月27日 12時0分
〈「妥協しませんでした」競泳・池江璃花子選手の母親が語る、身体を作る大切な時期に食べさせたい「まごわやさしい」食材とは? 〉から続く
パリ五輪にも出場している競泳の池江璃花子選手の母である池江美由紀氏。彼女は幼児教育教室の経営、講師として活動しているが、子どもの「あいさつの習慣」が何より大切だという。あいさつができるようになると、子どもは劇的に変わり、人生の可能性が広がる――その本当の理由を聞いてみた。
本稿は、池江美由紀著『子どもの心と才能が育つ【池江式】魔法の言葉』(PHP研究所)を一部抜粋・編集したものです。
あいさつはしつけの第一歩
子どもに身につけさせたい生活習慣はいろいろありますが、まずは「あいさつ」ではないでしょうか。
人と接したときに、最初に交わすのがあいさつです。あいさつができるかどうかで、人に与える第一印象が大きく変わります。
たとえば、小さな子どもが人と出会ったときに、相手の顔を見ながら大きな声であいさつしたら、相手はどう思うでしょうか。
「まだ小さい子なのに、きちんとあいさつができて、なんて素敵な子だろう」
その子は相手から好印象を持たれるに違いありません。
逆に、人と会ってもあいさつができなければどうでしょう。幼少期なら、「まだ小さいから、あいさつができなくても仕方がないか」と許されるかもしれません。
では、その子はいつからあいさつができるようになればいいのですか? 小学生になったら? 中学生? 高校生? 社会人になれば?
時期がくれば、子どもは自然にあいさつができるようになるわけではありません。
いずれ社会に出たときに、あいさつは当たり前のこととして身についていなければならないのです。
習慣を身につけるのは、大きくなればなるほど難しくなります。だから、小さいうちからあいさつを欠かさないことが大事なのです。
あいさつをする親の姿を見せてきただけ
小さい頃からあいさつを身につけるために大切なことは何でしょうか。
子どもは親のまねをしますから、まず、親が人と会ったときには、必ずあいさつをすることが大事です。子どもは、親が口で教えたことだけではなく、日頃の態度や生きる姿勢から学んでいます。
たとえば、「こんにちは」「さようなら」といった基本的なあいさつに加えて、何かでお世話になった人に出会ったなら、
「先日はありがとうございました」
これからもおつきあいが続く人と別れるときには、
「お先に失礼いたします。また○○でお会いしたときには、どうぞよろしくお願いいたします」
などと、ひと言つけ加えたりします。
その時々の人との接し方は、なかなか子どもに教えられるものではありませんが、子どもはちゃんと親の姿を見ているものです。
高校1年生だった長男は、璃花子が新しいスイミングスクールに通うことになって、妹のコーチに大会で会ったとき、
「これから妹がお世話になります。よろしくお願いします」
とあいさつしたと聞きました。
コーチに、「立派な息子さんですね」と言われて、大変うれしかったです。
璃花子は、東京オリンピックの会場に入るとき、警備の方に「暑いのにお疲れさまです。いつも警備をありがとうございます」と必ず声をかけていたと、警察の担当の方からあとでお手紙をもらって知りました。
私は子どもたちに、「こういうときには、こんなあいさつをしなさい」と教えた覚えはありません。ただ、「きちんとあいさつをしようね」と教え、あいさつをする親の姿を見せてきただけです。
子どもは親の後ろ姿を見て、自分なりに考えて、自分が出合った出来事のなかで応用していくのだと思います。
あいさつは人生の可能性を広げる
私の教室では、来たときと帰るときは、必ずあいさつをするのがお約束です。事前に親御さんには説明し、理解していただいていますので、あいさつをしなければ、子どもは教室のなかに入れません。
あいさつをしない生活が当たり前になっている子どもにとっては、とまどいや恥ずかしい気持ちがあって、あいさつ一つが大きな壁になることがあります。
でも、やがてこの社会できちんと生きていくためには、それを乗り越える必要があるのです。
幼児教室は親子同伴です。子どもがあいさつをしなければ、お母さんだけが教室に入ります。子どもはお母さんと離れて、玄関に残り、講師にあいさつをするまでなかに入れません。
「入りたい」と言って大泣きしても、あいさつをして入室するのがお約束ですから、聞き入れてもらえません。
こうして子どもは、世の中は何でも自分の思いどおりになるわけではないことを知ります。
そして、自分のやりたいこと(教室に入ること)を実現するためには、するべきことをする(あいさつをする)必要があることを学ぶのです。
あいさつができるようになると、子どもはものすごく変わります。今まで恥ずかしそうにもじもじしていた子が、あいさつができるようになると、教室での態度が一変します。明るく、元気に、積極的に発言し、レッスンに参加するようになります。
外でもあいさつができるようになりますから、多くの人にかわいがってもらえます。すると、お母さんもうれしい。お母さんの喜ぶ姿を見ると、子どもはもっとやる気になって、ますますがんばります。
こうして好循環が生まれ、その子の視野は広くなり、人生の可能性が大きく広がっていくのです。
家庭でもあいさつを習慣づける
2人のお子さんを私の教室に通わせている親御さんからは、こんなメッセージをいただいています。
お教室に入る前に、「あいさつ」が大きな声でできるようになってから、子どもたちは明るくなりました。
最初は2人とも「おはようございます」が言えず、教室の前でもじもじしていました。
おうちではできても、いざ教室になると言えない……。
先週は言えたのに、今週は恥ずかしい……。
自分の声を家族以外の人に届けることに、勇気が必要だったのかもしれません。
当初は教室のお約束でしていた「あいさつ」は、月日が経つと、いつのまにか私が声をかけなくても元気よくできるようになりました。最近ではご近所で会う方に自分からあいさつができるようになっています。
エレベーターで乗り合わせた方に「お先にどうぞ」と言って、相手の方に笑顔で「ありがとう」と言ってもらえることに喜びを感じているようです。
コミュニケーションの第一歩であるあいさつの力を、小さな頃から身につけられたことに大変感謝しています。
私は長年、幼児教室をやっていますが、子どもたちがそれまでの殻を破って、正しい方向で自分を発揮する姿に接すると、とてもうれしくなります。お子さんの未来を拓くためにも、ぜひ家庭のなかでもあいさつを習慣づけてください。
文/池江美由紀 サムネイル/写真:松尾/アフロスポーツ
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