「チケット代は22万円」「服装は超ミニのプリーツスカートで…」日本とこんなに違う、多様すぎるアメリカの音楽フェス事情!
集英社オンライン / 2024年7月26日 17時0分
〈〈子どもと一緒に行ける2024おすすめ音楽フェス3選〉子どもは大音量で大丈夫? 必携アイテムは? 子連れフェスで事前チェックすべき4つのポイント!〉から続く
夏の風物詩となった「夏フェス」の時期がやってきた。コロナ禍の自粛期間を経て、昨年から本格的に各地のフェスが復活。年間を通して日本で行われている音楽フェスは150以上あるというから、もはやフェス大国である。アメリカのウッドストックやイギリスのグラストンベリーなど、もともとは海外で始まったフェスだが、日本でこれだけ根づいた今、海外とはどのような違いがあるのだろうか? アメリカのフェス事情に詳しい、NY在住の音楽ライター・中村明美氏に話を聞いた。
【画像】超ミニスカートを履いた若者が多かったのが今年の米フェスの特徴
行くことが「特権になっている」コーチェラ
「アメリカのメジャーなフェスといえば、ロラパルーザ、ボナルー、ガバナーズ・ボールなどがありますが、一番有名なのはやはりカリフォルニア州の砂漠地で行われるコーチェラです。毎年4月に開催されるのでフェスシーズンの始まりとして注目も集めるし、規模も最大。1日で10万人から12万人の観客が集まり、それが2週連続で、それぞれ3日間ずつ(計6日間)開催されます。
1999年から始まったコーチェラはもともとオルタナ系ロックのフェスでした。
ただ、ヒットチャートの主流がロックからヒップホップ、R&B、ポップに変わっていったので、ロックをメインにしても主要なお客さんである20代が取り込めなくなって、ビヨンセやハリー・スタイルズなど大衆的なアーティストが出るようになり、今は世界的にもメジャーなフェスになっています。
コーチェラが他のフェスよりも人気の理由はポップでも音楽ファンを納得させるかっこいいアーティストを選んでること。主催者のセンスとこだわりがあって、人気があれば誰でも出られるわけじゃないんです。
例えば今年はシャキーラ(何度もグラミー賞を受賞しているコロンビアを代表するシンガー)が出たかったらしいんですけど実現しなくて。コーチェラが守っているステイタスというのはいまだにあると思います」(中村さん、以下同)
そんな世界一の音楽フェスと言っても過言ではないコーチェラだが、実際に参加してみた中村さんは決して楽しいだけではなく、過酷な一面もあるという。
「砂漠で開催されるので死ぬほど暑い(夜は逆に寒すぎる)。チケット代は3日券のみの発売で一般は599ドル(日本円で約9万5000円)ですが、1399ドルのVIPチケット(日本円で約22万円)で入らないと、かなりハードです。
ゴージャスなラウンジなどが利用できるVIPテントの待遇はすごくよくて、ステージの真ん中から半分くらいがVIPエリアなので真ん前からステージが見れるし、パーキングも会場へのアクセスがいい場所が取れるので、ほんと『お金が全て』みたいな世界です(笑)。私も何度か行きましたけど、暑くて暑くてひたすら水分を補給していました。
来場客も真の音楽ファンというより、ファッションで来ている人が多い印象です。YouTubeで全世界に配信もしているから、広告効果はすごくあって、企業スポンサーのブースも多いし、会場に入った瞬間にお金がかかっているということがわかります。それを現場で見られる観客は、ある種の特権ですよね」
日本の多くのメガフェスと同様に業界のドル箱事業となった音楽フェスに、企業スポンサーが続々と参入する潮流は加速しているが、コーチェラの人気と成功は別格といえる。
「チケットは開催の1年前には発売開始していて、誰が出演するかもまだわからないのに、2025年のチケットはキャンセル待ちになってますね。あの場に行くことが楽しいというパーティ感覚と、コーチェラだから間違いない面子が出演するだろうというブランド力の高さでしょうね。
でもコーチェラは音楽好きのためのフェスという初心を忘れたわけではなくて、レイジ(・アゲインスト・ザ・マシーン)の復活ライブが2020年に行われるはずだったし(新型コロナの影響で中止)、大金積んでトーキング・ヘッズの再結成をオファーしようとしたみたいです。
アウトドア仕様のフェスファッションは日本だけ!?
