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唾を吐きかけられることも…タクシー運転手のカスハラ問題、ライドシェア解禁、オーバーツーリズムの影響を運転手に聞いた【8月5日はタクシーの日】

集英社オンライン / 2024年8月5日 11時30分

「1年目で月収50万」「入社祝いに株をもらえる」「好きな時に休める」変わるタクシー運転手業 “おじさんの終の仕事”から、“若者に魅力的なスマートな仕事”へ…それでも辛い瞬間とは【タクシーの日】〉から続く

日本では1912年(大正元年)の8月5日に初めて誕生したとされるタクシー(営業開始日については諸説あり)。当時はT型フォード6台での営業だったとか。112年後の現在では多くのタクシーが走っているが、カスハラやライドシェア、オーバーツーリズムなどタクシーを巡る環境も大きく変わっている。8月5日タクシーの日に若手ドライバーに話を聞いた。

4年制大学から新卒採用で大和自動車交通に入社した若手社員

顧客による理不尽なクレームや暴力などの迷惑行為をさす、カスタマーハラスメント、通称「カスハラ」。2023年には国が定義を明確化、企業に対策を義務付ける法制化に動き出し、東京都も防止条例法案を今年9月の都議会に提出することを表明した。

だが「カスハラを受けない日はない」と被害を訴えるタクシードライバーもいるほど、タクシーという密室空間ではカスハラが横行しているという。

また、限定的ではあるものの遂に解禁となったライドシェアによる影響はあるのだろうか? 8月5日タクシーの日に、新卒で大和自動車交通に入社した2人の若者に話を聞いた。

唾を吐きかけられたことがある 

――これまで怖い思いをしたことはありますか?

早乙女陽美さん(以下早乙女) あります。車線を変えようとウィンカーを出して、ミラーで後方を確認して、充分な車間距離を保って車線を変えたんですけど、その瞬間後ろの車がものすごいスピードで突っ込んできて――。

――怖いですね。

早乙女 後ろの車が急ブレーキを踏んだので事故は回避できたんですが、後方にピタッとついたまま、何度もクラクションを鳴らされて。お客様を乗せていたので、内心ドキドキしながら車を走らせました。

前田永遠さん(以下前田) お客様をお乗せしているときは判断が難しいんですよね。ひとりのときはすぐに警察に通報するんですが。

早乙女 お客様に、「こういう状況なんですが、どうしましょう?」とお聞きしたら、お客様が、「車のナンバーを控えたから大丈夫ですよ。警察に通報しますか?」とおっしゃってくださって。その一言で気持ち楽になりました。

前田 基本的には、優しくていいお客さんばかりですよね。

――前田さんも怖い思いをしたことがありますか?

前田 お客さんを降ろすために車を停めたら、後ろのドライバーさんから怒られたことはあります。運転席の隣まできて窓ガラスを叩くので視線を合わせないようにしていたんですが、窓を下ろしたとき、“どんな人だろう?”と思って、ちらっと相手の顔を見たことがその人の怒りに火をつけてしまったみたいです。

周りにも人がいたので、“その場で暴力を振るわれることはないだろう”と冷静に思いながら、「すみませんでした」と謝ったら、それで相手が引いてくれました。

――ハラスメントを超えた暴力行為です。

早乙女 私も酔ったお客さんが、車の中で寝入ってしまって。警察の方を呼んで起こして頂いたところまではよかったんですが、起きるなり「金は払ったからな」と大きな声で叫び出して…。

“よくそんなことが言えるな”と呆れてしまったのですが、その態度が気に入らなかったようで、唾を吐きかけられたことがあります。

シートを蹴飛ばすような外国人観光客はいない

――4月からタクシー事業者の運行管理のもと、一般ドライバーが自家用車を使って有償で送迎する「ライドシェア」が始まりましたが、その影響は感じますか?

早乙女 いまのところほぼ影響はないと思っています。

前田 自分は「一般車に乗るのはちょっと怖い」と話すお客様が多いように感じます。海外では普及しているようですが、日本でどうなるのかはこれからだと思います。

――さまざまなところでオーバーツーリズムの問題が生じていますが、言葉の問題も含めてトラブルになったことはありますか。

前田 港区・千代田区・中央区をメインにしているからか、観光客は1日1〜2組程度ですし、外国人のお客様はみなさん正確に住所を教えてくれますから、あとはナビ通りに行くだけです。

早乙女 「シートベルトをしてください」と「目的地はどこですか?」という2つの言葉だけ覚えていれば、ほぼ大丈夫。ナビ通りに行けばまずトラブルにはなりません。

言葉が障害になったことはないですし、ルートが違うと文句を言ったりシートを蹴飛ばしたりする外国人の方はいないので、むしろありがたいなと思っています。

――外国のかただとチップをもらえたりは?

早乙女 日本に来る外国人の方は、“日本ではチップは必要ない”ということを勉強してくるみたいで、チップをいただいたことはないですね。むしろ日本人のお客様のほうが、「これで飲み物でも買って」と、チップをいただけることが多いです。

――都内では“なかなかタクシーに乗れない”という声があったり、各社が普及させた配車アプリの普及で、乗務する環境が大きく変わっていると思いますが、実際に変化はありますか。

前田 それもあまり感じないんですよね。いまでも流しが一番多くて、タクシー乗り場がその次で、配車アプリは全体の2割くらいです。酷暑もあって、お客さんをたくさんお乗せする日もあるのですが、お客さんがいないなーという日もありますし…。

早乙女 一度だけ雨の日の金曜日にお乗せした38組の内、30組が配車アプリのお客様だったことがあって、“すごい人気者になっちゃったな”と思ったことはあります(笑)。でも平均すると、アプリはやはり全体の2割くらいですね。基本的には流しでお客様を探しています。

タクシー運転手になって嬉しかったこと 

――まだ現場は2年目ということですが、運転手をされていて嬉しかったことがあれば教えてください

早乙女 私は、生まれて初めてお客様を乗せた日に道を間違えまして…(笑)。お客様から指示された橋とは違う橋を渡ってしまったんですけど、「いいよ、この橋でも行けるから」と、優しくしていただけて、この仕事は頑張れるかもと思いました。

前田 私もまだ新人のころにお年寄りのお客様から、“頑張ってね”と、パンをいただいたことに感動しました。お客様に優しくしていただけると仕事頑張ってよかったなと思えますね。

早乙女 あとは顔に出さないように努めていますが、芸能人の方をお乗せするとやはりテンション上がってしまいますね(笑)。

取材・文/工藤晋
写真/松木宏祐

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