〈定年4.0時代到来〉中高年が知るべき労働市場の4つの変化…「人材不足の分野の仕事しか高齢者には選択肢がない」現状に抗う術はあるのか?
集英社オンライン / 2024年8月19日 8時0分
AIによる自動化、デジタル人材不足、70歳までの継続雇用など、中高年をとりまく労働環境の変化が厳しさを増している。日本の平均寿命が延びて「人生100年時代」と呼ばれる現在、まだまだ働ける中高年の将来の選択肢を増やすために、何をどう変えていけばよいのか。
『中高年リスキリング これからも必要とされる働き方を手にいれる』(朝日新書)より、一部抜粋・再構成してお届けする。
テクノロジーの進化が引き起こす「定年4.0」、従来の概念をアップデートする必要性
中高年の方々はこれから、さまざまな外部環境の変化と向き合っていく必要が出てきます。これはある種、向かい風というか、強制的かつ不可避な大きな流れとして私たちを待ち受けている大局です。
こうした環境下で、残りの人生を自分の思い通りに、やりたいことを楽しくやる、やりたい仕事をやるためにはどうしたらよいのでしょうか。
経済コラムニストとして活躍されていた大江英樹さん(2024年1月ご逝去)の2018年の著書『定年3.0 50代から考えたい「その後の50年」のスマートな生き方・稼ぎ方』(日経BP)は、ご自身の定年の経験から人生100年時代を安心して楽しく暮らすためのヒントが満載です。その中で、定年3.0に至る過程が、
•定年1.0:生活の不安なくのんびりと暮らせた時代
•定年2.0:「老後のお金」に関する常識が大きく変化した時代のシニア像
•定年3.0:「お金」「健康」「孤独」の3つの問題をそれぞれが解決していかなければならなくなった
と分類されています。
そして、この定年3.0の考え方をベースにしつつも、まだ定年前の私たち現役世代が今後向き合わなくてはいけないのが、定年後も積極的に働くことを前提にしていかざるを得ない、という現実です。
定年後も働く必要性については、追って詳しく見ていきますが、そうした変化を考慮すると、私たちが描くべき定年の姿とはどのようなものになるのでしょうか。
私は、その姿を「定年4.0」として、次のように定義しました。
•定年4.0:リスキリングで現在の雇用に頼らない人生とキャリアを自ら創造する
定年4.0の時代に残る仕事と働き方
この定年4.0の時代に認識しておくべき労働市場の変化が、次に挙げた4つです。
•AIやロボットによる単純労働の自動化(ホワイトカラー含む)
•慢性的な人材不足と雇用の偏在(都市と地方)
•大きな労働移動の必要性(配置転換、副業、転職など)
•正社員からフリーランスへ(自分の雇用を自分で創出)
マクロなトレンドとしては、テクノロジーの進化により、AIやロボットが導入され、現在の仕事に必要なタスクの自動化が進み、人員削減に取り組む企業が出てきます。
一方で、少子高齢化が加速し、このままだと日本全体で慢性的な労働力不足が解消できる見込みはありません。そして現時点では、高齢者が就業可能な職種は極めて限定的で、介護、清掃、警備等、特に体力が必要な仕事が中心です。
こういった複雑な変動要素が絡み合う中で、突きつけられた現状をそのまま受け入れると、本人が望むと望まざるとにかかわらず、
「人材不足の分野の仕事しか高齢者には選択肢がない」
ということも大いにあり得ます。
止まらない人材不足の影響で、慢性的な低賃金だった分野での給与改善が進み始めていますが、定年前にもらっていた給与と同じレベルは望めない方も多くなるのではないかと思います。
なお、労働移動とは、経済学用語で、労働者が労働市場を通じ、部門間、組織間、産業間、地域間等で移動することを指します。
わかりやすい例では、就職、転勤、転職などが一般的です。組織内外を区別する際に、組織内を「内部労働市場」、組織外を「外部労働市場」と呼んだりもします。組織内での配置転換は、内部労働市場における労働移動に該当します。組織外へ転職することは、外部労働市場への労働移動にあたります。
ここでいう「大きな労働移動」とは、「組織内の成長事業」や「組織外の成長産業」への労働移動をイメージしています。
では、このような未来が迫る中、私たちは将来に向けてどのような対策を講じることができるのでしょうか。
労働寿命と雇用寿命を延ばす必要性
2023年にWHOが発表した世界保健統計において、日本は平均寿命、健康寿命ともに世界ランキング1位となっています。人生100年時代、健康寿命が今後延びていくことを前提にするならば、生活する時間も、働くことが必要な時間も長くなると考えられます。
次に考えるべきは、労働寿命と雇用寿命について、です。あえてここでは2つを明確に分けて考えたいと思います。労働寿命は働くことができる時間、雇用寿命は企業などの組織に雇われる時間、を指すこととします。
万が一、雇用されることが難しい場合でも、自分から個人事業主やフリーランスとして働くことができる場合は、労働寿命を延ばすことができます。
以上のことを考慮すると、究極的には、雇われることを前提にするのではなく、自分で自分の仕事を「創る」ことで、労働寿命を延ばす努力をすることが、今後安心して生活していくためには必要だと考えられます。
文/後藤宗明 写真/Shutterstock
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