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〈デパートうなぎ弁当・集団食中毒〉土用の丑の日の“プチ贅沢”で90代女性が死亡、計161人が発症「手袋使用はしてなかった」加熱しても毒素が死なない黄色ブドウ球菌の恐ろしさ

集英社オンライン / 2024年7月31日 11時59分

横浜市港南区の京急百貨店内のうなぎ屋で販売されたうなぎ弁当で集団食中毒が発生し、少なくとも161人が症状を訴え、うち1人が死亡した。横浜市保健所は発症者の便から黄色ブドウ球菌を検出し、調理過程で混入したとみてうなぎ屋の営業を禁じる措置を取った。「土用の丑の日」のプチ贅沢が暗転し、患者らは七転八倒の苦しみにあえいだ。

〈画像でみる〉現場となった京急百貨店と地下の販売所、秘伝のタレと備長炭で焼き上げた“ふっくら”がウリのうなぎ

10歳未満の子どもから90代までの計161人が発症

「百貨店の集計では、土用の丑の日の7月24日と25日に、地下1階でうなぎ弁当とかば焼き計1761個が販売されましたが、これを食べた人が次々と症状を訴えました。



横浜市保健所は7月29日夜までに10歳未満の子どもから90歳代までの計130人が発症したことを確認し、うち90代の女性1人が死亡しました。

女性の死亡原因と食中毒との因果関係は確認できていません。また京急百貨店と伊勢定が得ている情報では、有症者は30日夜までに161人に上り、それ以降も増える可能性があります」(社会部記者)

「土用の丑の日はお客さんが多いため、地下1階では常設の販売所に加え、別にもう一か所、特設の販売スペースでも売りました」(伊勢定関係者)という。

この地下1階で売られた弁当などに異常があった。
 
「弁当などを食べた人が下痢や嘔吐を始めたのは7月24日午後4時ごろです。24日の深夜12時ごろに発症した2人が救急車で搬送され、消防から横浜市保健所に通報が来たんです。何を食べたのか聴き取ったところ、うなぎ弁当の可能性が浮上し、25日午前に店舗側に連絡しました。

その時点では食中毒と断定できていなかったので、まず営業自粛を店に求めました」(横浜市健康安全課担当者)

「健康被害を与えてしまったことは事実で、厳しい処分も覚悟しています」

10階店舗で食べた客に発症者は確認されていないが、土用の丑の日の大量販売のため、10階店舗で下処理したうなぎが地下1階に持ち込まれて売られていたことが分かり、保健所は25日から10階と地下1階の両方に連日立ち入り検査を実施。

発症者5人から黄色ブドウ球菌を検出したため29日午後4時半すぎに営業禁止処分を出し、百貨店と伊勢定は同日夜に記者会見を開き問題を発表した。

「京急百貨店の金子新司社長は『この度は誠に申し訳ございませんでした』と頭を下げ、非を認めています。

質疑の中で、店のマニュアルでは弁当を盛りつける際に手袋を着用することが決められていたのに、当日は『手袋使用はしてなかったと報告を受けている』と伊勢定の取締役が説明しました。手袋の不使用が原因かどうかは分かっていませんが、24、25両日に普段とは違う衛生管理上の手抜きがなかったかが原因究明の焦点になっています。

また、販売したうちの450個には消費期限の誤表示やアレルゲンの表示漏れがあったことも百貨店と伊勢定は認めました」(社会部記者)

会見翌日の30日、10階店舗では伊勢定関係者が沈痛な表情で取材に応じた。「きょうも保健所の立ち入り検査は続いています。私どもはその結果を受け指導に従わなければならないので、衛生管理態勢も含め会見で発表した以外のことは言えないことを理解してください」と述べ、詳しい説明を拒んだ。

ただ、責任を感じていることも強調し「今は店舗の再開よりもまずはお客様への対応が大事です。このような不祥事を過去に起こしたことはなく、今回のことは真摯に受け止めています。亡くなった方がおられ、大勢の方に健康被害を与えてしまったことは事実で、厳しい処分も覚悟しています」と話した。

今回多くの人を苦しめた原因の黄色ブドウ球菌は、ヒトの手指の切り傷や鼻の中、のどなどに普段から居着いている「常在菌」だ。

「代表的な食中毒菌で、手指が触れるおにぎりなどの食品で食中毒を起こす危険が知られてきました。一定の温度や湿度があると増殖し、その際に毒素を出します。やっかいなことに一度この毒素が出てしまうと加熱しても毒素が死滅しないのです」と、横浜市健康安全課の担当者は話す。

このため、食中毒を防ぐには「顔や髪に触れた手で食材を触らないようにして菌をまず食品につけないことと、食品を10度以下の冷蔵庫に入れるなどして菌を増やさないよう意識することが重要です。手に傷がある人は食品に触れないようにする必要があるほか、マスクや手袋の着用も有効です」とこの担当者は注意を呼び掛けている。

「味は美味しかったわ。でももう、しばらくは買えないわね」

京急百貨店内で営業停止になった10階と地下1階の店舗では、献立の見本が店頭から姿を消し、おわびと説明が書かれた紙が貼り出された。

説明に見入っていた70代の女性は「私は週に3回はこの百貨店に来るし、一度うなぎ弁当を買って食べたこともあるの。味は美味しかったわ。でももう、しばらくは買えないわね。

今回は土用の丑の日でたくさん作って段取りが悪かったんでしょうね。90歳の方が亡くなったって聞いて気の毒にって思います。ちょっと贅沢して食べたうなぎが最後の食事になってしまったと考えると…」と話した。

別の70代の女性は「私たちの世代は土用の丑の日はうなぎを食べなきゃって思うから、買いに来る人はいっぱいいるでしょ。黄色ブドウ球菌って、どこにでもある菌だから、難しいですよね」と話した。

ただ、常在菌だからと言ってあちこちの店で食中毒が起きているわけではない。猛暑が続くだけに、客に提供される食品の管理には一層厳格な管理が必要だろう。

※「集英社オンライン」では、今回の事件について、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。
メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

X(Twitter)
@shuon_news

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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