「もうひとつテネシー州マンチャスターの郊外で行われている音楽フェスがボナルーで、音楽ファンにとっては1番楽しいフェスかも。音響システムもいいし、なにもない農場で夜中までジャムセッションをやっているので、どっぷり音楽に浸かるならこちらのフェスがいいかもしれません」
ところで、日本ではフェスファッションとしてアウトドア仕様のシューズや防水のゴアテックスのブルゾンが定番化しているがアメリカではどうなのだろう。
「ファッション的にはこれまでショートショーツのデニムにTシャツが多かったんですけど、去年はY2Kの影響でカーゴパンツとか、わりとユルッとした服装が流行ってました。
それが今年、ガバナーズ・ボールに行ったら超ミニのプリーツスカートを履いてる子が多くてびっくりしたんです。なんでかなと思ったら、オリヴィア・ロドリゴ(アメリカの女性シンガー)の影響。彼女はパンク少女みたいにミニスカートにドクターマーチンを履いてるんです。
あと、サブリナ・カーペンターという、「Espresso」が全英シングルチャート1位になった、今最も人気があるアーティストが、そのフェスにも出ていたんです。彼女もめちゃ短いミニスカートを履くので、その影響もあるみたいですね。
そのときどきでフェスのファッションも変わりますけど、日本のキャンプルック的なファッションは皆無ですね。都市型のフェスが多く、例外のボナルーは農場で開催されるので、雨が降ると地面はぐちゃぐちゃにはなりますが、日本ほど厳重に準備してる人はあまり見たことがありません。
そういえば、今年はニルヴァーナのTシャツを着ている若い子が多いんですよ。去年はAC/DCのTシャツが流行っていて、絶対AC/DCのファンじゃないだろうって若い男の子が着ていたからどうしてって聞いてみたら、『安かったから買った』って。
今ユニクロやファストファッションのブランドが、バンドTシャツをいっぱい作ってるんです。その子はお父さんに1、2曲聴かせてもらったことはあるけど、別にファンじゃないみたい(笑)」
今アメリカでアツいフェスは?
中村さんによると大型フェスが流行から飽和状態を経て過渡期を迎える反面、ある特定の年齢層に向けたフェスや音楽ジャンルを絞ったフェスも増えてきているという。
「最近ルミネート(旧ニールセン・サウンドスキャン。アメリカのマーケティング会社)が、世代ごとにライブに使っている金額の統計を発表して、1位が15歳から27歳のZ世代、2位が44歳から59歳のX世代、3位が28歳から43歳のミレニアム世代、4位が60歳から78歳のベビーブーマーだったんです。
なのでフェスで最大公約数を集めようとすると、メインストリームであるポップ、ヒップホップ、それから女性アーティストやラテン系、K-POPなどが自然と増えます。
ただ、コーチェラは今年のチケットが数年ぶりにソールドアウトにならなかったんです。ヘッドライナーが弱かったというのもあるけど、コロナ禍前まではフェスも単独ツアーもすごい勢いで盛り上がり続けていたのが、コロナ期の停滞を経て、それを取り返そうと空回りしてるという気がしなくもありません。
でもX世代、90年代に音楽聞いてた人たちは、統計でも出ているように今もライブに行く傾向が強いから、パンクロックバンドばかり集めたウェン・ウィ・ワー・ヤングとか、イギーポップが好きな人はこういうバンドも好きだろうっていうラインナップを集めたフェス、クルー・ワールドとか、合わせ技的なものも出てきて、それはそれで成功しているんです。
多くのフェスの観客の中心は20代ですけど、ヘッドライナーにロックバンドが出ると急に年齢層も上がるんですよね。50代、60代に。その世代の人たちは子供も連れてくるから、ファミリーみんなで楽しんでいます」
「私は毎年ひとつは新しいフェスに行くことにしていて、去年はタイラー・ザ・クリエイター(数々の音楽賞を受賞している音楽プロデューサー&アーティスト)が10年くらい前から手掛けているフェス(キャンプ・フログ・ノー・カーニバル)に初めて行ったんですけど、彼のおしゃれさと遊び心が隅々までわかるような空間ですごく楽しかった。
今年は、去年ラナ・デル・レイやボーイジーニアスが出たオール・シングス・ゴーという女性アーティストとクィア系のフェスを楽しみにしてるんです。去年が初年で、チケットは即完だったので、今年は開催地を増やしました。LGBTQやクィア文脈で人気のミュージシャンが出るフェスが今アツいんですよね」
フェス文化が盛り上がる日本だが、大衆向けのアーティストが出演する最大公約数的な音楽フェスが増えているだけで、どのイベントの出演者も同じ顔ぶれという気もしなくもない。フェス文化が根づいた今、これから個性的なラインナップが増えれば、日本のフェスももっとおもしろくなると思う。
取材・文/高田秀之 写真/中村明美
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