女性向け「災害用レディースキット」のニーズが増加。販売会社がコンドームを入れた理由と「意外な使い方」
集英社オンライン / 2024年7月31日 8時0分
東京都では大規模災害などに備えて「東京都帰宅困難者対策条例」が定められていて、事業者に従業員の3日分の食糧などの備蓄の努力義務が課せられている。東日本大震災以降、水や食料を備蓄するなど都民の防災意識は高まっているが、生活必需品として生理用品など「女性のための衛生用品」を備蓄している企業はどれくらいあるだろうか? 「災害用レディースキット」を企業向けに販売している株式会社オカモトヤの代表取締役社長・鈴木美樹子氏に開発の思いを聞いた。
企業の女性活躍推進のサポートとして開発
「災害用レディースキット」は災害時に便利な女性の衛生用品がセットされた、同社が開発した防災用品だ。
創業112年の同社は、オフィスの空間設計、ICT構築、文具事務用品販売などを行う商社だが、社会貢献に直結するような事業で他社と差別化を図っていこうと考えた中で、生まれた事業が「Feline(フェルネ)」だ。
「フェルネは女性活躍推進やフェムテック商品の取り入れなど、女性のQOL向上につながる取り組み=“フェムアクション”の選択肢を増やし、実施のハートルを下げ、社会全体のフェムアクションを増やすことを目指す事業です。
私がちょうど社長に就任する2022年4月に女性活躍推進法が改正されましたが、まだ何をしていいのか手探りの中小企業は多かったです。そこでそんな企業の悩みをサポートしていくのがフェルネで『災害用レデイースキット』はその一環として開発されました」(鈴木さん、以下同)
「災害用レディースキット」が誕生したきっかけは、取引先の工場から女性向けの衛生用品をセットにした防災用品を作ってほしいという依頼だった。
その頃、同社では、乾パンや水などの防災用品は納品した実績があったが、まだ女性向けに特化した防災用品はなかった。
「東日本大震災では、水や食料以外にマスクなどの衛生用品の不足が問題になりました。また、企業では帰宅困難者のため、災害があった際に他の拠点に送れるようするなど災害用品の備蓄を強化するようになっていて、防災への意識が高くなっていました。
工場からの依頼はフェルネを立ち上げる直前でしたが、女性用の防災用品は今後もほかの企業からニーズがあるのではないかと思い、開発しました。
当時、その工場の営業の担当は男性でしたが、同じチームの女性社員をプロジェクトに加えて、女性目線で必要なものを開発し、女性のための防災用品『災害用レディースキット』が誕生しました。
これを導入していただくことで、企業の女性活躍推進の取り組みをサポートできますし、女性が安心して働ける環境づくりのお手伝いができると思っています」
セットの中にはオリジナルプロダクトのコンドームをセット
「災害用レディースキット」は、災害時でも3日間、オフィスや避難所で女性が快適に暮らせるよう、 12種類の衛生用品がセットになった「3days Box」、10種類の衛生用品を詰めた「1day スリムBox」(2cmの隙間さえあれば収納可能)、急な出張やお泊りなど、災害時に限らずフェーズフリーで活用できる、8種類の衛生用品がセットになった「ミニマムキット」の3種類ある。
生理用品、リフレッシュシート、メイク落とし、カイロなど女性にとって災害時にあると心強いものばかりだ。
「仮に防災用品の管理や窓口が男性でも、これなら中身がわからないようになっていて、生理用品を男性から受け取るのに抵抗がある人でも受け取りやすいようになっています」
また、こうしたセットの中にはコンドームが入っているものもある。
「災害時において、避難所などで女性が性暴力、暴行事件を受けるという事態が起こっています。何か予防できる方法がないかを考えていたときに、本来は緊急避妊薬をセットしたかったのですが、日本の法律では処方箋がないといけないものなので叶いませんでした。代案を考えて、ご自身を守るものとしてというメッセージを形にしたくてコンドームをセットにしました。
もちろん、企業側がコンドームは不要と言われれば、外して納品することもできます」
また、コンドームのパッケージの裏には、止血や水を汲むなど災害時のコンドームのさまざまな使い方も紹介していて、細かい配慮もされている。
こうして誕生した「災害用レディースキット」は現在、多くの企業から導入のオファーを受け、納品されている。
「実際に被災された地域の企業や事業所がある企業は、災害時に女性用の衛生用品は、なかなか手に入れることができなかった経験があるので、導入をすぐに検討されることが多いですね。
誰もが生きやすく、安心して働くことができる風土づくりは企業にとって大切なことだと思っています。『災害用レディースキット』は、あくまでもそういった取り組みの一つとして、女性活躍推進を考えてもらえるきっかけにしていただきたいですね」
同社は、今年1月に本社を移転し、働く時間に一時的に独りになり、モードチェンジできる場所「セルフメンテナンスルーム」やモードチェンジを後押しする「アメニティバー」作るなど、新しい働き方を提案するライブオフィスを展開している。
「『働く空間』と『働かない空間』を融合し、新しい働き方の概念として、働く時間にモードチェンジできるブースを設置しました。
3つのタイプがあり『リラックしたい』『少し仮眠したい』『ホットフラッシュによるほてりを落ち着かたい』など用途と体調を合わせて選択することができます。ブースの中で何をするかを定義しない形状と外装にすることで、ONとOFFのグラデーションを設計。
また入口と出口を分けることで使用者同士が顔を合わせないで済むようになっています」
アメニティバーではアロマディフューザーやストレッチ器具などのアシストグッズとマウスウォッシュやリフレッシュシートなどのアメニティグッズがあり、社員が気軽に立ち寄れるようにオープンバー形式になっている。
「女性活躍推進はあくまでも多様性の一歩なので、誰もが利用できて、働きやすい環境づくりのサポートを今後もさまざま角度で提案していきたいと思います」
取材・文/百田なつき
写真提供/株式会社オカモトヤ
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