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昭和・平成でステータスだった「漢検」の現在地…日本漢字能力検定協会が「活字離れ」以上に危惧する「日本人の能力」とは?

集英社オンライン / 2024年8月11日 10時0分

昭和・平成生まれの人にとって、子どもの頃のステータスだった「漢検」。昨今は若い世代の“活字離れ”が問題視されているが、漢検は今も変わらず学習ステータスとされているのだろうか。漢検の現状について、公益財団法人日本漢字能力検定協会 普及企画部普及企画課の佐藤由依さんに話を聞いた。

【画像】2023年度実施の漢検の検定問題

国際化や少子化により漢検が受けた影響とは?

漢検が誕生したのは、今から約50年前の1975年。日本漢字能力検定協会の前身となる学習塾で、「生徒の学力向上のためにやる気を引き出せるような方法がないか」と考えていたところ、近隣のそろばん塾で“昇級制度”を見かけ、それを取り入れることに。

当時、その学習塾では国語学習を重要視していたため、漢字テストに昇級制度を当てはめたことで漢検が生まれたという。

近年の漢検の志願者数は、150~200万人を維持している。2000年代に志願者は250万人を超え「ニンテンドーDS」の漢検のソフトも大ヒットした。志願者数の増減はあるものの、毎年の合格率はあまり変わらないそうだ。

「当協会が独自に行っている全国の大学・短大や高校における資格の活用状況に関する調査では、『活用している』と答える学校が増加傾向にあります。『入試で漢検を評価する』と回答した高校は51.6%、大学では65.1%という結果でした。理由としては、『自分で目標を立てて学習を継続できる力がある』と判断されるからではないかと推測しています」(佐藤由依氏、以下同)

このように、小学校での英語教育の義務化など、国際化している現代社会の中でも、漢検の価値は衰えることがないようだ。

「活字離れ」よりも「書き離れ」を危険視

昨今問題視されている“活字離れ”について、日本漢字能力検定協会は「多くの人が紙媒体からは離れていっているが、文字に触れる機会自体はデジタル媒体の活用により変わっていない」と捉えているようだ。

加えて、「世の中で問題視されているほど活字離れを意識することはない」と佐藤さん。その一方で、“文字を書く”機会は確実に減少傾向にあると感じているという。

「書く機会がないので、なんとなくで漢字を覚えてしまっていて、いざ書こうというときに正しく書けなかったり、正しく読めなかったりする人が増えていると感じます。実際、2006年と2016年の受検結果を参考に京都大学と共同で行った調査では、若い世代の“書字(書き)能力”の発達低下が見られました」

これは、スマホの普及やSNSなどデジタル化の発展の影響により低下したと考えられており、日本漢字能力検定協会も問題意識を持っているとのこと。「書く機会を増やすためにも、漢検への興味関心を深めてもらえるような活動をしていきたい」と語った。

ちなみに、「漢字を書く能力が高い人ほど文章能力が高い」という趣旨のデータもあり、手書きの有用性は高く、アルツハイマー病の予防にも有効なのではないかといわれているそう。

現在はその試験中で、漢字と認知能力の関わりを研究しているのだとか。

「今年の漢字」などを経て漢字の有用性をアピール

現在の日本漢字能力検定協会では、多様な受検機会を提供するため、試験会場だけでなくテストセンターのパソコンで受検できるようにしたり、自宅で受検できる「漢検オンライン」のサービス開始をしたりと、時代に寄り添った工夫をしている。

そのほか、もっと漢字に興味を持ってもらえるように「漢字ミュージアム」を京都に開設。また、毎年一年の終わりに京都の清水寺で発表される「今年の漢字」も、実は日本漢字能力検定協会が主催している。

「日本語の語彙力、読解力には漢字が大きく関わり、学生だけではなく大人になってからも必要な能力なので、学習のステータスというだけでなく、その機能的な有用性も含めて考えてみてほしいです」と佐藤さんは語ってくれた。

昔から変わらずに学習能力の指標となっている漢検。スマホやパソコンで簡単に文字を打てる時代になった今だからこそ、挑戦する意義があるのかもしれない。

取材・文/織田繭

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