「股下8.5cm? 陰キャ集団が超短パンなんてはいてさ」「機敏な動きがキモい」なぜ日本の部活動で卓球部の地位は低いのか? 五輪効果で人気急上昇も…現役中高校生が明かす悲しきスクールカースト
集英社オンライン / 2024年8月11日 11時0分
〈「育児ストレスで涙もろく…」「勝手に戦友だと思ってます」五輪選手は育児に奮闘中のママたちにも勇気を与えていた⁉ 電気を消しボリュームも下げて観戦、そのとき夫は…〉から続く
東京五輪に続き、パリ五輪でも卓球女子団体の銀メダルなど、4大会連続でメダル獲得と日本代表の躍進は止まらなかった。そんな卓球が、かつて日本の部活動においては「陰キャ」「根暗」というイメージだったのをご存知だろうか。しかし、華々しく活躍する男女選手たちのおかげで、これまで悲しい思いや経験をしてきた全国の卓球部員たちにも変化の兆しが訪れているようだ。
【画像】短すぎて中まで見えそう? 卓球部員も躊躇するほどの大胆ユニフォーム
タモリ「卓球って根暗だよね」
いつからだろうか、日本において“卓球部”のイメージが悪くなったのは……。諸説あるが、大きな原因のひとつとして挙げられるのが、タレントのタモリがバラエティー番組『笑っていいとも!』(フジテレビ系)にて、「卓球って根暗だよねー」と発言したことだ。
タモリがこの発言をした1980年後半頃は、国内での卓球人気が落ちていたこともあり、メーカーや協会がなんとか盛り上げようと、ちょうど変革を行なっているころだった。よって、タモリの発言後、卓球台の色がそれまでの暗色から水色系の明るい色になったり、ユニフォームが派手になったり、暗いイメージを払拭しようとする改革が進んだと言われている。
なお、タモリはうっかり放ってしまったこの“根暗”発言を反省し、後に日本卓球協会に1000万円の寄附をしている。
だが、卓球の暗いイメージの要因は、タモリの発言だけにとどまらない。1993年から1996年にかけて連載された、青春ギャグマンガの金字塔『行け!稲中卓球部』も卓球の根暗な部分を浮き彫りにしたのではないかとウワサされている。
そんなこんなで日本では、野球、サッカー、バレー、バスケなどと比べるとあまり陽の当たらない印象の卓球部。タモリと稲中卓球部のせいなのかはさておき、「実際に卓球部はつらい経験をしてきた」という静岡県に住む元卓球部の30代男性に話を聞いた。
「まず、これは“元卓球部あるある”なのですが、大人になってから『学生の頃になんの部活入っていた?』と聞かれるのがとにかく嫌いです。というか、『卓球部です』と答えるとなんだか変な空気にしかならないので、言いたくないんです。
これはやはり学生時代に卓球部がバカにされていたことが原因なのかなぁと……。体育館を半分に区切り、バスケ部と一緒に練習をしていると、向こうのコートに球が転がっていったら平気で球を踏みつぶされたこともありますし、バスケ部の休憩時間には、陽キャのバスケ部員がこちらのコートに勝手に入ってきて、人のラケットを使って遊びだしたり。
ラケットを勝手に使われている部員たちは何も言えずに、バスケ部が使い終わるのを待つのみです。もちろん、卓球部がバスケ部の練習中に乱入なんてありえないので、どう考えてもナメられてたし、格差があった証拠ですよね」(30代男性・元卓球部)
学生の間で物議を醸す卓球のユニフォーム
「また、体育の卓球の時間にヒーローになれるかと言われればそうではなく、卓球がうまいほど“動きが機敏でキモい”と笑われました。ほかの運動部は、自分の専門分野の授業ではヒーローになっているのに……。あと、部活動対抗リレーでは、ユニフォームがダサすぎてほかの部活に笑われましたね。
卓球のユニフォームはなぜかムダに派手なんですよ。自分のころは、炎がメラメラ~だったり、謎のCG空間を模したデザインだったり、稲妻がほとばしっている模様だったり、中二病のようなユニフォームだらけでした」(30代男性・元卓球部)
協会がよかれと思って改革したユニフォームの派手化だが、当の学生たちにとってはありがた迷惑だったのだろうか……。それでも近年は、水谷隼や石川佳純、そして今回のパリ五輪の早田ひななど、国民的スター選手が続々と誕生している卓球界。
その影響なのか、今年の5~6月にニフティが運営する子ども向けサイト「ニフティキッズ」で、小中学生を中心とするサイト訪問者2103名にアンケートを実施したところ、なんと今回のパリ五輪で一番興味がある競技ランキングで、卓球がバレーに次ぐ2位となっていた。バスケやサッカーなど、“陽キャ”イメージが強い競技をさしおいての2位は快挙といってもいいだろう。
東京五輪の視聴率ランキングでも、卓球は野球・マラソン・サッカーに次ぐ高視聴率をとるなど、国内での人気がかなり高まりつつあることはもはや明確だ(番組平均世帯視聴率、ビデオリサーチ調べ、関東地区、速報値)。
やはり十数年前と比べると、卓球を取り巻く環境に大きな変化があるのだろうか。「たしかに人気の高まりを感じます」と話すのは、チャンネル登録者数180万人を超える「卓キチちゃんねる」を運営する卓球インフルエンサー・中西淳(@chikuwa141)さんだ。
「スポーツ庁が発表しているデータを見ても、少子化で他の部活の競技人口が減る中で、卓球部だけが右肩上がりです。また、僕自身、いろいろな大会に出て幅広い年齢層の方々と交流する中で『部員が増えた』とか、『卓球場が増えた』という話を本当によく聞きます。体感としては、2016年のリオ五輪のあたりから特に盛り上がっていると感じますね。
