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〈守るべきは伝統か人命か〉暑すぎて各地の夏祭りが続々中止に! 酷暑によって失われていく“日本の夏の風物詩”…学校のプール、花火大会、夏の甲子園はもう限界なのか?

集英社オンライン / 2024年8月8日 18時0分

記録的な猛暑となっている今年の夏。気象庁によると、この7月は1898年に統計を開始して以来、観測史上最高の暑さを記録した。もはや十数年前の夏と今の夏では事情が変わっており、これによって日本の夏の風物詩が続々と失われる可能性が浮上している。

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「暑すぎて学校のプール中止」という矛盾

記録的な暑さを連続して叩きだしていた7月にSNS上で大きな話題になったのは、「暑すぎて学校のプール中止」という言葉。

暑いからプールに入るのでは? と、一瞬矛盾にも感じてしまうが、昨今の学校では熱中症警戒アラートに基づいて、屋外での活動の有無を決めているため、あまりにも気温が高いと、屋外活動の一つであるプールの授業が中止になってしまうというのだ。

実はプールの中にいても、人は発汗して脱水するので、熱中症になるリスクがある。むしろ、水の中にいると自分が脱水症状であることに気づきにくいため、プールは危険度が高いとまで言われている。

このように“暑すぎてプール中止”には相応の理由がしっかりあるのだが、ネット上では〈暑すぎて中止とかギャグかよ〉〈自分が子どもの頃は気温が低くて水温が上がらないからプール中止とかだったのに〉などと物議を醸すことになってしまった。

そして8月に入り、夏の全国高校野球大会が甲子園球場でスタートした。さっそく開会式では選手の一人が熱中症で車いすで運ばれたように、こちらも猛暑の影響もあり、長年の歴史の中でついに変革せざるを得なくなった。

今年から実施されたのは、午前と夕方に分けて試合を行う2部制の導入。狙いはもちろん、暑さのピークとなる日中の時間帯での試合を避けるためだ。しかし、それでも暑さ対策が不十分との指摘も相次ぎ、屋根付きのドーム球場での開催案や、北海道での開催案などがあがって、テレビやネットでも連日議論が行われた。

これまで100年位以上培ってきた高校野球の伝統を守りたいという人も一定数いるため、なかなか思い切った改革が行われない夏の甲子園。SNSでは〈伝統より命の方が大事〉〈伝統の名のもと高校球児をクソ暑い甲子園で虐待するな〉〈いつまで子どもを伝統に巻き込み続けるのか〉といった声が続出している。

さらに学校のプール、甲子園ときて、日本の夏の風物詩である「夏祭り」もまた、猛暑によって変革を強いられ始めている。

暑すぎて中止になっていく日本の夏祭り

最近では夏祭りも学校のプールと同様、熱中症警戒アラートなどに基づいて、祭りそのものや一部のイベントが中止されている。

8月3日には毎年20万人以上の人出で賑わう、群馬県沼田市の夏祭り「沼田まつり」のオープニングセレモニーが熱中症対策のため中止となった。この件について、沼田市役所の産業振興課の担当者が中止にいたった経緯を話す。

「今回のような熱中症対策の試みは今年が初めてとなります。6月頃から会議などを実施しており、熱中症対策について何かしら指標になるものを実行委員会から出してほしいというご意見をいただきまして、7月から指針を作るための会議を行いました。

その結果、国で発表しているアラートなどもありますが、それだけで判断するのはちょっと物足りないということで、気象庁や環境省が発表する予測値、熱中症の警戒アラートに加えて、祭りのエリアに3か所の測定機を設置し、そちらの計測値とも合わせて、判断の材料にさせていただきました。

セレモニー実施の最終判断は当日の午前10時、実行委員会の熱中症対策会議という形で会議を開いて決定をしました」(沼田市役所の産業振興課・担当者)

少し前までは、「夏祭りで暑さを吹き飛ばせ!」なんてよく言われたものだが、今では暑さによって夏祭りが吹き飛ばされている現状がある。

前出の担当者に来年以降、“祭り”の日程変更の可能性があるか聞くと、「現時点では来年以降の祭りの日程をどうするかという話にまではなっていませんが、今年、こういった試みをはじめたことで、今後、夏祭りをどうするかという話も出てくるかもしれません」とのことだった。

毎年、全国トップクラスの暑さを記録している群馬県ではほかにも、夏祭りの一部中止があった。8月2日~4日にかけて行われ、約48万人を集めた夏祭り「桐生八木節まつり」で、猛暑を理由に、毎年500人以上の参加者が仮装をして町の中を練り歩く人気イベント「ジャンボパレード」が取りやめとなったのだ。

最終日の4日は、全国1位の気温39.2度を記録するなど、酷暑の中で行われた今年の桐生市の祭り。桐生市役所観光交流課の担当者に話を聞くと、やはり猛暑の対策が年々、深刻化していることがわかった。

「ジャンボパレードの中止は過去にも酷暑によって“当日中止”というかたちになったことがあります。ですが今年は、もう3月頃には中止を決定しておりました。委員会の話し合いの中で、今年は猛暑を考慮した内容にするという提言があったのです。

また、ジャンボパレードだけでなく、昨年までは、14時~16時頃まで末広町のやぐらで“八木節の踊り”をやってたんですが、こちらも猛暑・酷暑の懸念で今年から中止になりました」(桐生市役所観光交流課・担当者)

夏に祭りをすることはもう無理なのだろうか…

直前の決定ではなく、数か月前から酷暑を理由にイベントを中止していた桐生八木節まつり。今年で61回目の開催となる伝統ある祭りなのだが、もはや夏の開催は限界なのだろうか。

担当者は開催時期の変更案について、「そういったことを検討していく必要性があると、こちらの方でも考えております。他のお祭りをみても、実際に日程変更をしているところが結構ありますので……」と打ち明けた。

そして今年、おそらく最も多くの夏祭りを中止に追い込んだ原因が、「ゲリラ豪雨」だ。

開始20分前に、大雨のために中止が発表された東京・足立区の花火大会が話題になったが、8月4日には大阪府摂津市の摂津まつりも大雨・落雷のため中止に。

SNSを見るとそのほかにも〈職場の近所の盆踊り、大雨で中止になっとるやん〉〈始まったと思った夏祭りが雷の音と雨で中止になり、現地で友達と会う予定だった息子が半泣きでした〉〈土曜に地元の祭りにでる予定だったんだけど雨で中止なった〉〈地元の祭り来たけど雨で中止になったからりんご飴だけ食って帰る〉など、小さな町内の夏祭りイベントなどが、ゲリラ豪雨によって続々と中止に追い込まれていることが確認できた。

ゲリラ豪雨は、一般的に気温が高くなるほど発生しやすいと言われており、記録的猛暑の今年の発生回数は特に顕著だ。

気象庁がWEBサイトで発表している「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」によると、1時間降水量80mm以上、3時間降水量150mm以上、日降水量300mm以上など強度の強い雨は、1980年頃と比較して、おおむね2倍程度に頻度が増加している。これは地球温暖化が関係している可能性もあるという。

伝統を守ることはもちろん大事だが、その時に応じた柔軟な対応をしていくことが、これからのカギとなりそうだ。

取材・文/集英社オンライン編集部 

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