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≪パリ五輪・卓球≫金メダル候補の張本・早田ペアも撃破。“初見殺し”の北朝鮮代表は無名の強者ぞろい…謎多き「独自スタイル」が玄人卓球ファンを魅了する理由

集英社オンライン / 2024年8月1日 8時0分

日本女子卓球・歴代最強選手は誰? エース・早田ひなが“超えるべき”パリ五輪での壁「まだ最強とは言い切れない…」〉から続く

さまざまな波乱が起こっているパリ五輪の中。卓球・混合ダブルスは、金メダル候補といわれた日本代表の張本智和と早田ひなのペアがまさかの初戦敗退をした。しかし、これは“まさか”ではなく、十分に起こり得る結果だったと卓球界ではささやかれている。

【画像】まったく情報のない北朝鮮ペアにまさかの敗退を喫した日本最強ダブルス

はりひなペアだけじゃない! 北朝鮮選手に負けた石川佳純・福原愛

卓球・混合ダブルスは前回の東京五輪から初めて採用され、その記念すべき最初の王者となったのが、水谷隼と伊藤美誠のペアだ。そして今大会、前評判ではその2人に勝るとも劣らないといわれた張本・早田ペアが、初戦で敗退。相手はランキング的には格下どころか、ランキングのない北朝鮮ペアだった。

試合の結果は、張本・早田が不調だったからではなく、単純にリ・ジョンシクとキム・クンヨンの北朝鮮ペアが素晴らしかった。張本の強打は返され、戦術を変えても対応されてしまう。ゲームカウントは1-4。北朝鮮ペアに実力で押し切られてしまったのだ。

実際、この北朝鮮ペアは決勝にまで駒を進めて、絶対王者の中国とも競り、負けはしたもののゲームカウントは2-4。しっかりと実力で銀メダルを勝ち取った。さらに北朝鮮選手は、シングルスでも躍動。世界ランキング168位のピョン・ソンギョンが、格上を次々と破ってトーナメントを勝ち進んでいる。

実は前々回大会のリオ五輪でも、日本は北朝鮮選手に手痛い敗北を喫していた。当時、世界ランキング6位で日本のエースだった石川佳純が、ランキング50位の北朝鮮選手、キム・ソンイにシングルスの初戦で敗北。

その後もキム・ソンイは勝ち進んでいき、3位決定戦ではランキング8位の福原愛と激突。そして福原を破り、銅メダルを獲得した。つまり、日本代表選手が北朝鮮選手に負けるのは今回が初めてではなく、これまでも大事な局面でやられていたのだ。

それにしても、なぜ北朝鮮選手はこれほど手ごわいのだろうか。彼らの強さの理由について、東京大学卓球部OBで、24時間営業の次世代卓球場『スマート卓球ジム』代表の大丸宙也さんに話を聞いた。

初見殺しの戦術で五輪を席巻する北朝鮮選手

大丸さんがまず指摘したのは、そもそも北朝鮮選手に限っては、世界ランキングが実力を反映していないという点だ。国際大会にあまり出場しない北朝鮮選手は、実際にはメダル候補の実力を持っていたとしても、ポイントを積んでないためにランキングは低い。そしてノーシードで五輪に現れ、シード選手を食ってしまう。

また、国際大会に出場しないことで、選手のデータがほとんどなく対策が立てられないことも、北朝鮮選手が有利になる要因となっている。

「北朝鮮選手は、ただ情報がないだけでなく、“そもそも誰が出場してくるかもわからない”という点も非常に厄介です。予選を勝ち上がってくるまで出場選手がまったく読めず、世界ランキングも低いので、トーナメントのどこに入ってくるか、実際に当たるかもわからない。

そういう選手への対策を、五輪直前期間に組み込むのはどの国も現実的に難しく、結果として北朝鮮が情報・対策の面で有利になりやすい、という構造があると思います」(大丸さん)

情報という点では、今回、負けてしまった早田が試合後に、「情報量が少なかったので、ちょっとプレーが迷ってしまった」とも話している。

もちろん、北朝鮮選手の強みは情報がないことだけではない。ほかの選手とは違う、独特な戦術で対戦相手を翻弄している。

「北朝鮮の五輪代表選手は、バック面に回転が特殊にかかるラバーを貼った異質戦型の選手が多いです。今回の北朝鮮ペアも、女子のキム・クンヨン選手がバックに異質ラバーを貼っていました。リオ五輪で石川、福原両選手を破ったキム・ソンイ選手も、カットマンでバックは異質ラバーでしたね。

異質の選手はいわゆる“初見殺し”のような戦型で、データが集まったり、対策されると少し勝ちづらくなるのですが、北朝鮮選手は前述の通り情報が少ないため、五輪で初対戦となると対戦相手にとってはかなり厳しい戦いになります」(大丸さん)

それなら日本や他国も、北朝鮮のように国際大会に出なければ五輪で勝ちやすいのか、と言うとまったくそうではない。

「普通、国際大会への豊富な経験なくして大舞台でパフォーマンスを発揮するのはほぼ不可能です。それを可能にしているのは、北朝鮮選手が日々の練習から国際大会並みの緊張感を持って、心・技・体ともに我々が想像もつかないような鍛錬を積んでいるからだと想像します」(大丸さん)

卓球玄人ほど北朝鮮選手に大注目!

そんな強い精神力と“初見殺し”の戦術に加えて 、今大会の北朝鮮選手は最新の卓球技術も取り入れていた。「いうなれば、北朝鮮の古きよき伝統的なプレースタイルに、卓球大国・中国の最新プレースタイルをうまく融合させたような印象を受けました」と、大丸さんは解説する。

ほかの国との交流を避け、国内で独自に進化している北朝鮮の卓球選手(中国との交流はあるかもしれないが…)。そのためか、実は卓球が好きな人ほど、ほかの国際大会ではあまりお目にかかれない北朝鮮選手の試合を楽しみにしているというのだ。

チャンネル登録者数179万人を誇るYouTubeチャンネル「卓キチちゃんねる」を運営する、国内最高クラスの卓球インフルエンサー・中西淳さんがいう。

「今回の北朝鮮選手のダブルスペアを見ても思ったのですが、2人ともやはり、ほかの選手にはあまりない特徴をもっています。日本選手みたいに、海外に出て様々な選手と交流して経験値を積んで強くなる方法もあれば、北朝鮮選手みたいに個性に特化して強くなる方法もあるというわけです。

正直、卓球をやっている人はみんな、北朝鮮選手のことを『強いし、おもしろい卓球をしているな』とみていると思いますね。そして、そんな北朝鮮選手のことが好きだと思います。大会に出てくるたびに、彼らはいろんな勝ち方を教えてくれますから」(中西さん)

五輪の舞台では文字通り、“生死をかけた”戦いをしていると言われている北朝鮮。勝つための強い執念が、新たな卓球の可能性を生み出しているのかもしれない。

取材・文/集英社オンライン編集部

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