サッカーや野球のYouTuberといえば、元プロ選手が盛り上げていますが、卓球界は僕も含めて、あおちゃん(『あおちゃんねる』)とかユージくん(『ユージくんの卓球部屋』)とか、一般の卓球好きが盛り上げているのが特徴で、こうした敷居の低さや親しみやすさも卓球人気の高まりに繋がっているのかなと」(中西さん)
たしかに卓球の元プロ選手がYouTubeなどで目立った活躍をしているのはあまり見かけないが、一般の卓球に特化したチャンネルが数百万人、数十万人のチャンネル登録者数を誇っているケースは結構ある。
ちなみに、卓球を愛する人としては、タモリや稲中卓球部についてはどう思っているのだろうか。
「陰キャ集団が超短い短パンなんてはいて」
「正直、卓球部が暗いというイメージは、タモリさんや稲中卓球部のせいとはまったく思いません。確かに卓球は他のスポーツに比べると小さいコートで動いていて、明るいか暗いかって言われると、別にそんなに明るくはないと思っていますが、でも逆にそれが卓球のいいところではあると思っています。また、卓球はやる側と見る側のギャップがすごいです。
やっぱりまず最初に、ボールの回転のすごさに驚くと思いますし、フットワークはめちゃめちゃきつい。技の種類、用具の種類もたくさんあって、実際やってみると本当に奥が深いスポーツです。だからやってない人に暗いって思われてもある意味仕方ないんじゃないかなと思いつつ、卓球やってる人からすると、実際やるとめちゃめちゃ面白いんだぞって思いますね」
さらに中西さんは続ける。
「また競技として上を目指すだけではなく、シンプルに趣味として楽しむのもよし、温泉卓球や施設のレクレーションで盛り上がるのもよし、用具を追求するも良し、観戦するのもよし、健康増進としてやるのもよしetc...。このようにいろんな目的で卓球を楽しむことができます。取りかかるハードルが低いスポーツであることも魅力です。
だから人気が高まっていることは感じますが、偏見は正直まだあると思います。でもまあ、7年間YouTubeを運営していて、最初に比べると『根暗』『地味』とかコメントされるのは確実に少なくなっている実感はありますね」(中西さん)
人気は高まっているが、偏見はまだ残っているという卓球部。実際に現役の学生に話を聞いてみると、たしかに卓球部がいまだに、現在進行形で悲しい思いをしていることがわかった。
「高校に入って、友達に卓球部だったことを話したら、『卓球部って陰キャで根暗な人しかいないよね笑笑』『卓球部なんてしょせん遊びじゃん』『簡単そうだしサボり放題な気がする』って言われたことがありますね。
『そうかなぁ……案外明るい人も多いんだよ〜』『サーブとか戦法も考えなきゃすぐ負けちゃうからけっこう大変なんだけどねぇ』とか反論してますが、相手は『え〜でもさ〜、他の部活と比べたらやっぱ暗くな〜い?笑』って馬鹿にするような言葉で返してきます。私の中学では先輩後輩めっちゃ仲よかったし、すごい明るい子ばっかりだからそういう偏見があるのは悲しいなぁって思います」(15歳・女子高校生)
さらに12歳の男子中学生・Rさんに話を聞くと、令和とは思えないひど過ぎる惨状が明らかとなった。
「僕の中学校では、バドミントン部のほうが卓球部より権力があって、バドミントン部が体育館を使うときは、僕を含めて6人しかいない卓球部は、無条件で体育館から追い出されます。そもそも、『男子卓球部はバド部の下位互換!』と言われています。
あと、部活動の壮行会では、みんなが僕たちのユニフォームをみてヒソヒソ話していますね。ユニフォームは股下8.5cmの短パンで丈がすごい短いので、ステージに上がったときに、一番前に座っている生徒からは、短パンの隙間からパンツが丸見えなのです。前に座っている生徒の中には、クスクス笑っている人もいれば、気まずそうにすぐ下を向いてしまう生徒もいました」(12歳・男子中学生)
Rさんはさらに、クラスの女子がとんでもない暴言を放っている姿も目撃してしまったという。
「僕の好きな女子が『卓球部って影薄くて暗くてダサいよね。だから、クラスでも暗いし影薄いんだねwwあと、あのユニフォームはダサすぎるよ。陰キャ集団が超短い短パンなんてはいてさ、吐き気するわ』って他の女子たちと話していてショックでした。ほかの人から言われてもまあまあヘコみますが、好きな女子から言われたのは特に落ち込みました」(同上)
以前に比べると競技そのものの人気は高まっているものの、それでもスクールカーストは今でもあまり高くない卓球部。いつまで偏見にさらされ続けなければならないのか。卓球強豪国の座と卓球人気を守り続けるためにも、卓球界全体で改革を考えていきたいものだ。最後にパリ五輪での卓球代表の躍進で熱狂醒めやらぬ中で、前出の中西さんがいう。
「暗いと思われてしまう裏側には数えきれない面白さが詰まっている競技であり、僕自身も卓球に人生救われた経験もあるので、僕個人の卓球インフルエンサーとしては『明るい暗い』の部分を変えるというよりも『面白い』という部分を発信し続けて、卓球界を全体で底上げしていきたいと考えております。まだまだ課題はたくさんありますが、偏見持つ人が嫉妬したくなるぐらい盛り上げていきたいですね」
取材・文/集英社オンライン編集部
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