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ザ・ビートルズ、マクドナルドに合同ハイキング…戦後の第一走者として時代を駆け抜けた団塊の世代の取扱説明書

集英社オンライン / 2024年8月28日 8時0分

1947年〜49年に生まれた団塊の世代の全員が75歳以上の後期高齢者になることによって起こる「2025年問題」。高齢化社会に伴う様々な問題が議論されているが、そもそも団塊の世代とはどんな人たちなんだろうか?

【画像】韓流ブームに火を付けたあのドラマも、団塊の世代のファンたち

彼らが生まれ育った背景を『「シニア」でくくるな! “壁”は年齢ではなくデジタル』より一部抜粋・再構成し解説する。

団塊の世代 75歳~77歳(2024年時点)誕生年1947~1949(昭和22年~昭和24年)

【時代背景・特徴】
戦後生まれのため、「戦争の呪縛から初めて解き放たれた世代」と形容される。戦後、世界的に巻き起こったベビーブームは日本でも同様で、戦争直後は多くの子供が生まれた。人口の固まりになったことから、作家の堺屋太一が付けたのが「団塊の世代」という名称だ。

人口が多いため競争意識が高く、エネルギッシュなのが特徴。団塊の世代の代表格はお笑いタレントや俳優、映画監督など多彩な顔を持つ、北野武(ビートたけし)だ。

同じタレントでいえば、一つ上の世代のタモリは落ち着きがあり上品だが、北野武は熱く、過激であり、2人を比べると、双方の世代の性質や温度感が読み取れる。

また、「封建性と革新性」も団塊の世代を表す言葉だ。北野武が象徴的だが、彼は漫才師からテレビの世界に入って活躍したり、絵を描いてみたり、映画監督をやったりするなど、新しいことを率先して行い、戦後の第一走者として道を切り開いてきた。

筆者はTBSの報道番組『情報7daysニュースキャスター』で北野武と共にコメンテーターとして出演していたが、彼に「自分たちの世代をどう思うか」と聞いたところ、「俺たちの世代は何をやっても最初という感覚を持っている」と、語っていたことを思い出す。

同じように、一般の団塊の世代も、大学生の時に安保闘争に身を投じ、革新勢力として保守陣営と真っ向から対峙した。

だが、それらの大学生の大半は卒業して大企業に就職すると、一転して上下関係が絶対である封建的な企業カルチャーに順応した。同期との競争の中で、出世、さらには社長を目指すようになる。こうして学生の頃と、サラリーマン人生とでは真逆な生き方をして、二面性のあるライフスタイルを経験していることも団塊の世代の特徴だ。

「新発売」や「日本初」「世界初」に弱い

【消費・文化】
米国文化にどっぷりとつかった。ザ・ビートルズを聴き、髪形は長髪がトレンドとなり、1971年(22歳〜24歳)に上陸したマクドナルドのハンバーガーを食べ、コカ・コーラを飲んできた。

米国東部にある名門私立大学の通称「アイビー・リーグ」の学生やOBの間で広まった紳士服のスタイルであるアイビーファッションも積極的に取り入れた。

上の世代であるキネマ世代は、記憶がないものの幼少期に戦争を体験している。一方で、団塊の世代は戦争体験とは完全に無縁であり、文字通り、戦争の呪縛から解放され、米国文化には何の抵抗感もなく、むしろ最先端のカルチャーとして率先して吸収していった。

こうして新しい米国文化を次々と生活に取り込んできたため、今でも、「新発売」や「日本初」「世界初」といった新しいものには敏感に反応する世代といえる。

キネマ世代(78~84歳 ※2024年現在)は映画と共に育ったのに対し、団塊の世代は小さい頃からテレビを見て育ったため、「テレビっ子世代」であることも特筆すべき点だ。

北野武も子供の頃は長嶋茂雄のファンであり、ジャイアンツ戦を見て育ち、子供に人気のあるものを並べた流行語「巨人・大鵬・卵焼き」を地で行くような少年時代を過ごしている。

