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〈サンマルクvsドトール“パスタ戦争”勃発〉店舗拡大めざす「鎌倉パスタ」、ライバル「洋麺屋五右衛門」追撃のキーワードは”パン・和風・スイーツ”

集英社オンライン / 2024年7月31日 8時0分

「チョコクロ」でおなじみのサンマルクカフェを運営するサンマルクホールディングスが転換期を迎えている。同社の主力である「サンマルクカフェ」の立て直しに成功し、運営効率改善フェーズに入った。今後の拡大と強化を狙うのが「鎌倉パスタ」だ。この分野の競合にはドトール・日レスホールディングスが運営する「洋麺屋五右衛門」がある。競争激化は必至の様相だ。

【画像】サンマルクカフェといえばコレ

 

ビジネスモデルが似ているドトールと回復スピードで差が生じた理由は?

サンマルクは2024年3月期の売上高が前期比11.6%増の645億円だった。営業利益は11倍の26億円に急増。2期連続の2桁増収も相まってコロナ禍からの復活を印象づけた。



なお、2021年3月期は4割近い減収となって売上高は400億円台に沈み、40億円以上の営業損失を計上していた。

サンマルクカフェは繁華街を中心に出店し、低価格の商品を販売。高回転させて稼ぐビジネスモデルだった。これはドトールに近いものだ。ただし、ドトールはフランチャイズが主体のため、ドトール・日レスの回復スピードは速かった。

サンマルクのように直営店主体の場合、不採算店を閉鎖しなければならない。退店には原状回復費用など多額の経費が必要なうえ、賃貸借契約の関係で即時退去ができないケースがほとんどだ。

 しかし、サンマルクの店舗数は2024年3月末時点で294。2020年3月末の405店舗から実に111店舗も減少している。コロナ禍で大量閉店を実現した。その甲斐あって、2024年3月期の喫茶事業の営業利益は前期の6倍となる16億円に跳ね上がった。営業利益率は6.1%。2020年3月期は7.6%だった。コロナ前の水準まであと一歩のところにまで迫っている。

店舗数がほぼ同じ「鎌倉パスタ」と「五右衛門」

サンマルクカフェの立て直しは、不採算店の閉店だけによるものではない。客単価の引き上効果も大きかった。サンマルクが運営する、1店舗当たりの売上高は2024年3月期が8700万円。2020年3月期は7600万円だったので1割以上高くなっている。

サンマルクカフェの2019年3月期の顧客単価を100とした場合、2024年3月期は136とおよそ1.4倍に上がっている。一方、客数を同じく100とした場合は81まで下がった。客数の回復を待たず、単価を引き上げることで店舗の収益改善を行ったのだ。

コーヒーの単価を単純に値上げしたことはもちろん、主力商品のチョコクロに「桔梗信玄餅」など別のテイストを加えてプレミアム化して単価アップを図っているのだ。しかし、客数が戻らない以上、出店攻勢に出て増収を図るのは悪手。コロナ禍の悪夢を繰り返すことにもなりかねない。

サンマルクは新中期経営計画の基本方針として、「サンマルクカフェ業態を中心とした運営効率の改善」を掲げた。セルフレジの導入などによって経費削減を進めるというものだ。
コーヒー豆の価格が高騰していることを鑑みても、カフェ業態を継続的に出店するのは難易度が高いだろう。

そこで、パスタ業態に白羽の矢を立て、鎌倉パスタを出店。派生業態との相乗効果でパスタ業態のポテンシャル最大化を狙うというのだ。

サンマルクは2029年3月期に売上高800億円という目標を立てている。現在の1.2倍に相当するものだ。パスタ業態はその中核を担う存在になるだろう。

鎌倉パスタは2024年3月末時点で200店舗ある。ドトール・日レスの洋麺屋五右衛門は2024年5月末時点で213。2つのブランドはほぼ同じ水準で並んでいるのである。

