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「カービィボウルはRTAでも数学だ」ゲームなのに、研究の深さはもはや"学会"級⁉ 日本で2番目の『カービィボウル博士』を自負するRTA走者のスゴ技とは

集英社オンライン / 2024年8月3日 18時0分

年の瀬に130時間ぶっとおしで開催! 80以上のタイトルが集まるRTAゲーマーたちの“草オリンピック”が超人すぎる!〉から続く

ゲーム開始からクリアまでの実時間を競い合うRTA(リアル・タイム・アタック)。時に、そのやりこみは単なる遊びの領域を超え、研究と呼ぶのがふさわしい場合さえある。「3つのボタンしか使わない」マイルールでカービィボウルのRTAを行う美少女さん。夜勤の合間にひたすらカービィボウルをやり込み、長く深い研究の果てにたどり着いた境地とは…。

【画像】極秘ノートを初公開…自作のチャート(攻略手順)がまとめられた手書きの研究ノート

「理屈上はできるんで、できるんです」

RTA(リアル・タイム・アタック)という遊び方がある。やり直しや一時停止も含めて、スタートからクリアまでの実時間を計測する…。ただそれだけなのだが、8時間ぶっ通しでのプレイをしたり、なぜかゲーム機のほうを数百台集めたりと、作品やプレイヤーによって目指す高みと登り方が異なるのがRTAの魅力の1ついえる。



美少女(ペンネーム)さんのRTAは、まさに研究だった。

――美少女さんの行っているRTAについて教えてください。

美少女さん(以下、同) 「3つのボタンだけでカービィボウルRTA」といいます。その名の通り、カービィボウルを3つのボタンしか使わないでなるべく早くクリアするカテゴリーです。

――ボタンが3つしか使えないと、どうなるんですか?

打つときは、カービィをひたすらまっすぐに飛ばすか、打ち上げるか、それしかできません。方向を自由に決められないので、2打目以降にカービィが向く方向まで計算して、ショットしなくてはなりません。

打ち出したあとは「がんばれボタン」と「コピー能力」が使えるので、それらと壁、敵キャラ、回る床などのステージギミック、あらゆる要素を使い倒してカップインを目指します。

――どうしてそんなことを?

もともと、3つのボタンしか使わない遊び方はTAS(ツール・アシステッド・スーパープレイ※)でプレイしている先駆者様がいまして、これはRTAとしてもやれそうだなと。

――あれ? TASってざっくりいうと、コンピューターを使って人間じゃ実現がほぼ不可能なスーパープレイをする、あれですよね。

そうです。でも理屈上は人力でも再現できるので、できちゃったんです。練習すれば、誰でもできるようになると思います。

(※)ツール・アシステッド・スピードランとも

 「天啓が降りてくるんです。『こっちの方が早いよ』って」

――とにもかくにも、その練習が大変そうです。美少女さんも、結構な時間を費やしたのでは?

RTA in Japan(※)への出場が決まった当時はコンビニの夜勤をしていたのですが、あまりお客さんが来ない店舗だったので、空き時間にひたすらカービィボウルをプレイしていました。家に帰ってからも含めると、1日だいたい8〜10時間はやっていましたね。

同じRTAをやっている人がほとんどいないので、攻略方法を全部自分で組まないといけない。全218ホール分の動きの最適化が、とても大変でした。

(※)オンラインとオフラインのハイブリッドで行われる国内最大級のRTAイベント

練習を繰り返していると、だんだん頭の中でカービィボウルのステージを再現できるようになるんです。

次第に、プレイしている時間より、頭の中でシミュレーションをする時間が増えていって。

早そうな攻略方法もね、気づくとか、思いつくとかではなくて、天啓が降りてくるんです。「こっちの方が早いよ」って。実際にプレイして検証してみると、本当に早い。

――相当やりこまれているからこそ、ですね

カービィがどういう動きをするのか、しっかり把握できているからというのもあると思います。カービィボウルでは時折、カービィが謎の挙動をしてしまうんです。突然、上空に吹き飛んだり、バンパーにぶつかって加速したり。

ただ、内部の物理演算はきちんと設定されているので、条件さえ合わせれば不思議な挙動もちゃんと再現できます。再現ができるなら、その仕様を解明して防ぐこともできる。RTAにおいて、想定外の挙動はミスにつながりますから、徹底してミスをつぶしていくんですね。

練習中におかしな動きをした際は、原因究明のため、2時間かけて1フレームずつ録画を検証することもありました。

カービィボウルの仕様については有志がwikiをまとめてネット上に公開しているものもあるのですが、それとは別に、私が見つけた仕様もあるんですよ。カービィボウルの知識なら、日本で2番目に詳しい自信があります。とくにフレーム周りについては研究者があまりいなかったこともあり……

――発見者「俺」というやつですね。内容のほうは、おそらく専門的かと思いますので別の機会にお伺いできれば……

「その仕事を見つけた瞬間、前職を辞めさせてもらいました」

――聞くところによると、カービィボウルの研究者の集まりは”学会”と呼ばれるそうですね

学会長——最初におはなししたTASプレイの先駆者さん——が発端というか原因なのですが。その人曰く、「カービィボウルは数学だ」と。その発言が転じて、カービィボウルのスーパープレイを人力で再現する人たちを「学会員」と、集まりを「学会」と呼ぶようになった、と私は認識しています。

――学会の集まりもあるのですか?

交流はとくにありません。面白いことを発見した動画があったら、有識者が自然に集まってくるくらいです。

私が出場したRTA in Japanのアーカイブ動画も学会長が見てくれていたようで、コメントに「授業参観」と書かれていました。

ちなみに、日本で1番カービィボウルに詳しいのはその学会長だと思います。私は、2番目ですが、カービィボウル世界の原理を聞かれたら、基本なんでも答えられますよ。

――ところで、今はなんのお仕事を?

就労支援施設で、eスポーツや動画投稿の講師をしています。もともと、大学で介護や教育関連を専攻していたことに加え、自分のこれまでの経験を生かせるまたとない機会だったので、採用情報を見つけたその場で「すみません、仕事を辞めさせてください」と前の職場に伝えました。

職場では自分の活動をオープンにしていて、イベントに出ることを話すと利用者の方が「すごいっ」と褒めてくれるんです。

取材・文/笠木渉太

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