もう一つ付け加えるとすれば、人口が多い世代ということもあり、初めて子供文化・若者文化の芽をつくっていった世代でもある。

まんが雑誌としていずれも1959年(10歳〜12歳)創刊の『少年マガジン』(講談社)、『少年サンデー』(小学館)が飛ぶように売れ、1978年(29歳〜31歳)にタイトーが開発した「スペースインベーダー(通称インベーダーゲーム)」が流行し、喫茶店に設置されたゲーム台に100円玉を積み上げ、昼休みに楽しむ団塊の世代の姿が目立った。

前者は日本まんがのコンテンツ力、後者は家庭用ゲーム機「Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)」といった人気ハードにつながる、最初の流れをつくったといえるだろう。

合同ハイキングに冬のソナタ

【恋愛・結婚】
団塊の世代での大きな変化は、恋愛結婚の比率が見合い結婚を追い抜いたことだ。恋愛結婚といっても、実態は、会社の上司が自分の妹を紹介するなど見合い結婚に近い形も多かったが、数字上は恋愛結婚が優勢となった初の世代となった。

その他、男女の出会いの場となったのが合同ハイキングだ。一緒に山登りをしたり、ハイキングをしたりしながら親交を深める。さらに結婚後、大都市を中心に専業主婦が目立ってきたのもこの世代である。

かつては貧しい状態が続き、夫婦共働きでないと家計を支えられなかった。団塊の世代では給料が伸び、男性は仕事、女性は家事に専念するという分業制が、良くも悪くも確立され、初めて専業主婦文化も形成された。

2003年(54歳〜56歳)に韓国ドラマ『冬のソナタ』が人気絶頂となり、第1次韓流ブームを起こすが、ファンの中心は、実は団塊の世代の専業主婦。今に通ずる韓流ブームの先駆者となっている。これも固まりであり、「新しいもの好き」であるが故に、ブームを起こす力があることを物語る事例だ。

ただ、弊害も少なくない。そうした分業の固定化や、主婦として時間があるあまり、子供に過干渉する〝毒親〞になったり、姑になると今度は嫁に口を出し過ぎるようになったりするなど、家庭内の火種として問題化することになる。

団塊の世代のキーワード
競争意識、エネルギッシュ、北野武(ビートたけし)、封建性と革新性、ザ・ビートルズ、マクドナルド、テレビっ子世代、まんが雑誌、インベーダーゲーム、恋愛結婚、合同ハイキング、専業主婦

写真/shutterstock

「シニア」でくくるな! “壁”は年齢ではなくデジタル(日経BP)

原田曜平
「シニア」でくくるな! “壁”は年齢ではなくデジタル(日経BP)
2024年6月28日
1,980円(税込)
304ページ
ISBN: 978-4296205363

日本の若者研究の第一人者であるマーケティングアナリストがシニアを独自調査健康・お金・人間関係の悩みなど……リアルなシニアの実態が浮き彫りに! これから"黄金期"を迎えるシニアマーケティングの新常識が学べる1冊

この本は「シニア世代のマーケティング」について書かれた書籍です。

現在、日本で最大のボリュームを誇る「団塊の世代(1947~49年に生まれた人々)」が全員75歳以上の後期高齢者になることによって起こる「2025年問題」が、高齢化社会に直面した日本において、シニアのみならず幅広世代に重くのしかかろうとしています。

本書ではその問題を負の側面ではなく、消費という観点で捉え直しました。著者の原田氏はこれまで培った世代分析の手法を駆使し、独自調査に基づいて現在のシニアの実態をあぶり出し、そこに「デジタル」という大きな"壁"があることを突き止めます。そこから、現代のシニアが本当に生き生きと暮らせる方法を導き出し、目前に控えた「史上最高・最大級の高齢者マーケット」の攻略法について様々な角度から提案します。

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