麺類の中でも人気が高いパスタ 

サンマルクがパスタ業態を軸に成長するという経営戦略には納得感がある。パスタチェーンには伸びしろが残されているように見えるからだ。

市場調査を行うマイボイスコムは、外食でよく食べる麺類についての消費者調査を2022年に行っている(「麺類に関する調査」)。飲食店で食べる麺類の中で、最も人気が高いのは「ラーメン、中華麺」で56.7%。「パスタ、スパゲッティ」は34.0%だ。

さらに麺類を食べる頻度の調査では、ほとんど毎日が3.9%、週4~5回が9.5%、週2~3回食べる人は全体の33.3%であり、この3つを合わせると半分近くに達する計算になる。日本人の麺類好きはデータ上にも表れているのだ。

また、週1回が26.9%、月2~3回は17.1%だ。このデータを基に1人当たりが1週間に麺類を食べる頻度を割り出すと、およそ1.9回となる。じつに週2回近く麺類を口にしているのだ。

先ほど出した好きな麺類の種類の割合は、複数回答によるものだ。それを総回答数で計算し直すと、「ラーメン、中華麺」は27.9%、「パスタ、スパゲッティ」は16.8%となる。麺類を食べる頻度は週に1.9回だった。100人いれば、週に190杯分の麺市場があるということだ。

この100人が一週間に好きな麺類だけを食べると仮定すると、「ラーメン、中華麺」は54杯、「パスタ、スパゲッティ」は32杯消費されることになる。その差は1.6倍。

実は全国に存在するラーメン店は電話帳に登録されているだけで2万4000を超える。一方、イタリア料理店は8000ほどしかないく、店舗数はラーメン店の方が3倍も多い。上の杯数の計算を「うどん」に当てはめると37杯となる。「パスタ、スパゲッティ」との差はほとんどないが、うどん店は全国に1万8000近くあるのだ。

店舗数と日本人の食の好みをベースに考えると、パスタを扱う店は出店余地が残されていると言えそうだ。

パンの提供で男性客を魅了できるか 

鎌倉パスタは「生麺」であることにこだわり、多くの店舗で「焼き立てパン」が食べられる。この2つが五右衛門との最大の差別化要因だ。

サンマルクはカフェで提供するベーカリーに強みがあり、パスタ業態と組み合わせることによってその武器の効果を最大化した。パンはパスタのソースにつけて食べることができるため、自然に単価アップと顧客満足度を高めることができる。

鎌倉パスタはショッピングモールに多く出店しており、必然的にファミリー層が主力ターゲットとなる。パンによって満腹感を提供することができれば、男性の満足度は上がるはずだ。

一般的にスパゲッティなどのパスタは圧倒的に女性に好まれるが、「鎌倉パスタは満腹感が得られる店だ」という認知が広がれば、男性の選択肢に入る余地は大きくなるだろう。父親が店舗選びの決定権を持っている場合でも、鎌倉パスタの入店確率を上げることができるというわけだ。

サンマルクの調査によると、鎌倉パスタは東京の認知度が70%弱とまだ高くはない。ブランド認知度を上げる取り組みを強化している最中だ。五右衛門はラーメンやうどんのような和風テイストに寄せ、男性客からの支持を得やすいようにしている。提供するメニューでターゲットの幅を広げているのだ。

そこでサンマルクは「おだしもん」という鎌倉パスタの派生業態を開発した。提供するパスタは和風だしを使ったもので、テイストはラーメンに近い。和風スパゲティという意味では、五右衛門と被る。ただし、おだしもんは、さらにスイーツを充実させて喫茶需要の取り込みも図り、鎌倉パスタが出店対象とならない、オフィスビルなどへの展開を計画している。客単価は鎌倉パスタよりも1割以上高いという。

サンマルクとドトール・日レスのパスタ業態における激しい戦いが幕を開けた。

取材・文/不破聡 サムネイル写真/shutterstock

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